News 2001年5月31日 05:31 PM 更新

パワーバンド,既存マンション向け常時接続サービスを開始──月額3900円から

パワーバンド コミュニケーションズは,既存マンションに向けて6月1日からHomePNAを使った最大1Mbpsの常時接続サービスを開始する。“管理組合の許可をとるのが難しい”といったケースにも対応できる独自のマーケティングノウハウとは?

 パワーバンド コミュニケーションズは5月31日,集合住宅向けのインターネット常時接続サービス「PowerBand」を6月1日に開始すると発表した。都内からサービスをはじめ,夏〜秋にかけて千葉,神奈川,埼玉の一部地域を含む150万世帯をカバーする計画。最大1Mbpsのベストエフォート型ながら,マンション内の工事が必要ない点と,ISPサービスを含んで月額3900円(キャンペーン料金)からという料金が魅力だ。

 パワーバンド コミュニケーションズは,これまで「CyberChiga」ブランドでCATV事業を展開してきたチガ・サービスセンターの100%子会社。サービス開始に合わせ,第1種通信事業者のチガ・サービスセンターも「パワーバンド」と社名を変更した。

 その戦略は,CyberChiga時代の技術や顧客を活かしてブロードバンド事業に参入すること。マンション内に同軸ケーブルを引き込み,そこから各世帯にHomePNA1.0で分岐する方法を採った。建物にはCATV回線を引く要領で導入できるうえ,電話線を使うHomePNAならマンション内の工事が必要ない,という手軽さが特徴だ。各家庭内にはHomePNAモデムが置かれ,10BASE-Tとアナログポートを利用できる。

 サービス内容は以下の通り。接続料金は月額4300円だが,8月末まではキャンペーン期間として月額3900円で提供する。

サービス名 基本サービス
接続料 4300円/月(キャンペーン期間中は3900円)
PNAモデム使用料 400円/月(9000円で買い取りも可)
初期費用 1万5000円
接続速度 最大1Mbps(ベストエフォート)
IPアドレス プライベートIPアドレス(動的割当)
メールアカウント 1
メールボックス容量 10Mバイト
ルータ使用 可(1万5000円で買い取りも可)
オプション ファミリーパック(400円)で5個までのメールアカウント,全国200カ所のアクセスポイントからダイヤルアップ接続が可能になるローミングサービス

 当初のサービスエリアは以下の通り。

東京都 港区,杉並区,世田谷区,品川区,葛飾区,江東区,足立区,台東区,江戸川区,渋谷区,大田区,墨田区,目黒区,調布市,三鷹市
神奈川県 横浜市緑区,港北区,鶴見区,川崎市宮前区
千葉県 千葉市稲毛区,船橋市,市川市,浦安市,松戸市

走るよりも,歩き出すこと

 パワーバンド社長兼CEOのRoderick Boss氏は,「CATV時代に培ったワントゥーワンマーケティングのノウハウを活かし,“申し込みたいが管理組合の許可をとるのが難しい”と考えているユーザーにも道を開くことができる」と話す。そのマーケティングとは,マンションのオーナーや管理組合には一切費用を負担させず,ユーザーは1人からでも受け付けるというもの。もちろん,1つのマンションで利用者が1人だけでは採算割れとなるが,例えば,サービス開始前にロビーや集会所で説明用の展示などを行い,住民の理解を得ると同時に利用者を集めるのだという。「われわれは,既に500棟以上のマンションで導入の許可を得ており,400以上のマンションから予約を受けている。技術がメインとは考えていない。大事なのはカスタマーケアだ」(Boss氏)


パワーバンド社長兼CEOのRoderick Boss氏

 Boss氏によると,当初のメインターゲットは初心者からミドルユーザーになるという。「なるべく安く,手軽に提供してブロードバンドのすそ野を広げる」(Boss氏)。まず,導入の容易なサービスで常時接続の有用性を訴え,次の段階で高速化するという判断だ。アクセス回線としては,将来的に,VDSLや無線,FTTHなどさまざまな手段を検討していく。

 「ブロードバンドは動き出したばかり。コンテンツが充実すれば爆発するだろうが,日本ではまだ認知度が低く,ユーザーニーズも不明瞭な状態だ。走るよりも先に,歩き出すことが重要と考えている」(Boss氏)

CATVのインフラを活かす

 技術面では,こなれた技術と最新のものを併用して利便性と低コストを両立させた。PowerBandでは,光ファイバーの幹線伝送路と同軸ケーブルによる分配網を組み合わせたHFC(Hybrid Fiber Coax)をバックボーンに使う。HFCは,今後CATV事業で主流になると目されているインフラ技術。「セル(地域別に区切った小規模ネットワークを指す)内のケーブルは将来的に光化する。1セルあたりのユーザーは最大512だ。IDC間の接続も当初は3MbpsのATMメガネッツだが,今後はニーズに合わせて100Mbpsのメトロイーサに切り替えていく」(同社)。なお,データセンターはNTT-PCとアバブネットに委託し,中目黒と人形町の2箇所にNOC(ネットワークオペレーションセンター)を構えた。今後,サービスエリアの拡大に合わせて埼玉や千葉にもNOCを設置する予定だ。


パワーバンドのサービス構成図(拡大画像

関連リンク
▼ パワーバンド(6月1日より)

[芹澤隆徳, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.