News 2001年7月6日 11:24 PM 更新

自宅でモーションキャプチャー!?

誰もが一度はやってみたいと夢見る(?)モーションキャプチャーのアクター。それが自宅でできるようになった。少々お値段は張るのだが……

 大リーグ養成ギブス? 産業用バーチャルリアリティ展(IVR)でスパイスという会社がデモンストレーションを行っていた装置(写真)は,体中に張り巡らされた金色のシャフトがまさに「巨人の星」に出てくるアレを連想させるものだった。だが,実はこれ,「近くの駐車場でもアクティブにキャプチャー」(同社)できてしまう,“モバイル”モーションキャプチャーユニットなのだ。

 このモーションキャプチャーという機械,ゲームキャラクターの動きを作るのに,今では当たり前に使われており,ゲームイベント会場などでもよく見かける。ただ,一般に使われている光学式や磁気式だと,セットがどうしても大掛かりになってしまう欠点がある。

 ところが,スパイスのブースでは,マネキンが例のギブスをはめているだけで,特にセットらしきものは見当たらない。しかも,ポスターには「デスクサイド・キャプチャー・システム」と書かれている。これは一体……?


こちらの女性が身につけているのは磁気式システム
 セットが簡素なのは,この「GYPSY3」が“機械式”を採用するモーションキャプチャーシステムだからだ。機械式は,磁気発生装置と磁気センサーを使う磁気式や,体中にピンポン玉を装着してビデオカメラで動きを撮影する光学式とは異なり,基本的にはアクターが身に付けるシステムだけで計測できるため,大規模なセットが必要ない。ただし,その代償としてモニターが身に付けるユニットは非常に“ごつく”なってしまう。

ファイナルファンタジーXでも利用

 GYPSY3のシステムを簡単に説明すると,アクターの動作に応じて金色のシャフトが動き,間接などを中心に取り付けられた43個の「モーションセンサー」がこれを検出。そして,そのデータは無線LANでPCに送信される――というもの。スパイスによれば,このモーションセンサーは“ラジオのつまみボタン”のような形をしており,回転幅からアクターがどのような動きをしたのかが計測できるらしい。

 動きの角度は,0.08度単位で検出することが可能だ。精度はどうなのかというと,「ファイナルファンタジーXの一部にGYPSY3で作成した動きがある」(スパイス)というから,なかなかのものではないだろうか。


ご覧のような重装備。大リーグ養成ギブスではないが,つけているだけで筋トレになりそうだ

 また,ジャイロシステムを搭載し,スタートポジションからどれだけ移動したかも計測できる。GYPSY3では,室内であれば半径100メートル,屋外なら半径1.2キロまで測定することが可能だ(もっとも,この装備をつけたままアクターが1.2キロもスタート地点から離れたら,ただの危ない人だと思われるだろうけど)

 ワークステーションのような高機能なマシンは不要で,「家庭用PCとにワイヤレスLANという組み合わせで使える。もちろんデスクトップではなく,ノートPCでも大丈夫」(スパイス)。というのも,腰後部に装備したシステムで検出したデータを処理するからだ。PC側には,生のデータではなく,ビジュアル化用に加工されたデータが送信されるので,PC側の負担が軽くなる。必要な機材は,ユニット本体と,無線LANシステム,それに市販のPCだけ。確かに,お手軽モーションキャプチャーシステムだ。

 また,“ごつい”といっても,重量はわずか(?)6キロ(バッテリー重量含まず)。何十キロもあるわけではない。しかも「全身に重量が分散されるため,女性でもラクラク装着できる」(スパイス)。ちなみに,アクターの身長制限は,145センチ〜185センチ,体重制限は45キロ〜100キロなので,小柄な女性はちょっときついかもしれない。

 さて,気になるのお値段だが,デスクサイド・キャプチャー・システムというくらいだから,お手頃価格,とはいかず,「最低で600万〜700万円」(スパイス)する。「ほかのシステムに比べたら断然安い」(同)ようだが,さすがに個人で買える代物ではない(家庭用PCで使えるというだけであって,個人向けという意味ではないのだ……)。

 自宅でモーションキャプチャー。どれだけ需要があるのかは分からないが,かっこいい動きを思いついたら,データ化して友達に送信する。ブロードバンド時代のキラーコンテンツに……ならないだろうな,きっと。

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[中村琢磨, ITmedia]

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