News 2001年6月12日 07:23 PM 更新

企業の情報化投資額は3%減――情報化白書 2001年版が発行

中小企業における情報化投資は活発なものの,新規システムへの投資までは手が回らないようだ。

 財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)は6月12日,「IT社会の実現に向けて」を編集テーマに,国内の情報化動向をまとめた「情報化白書 2001年版」を発表した。6月20日より販売を開始する。価格は4500円。JIPDECでは,35冊目の刊行となる2001年版について,「IT基本法の制定などを契機として,内容構成や装丁を刷新し,各分野のIT化の実態を反映するようにした」と紹介。また今回より,「IT社会の働き方」という項目を施設したほか,モバイルECや消費者保護,電子認証,電子自治体など新しい動きがまとめられている。

 JIPDECでは情報化白書の作成にあたり,27業種約4700社にアンケートを発送。そのうち813社から回答があった。それよると,企業における年間の情報化関連支出額は,1社あたり平均14.06億円で,前年度比3%減。ただし,大規模ユーザーの回答数が減少しているため,JIPDECでは「前年度とほぼ同水準と見ていいのではないか」としている。また,全体としては前年割れしたものの,資本金10億円未満,従業員500人未満の中小規模企業が1.7億円で同3.6%増と伸長している。

 さらに情報化白書 2001年版では,企業のVPN(Virtual Private Network)の導入状況にもスポットライトを当てている。それによると,14.9%の企業がVPNを「導入済み」と答えたほか,これに「導入検討中」を加えると約半数の49.8%が導入する意向を示しているという。また,VoIP(Voice over IP)については「導入済み」が6.5%で,「導入予定」と「導入検討中」を合わせると3割近い企業がVoIPに関心を寄せている。

 またJIPDECでは,電子商取引に関する取り組みを調査。コンシューマー向けの電子商取引では,全体の8.9%の企業が実施しており,これが総売上高に占める平均比率は1.16%だった。一方,企業間の電子商取引では,36.2%の企業が実施しており,総売上高に占める平均比率は16.52%と大きな成長を予感させる結果となった。

 ただJIPDECでは,「VPNやVoIP,ならびに電子商取引について,大企業は導入に積極的で,中小企業では検討すらしていないところが多い」と指摘する。情報化白書のデータを読むと,中小企業における情報化投資は活発なもの,その内訳は既存システムの運用経費がほとんどで,新規システムへの開発投資まで手が回らない状況であることが分かる。

 「中小企業ではインターネットやイントラネットといった基本的なネットインフラに対する関心度が高く,逆に大企業は電子商取引やデータウェアハウス,ならびにERPといった高度なアプリケーションに対する関心が高い」(JIPDEC)

[中村琢磨, ITmedia]

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