News 2001年7月4日 07:04 PM 更新

オンラインショッピング3倍増を狙うVISA−DCカードの実験(2)

 SETは技術的にはより進んだシステムだったが,ユーザーは"ウォレット"という電子財布(決済指示を店舗側に送るソフト)を利用する必要があり,その手間が嫌われた。加盟店側も,決済処理のためのソフト導入やその管理などでコストが嵩み,導入意欲が高まらなかった。また,ウォレットソフトが,ハードやOS,ブラウザのバージョンなどに依存したという問題もあった。

 これに対し,3D Secureはユーザー側のハード・ソフトに依存性がなく,「インターネットにアクセスしてオンラインショッピングできる環境であればよい」(Burbidge氏)。今回の実験ではPCが対象だが,「携帯端末やICカードなど,様々なプラットフォームにも対応可能」(同)だ。

 ユーザー負担は,最初の登録作業と,利用の際のID/パスワード入力の1ステップ増だけ。発行体や加盟店にとっても,ウォレットソフト配布のコストや,特別な決済処理ソフトの購入・管理負担がかからず,導入に踏み切りやすい。必要なのは加盟店のプラグインソフト導入だが,このコストは「本格運用開始後で50ドル程度」(同)であり,将来的には無償配布も検討しているという。また,3D Secureの利用にとって,このプラグインソフト購入は絶対に必要なものではないという。

 「3D Secureでは『カスタマーファースト』という考え方で取り組んだ。オンラインショッピングが利用されるのは,便利だから。決済のオプションも利便性の良いものでなければならない」(同)。

B2C普及の「お呪い」の効果は?

 今回の実験では,DCカードがWebサービス「DC Webサービス」の会員約36万人から,1万人を抽出,e-mailでモニタ会員を募集する。モニタを希望した会員は,Visaが用意したDC会員専用登録ホームページで個人情報やパスワードを入力,初期認証を受ける。

 加盟店では,東芝ダイレクトPC,ソフマップ,ソースネクストの参加が決まっており,今後「さらに参加店を募る計画」(中井氏)。

 DCカードでは「半年以上に渡って3D Secureを検討し,普及しうるシステムと判断した」(中井氏)とのことだが,「まだ完璧なシステムではない。今後,さまざまな進化や融合の可能性がある」。実験では,初期認証やショッピング時の認証作業での処理速度が日本のユーザーに受け入れられるものかどうかなど,信頼性・安定性・スピードの3点にウェイトをおいて検証作業を進めていくという。

 日本を代表する大手カード会社の1社であるDCカードだが,その同社でも,インターネットを通じたオンラインショッピングは,「全取引の1%程度」(中井氏)と,まだまだ規模が小さい。おかげで,オンラインのカード詐欺などによる被害も,「目立たない数字」に留まっている。しかし,カード会社から見れば,それも痛し痒し。カード被害の増加は抑えたいが,それより先に,オンラインショッピングの普及を図りたい,というのが本音だろう。

 Burbidge氏によれば,インターネットを通じたオンライン取引にとって最大の問題は心理的障壁であり,同社の調べた結果では,インターネットを始めたからといっても,すぐにオンラインショッピングを始めることは少ないという。多くの場合,ネットを始めてから数年の時間が必要で,さらに心理的な障壁を取り除くアプローチも必要になる。

 VISAでは,日本でのオンラインショッピング普及に向けた消費者教育に投資を行う計画で,このプログラムは9月頃発表されるとのことだが,まずは不安感を取り除くことが先決。いわば,この「3D Secure」は,オンラインショッピング普及のための「お呪い」でもあるわけだ。

 さて,この「お呪い」,日本のユーザーにどれぐらいの効き目を現すだろうか?

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[中川純一, ITmedia]