News 2001年6月12日 06:43 PM 更新

Intelフェロー,「20GHzプロセッサ」への道を語る(3)

1ビリオンで何をするのか

 ほんの数年前まで数百万個のトランジスタでできていたプロセッサが,あと数年後には10億個(1ビリオン)に達する。動作周波数は数十ギガヘルツから,テラヘルツへと進化していく。「今後,2年ごとにトランジスタの大きさを30%ずつ減少させ,ウエハー当たりのダイ個数を2倍にしていけることが,今回の開発で分かった」(Chau博士)

 Intelの描く素晴らしい未来図――。ところで,その素晴らしいプロセッサは,私たちにどんな未来をもたらしてくれるのだろうか?

 「自然な話し言葉や手書き入力でコマンドを理解してくれる」「人が働いている様子から,仕事を早く片付けるために何が必要かをコンピュータ側で予測してくれる」「コンピュータに向かって買いたいプレゼントの写真を見せれば,コンピュータがインターネットを検索し,ユーザーに代わって5分でショッピングをしてくれる」――。

 いやはや,こんな話は今から7〜8年前のPentiumプロセッサが発表された頃にも,聞かされた気がする。当時は素晴らしい未来に思えたが,その一部が実現し始めている今となって考えてみると,私たちはそんなコンピュータの未来を,本当に期待しているのだろうか。コンピュータの集積度が20倍になっても,実現されることはこの程度に過ぎないのか――むしろそんな気さえしてくる。

 4200万個のPentium 4ですら持て余している私たちは,1ビリオンで何をすればいいのか,ステレオタイプなコンピュータの未来図は,少なくともそれを示してくれてはいない。結局,Intelの答えは「私たちはテクノロジーによって素晴らしい半導体を作っていく。いい半導体を作れば,アプリケーションはクリエートされていく」ということに過ぎない。どうやら,同社は『ムーアの法則』を書き換えていくことほどには,「コンピュータ利用の未来図」を書き換えることには,熱心ではないようだ。

 『ムーアの法則』は2010年まで,安泰だということが分かった。それはそれで素晴らしいことだ。だが,このことは,そのメリットを本当に享受できるアプリケーションの不在という“ミッシングリンク”の大きさをも,また浮き彫りにしたのではないだろうか。

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[中川純一, ITmedia]