News 2001年7月16日 09:53 PM 更新

官庁街の一等地に韓国ITベンチャーの拠点が開設

霞ヶ関の官庁街に,相場の半額以下の賃料で入居できる韓国ITベンチャー向けインキュベーション施設が登場した。

 日本と韓国のITベンチャー企業間の交流をはかり,韓国ITベンチャー企業の日本進出の拠点となるインキュベーション施設が,霞ヶ関の官庁街に登場した。

 韓国ソフトウェア振興院(KIPA)は7月16日,「iPARK Tokyo (東京IT支援センター)」の開所式を行った。iPARKとは,KIPAによって世界各地に開設されている海外進出支援センターで,韓国ベンチャー企業と各国企業との情報交流,提携支援を行っている韓国・情報通信部の非営利外郭団体だ。

 海外に進出したい韓国ベンチャー企業に対して,進出しやすいビジネス環境を提供することがiPARKの役割。iPARK Tokyoでは,東京の官庁街にある新霞ヶ関ビルの18階フロアを仕切って,18社分の事務所スペースを作り出している。オフィス家具や電話,インターネット回線などを完備しており,入居企業は,データ通信速度が下り最高1.5MbpsのADSL回線を常時接続で利用できる。


フロアを仕切って事務所スペースを作り出している

 しかしADSLを使った高速インフラは,韓国企業にとっては当たり前の設備。入居企業の反応は「インターネット利用の高速インフラが整っているのは我々としては最低条件。それよりも,“霞ヶ関”という,都内でもステイタスの高い場所にオフィスを持つことができるのが嬉しい」(入居企業)という。一方,入居料金は3.3平方メートル当たり1万7500円と,周辺オフィスの半値以下の賃料だが,こちらは「まだ高い」とのこと。


ロケーションは最高だが,賃料には不満の声も……

 そのほか,iPARK内の企業なら自由に使える会議室を3室用意しているほか,資料室,休憩室,応接室も共用施設として用意。25席でプロジェクターを完備した有料のカンファレンスルームを1室。フロア内中央開放型スペースには,8つに区切られたビジター用スペースを確保。ここは,iPARK内の企業でなくても1日2500円で利用することができる。コピー/FAX機は有料ながら共用スペースに2台設置してある。


ゆったりとしたスペースのカンファレンスルーム。窓の外には国会議事堂と,眺めも最高?

 18社分の事務所スペースは16社まで決定しており「残り2社分も検討企業からの返事待ち」という完売状態。決定している16社はオンラインゲームソフトを手掛ける“軟らかい”メーカーから,組込みソフト開発やxDSL/VoIP技術といったネットワーク関連を手掛ける“硬い”メーカーまで,硬軟さまざまな企業が名を連ねる。「iPARK内での企業間交流でも,新たなビジネスが生まれて欲しい」(KIPA関係者)。

 韓国ソフトウェア振興院のイー・タンヒョン院長は開所式の挨拶で「携帯電話などにみられる日本の高度な無線技術と,早くから高速インフラ網整備に尽力してきた韓国の高速インフラに対してのノウハウを結びつければ最強のものとなる。iPARK Tokyoで,両国の強みを活かした相互協力のビジネスモデルを創出していきたい」と述べた。


両国の強みを活かしたビジネスモデルを創出したいと語るイー院長

 実は,韓国ベンチャーの日本進出を支援する施設は,iPARKが初めてではない。今年2月20日に,韓国の産業資源省と韓国中小企業振興公団が東京・虎ノ門(港区)にオープンした「韓国ITベンチャーセンター」も,iPARKと同様の目的を持つインキュベーターだ。事務所スペースの提供や事務機器の貸し出し,ベンチャーキャピタルの紹介などを行い,日本に進出する韓国ベンチャーの事業立ち上げを支援している。

 韓国ITベンチャーセンターでは,入居料が3.3平方メートル当たり約1万円とiPARKより安く,周辺オフィスの3分の1程度という賃料から,10社分ある事務所スペースは満室状態となっている。電話代やFAX/コピー代なども無料という。

 入居期間を原則6〜12カ月として多くの企業が利用できるようにする点が,1年契約だが更新が可能なiPARKとの違いだが,その他の点では韓国ITベンチャーセンターの方があらゆる点で好条件だ。“虎ノ門”と“霞ヶ関”とで場所も近く,インキュベーション施設という役割的にも重複する点が気になる。

 韓国ITベンチャーセンターとiPARKとの役割分担について質問を受けたイー院長は「IT分野では共に協力していかなければならない部分がある。可能な限り,重複しないように役割分担したい」と述べ,明確な答えを避けた。

 iPARK第1号は1998年4月に米国・サンノゼ(シリコンバレー内)に開設したもので,現在は54社の韓国ベンチャー企業が入居している。2000年6月には中国・北京にも開設。日本は世界で3番目の開設となる。今年9月には米国・ボストン,10月にはイギリスと中国・上海にIT技術支援センターを作る予定で,年内には全世界に6カ所となる。なお,このほかにもカナダ,オーストラリア,イスラエル,東南アジア,南アメリカなどにも開設する予定で,最終的には全世界に11カ所のiPARKが韓国ITベンチャーの心強い味方となる。

 iPARK Tokyoは,KIPAの海外支社の形式をとり,5人勤務体制となる。所長にはIT関連に造詣の深い日本人を採用する予定。


全世界に拡がるiPARK

関連リンク
▼ 韓国ソフトウェア振興院

[西坂真人, ITmedia]

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