News 2001年7月18日 10:25 PM 更新

“少額決済歓迎”──ネット専銀のイーバンク銀行が開業(1)

アイワイ銀行やソニー銀行などネット専業銀行各社が始動するなか,今度は「少額決済」に特化したイーバンク銀行が7月23日,開業する。強い味方とともに,“競合しない市場”で飛躍を狙う。

 ネット専業銀行のイーバンク銀行が7月23日に開業する。このイーバンク銀行は,オンラインショッピングやネットオークションでの決済手段に特化した“少額決済専業銀行”。同じネット専業銀行のジャパンネット銀行(三井住友銀行系)やソニー銀行などとは異なり,「資産運用や融資業務には手を出さない」(イーバンク銀行の松尾泰一社長)という特徴がある。

 同銀行の最大のセールスポイントは,送金手数料や口座維持手数料を無料にして,「できるだけ利用者に負担がかからないキャッシュレス決済を実現」(松尾社長)したことだ。当たり前だが,ショッピングサイトで500円の品物を購入するのに,振り込み時に手数料が数百円かかっては意味がない。

 既にイーバンク銀行は,Yahoo! オークションのオフィシャルバンクになっており,同行のサービスが,企業が出品する「プレミアムネットオークション」のほぼ全ての店舗のほか,個人間のやりとりでも利用できる。イーバンク銀行に口座があれば,Yahoo! オークションの使い勝手が向上するのは間違いないだろう。

 また,面白いのは,1口座につき預金残高が50万円を超えてしまうと,金利が付かなくなるという制限があること。イーバンク銀行ではオープン記念キャンペーンとして,10月末まで普通預金の金利を0.5%にするのだが,50万円以上預けてしまうとこのサービスが受けられない。さらに,三井海上火災保険が提供するネット保険も,50万円までしか補償の対象にならない。「少額決済用途ということで,1口座につき平均預金残高は3万円程度になるだろう」(松尾社長)。

 ネット専業銀行である以上,現金を入出金するためには既存のATMが必要になる。開業時には,第一勧業銀行ならびに三井住友銀行が利用可能で,今秋にはあさひ銀行が対応する予定だ。ただ,入出金には手数料がかかるほか,イーバンク銀行の口座にある預金を,ほかの銀行の口座に振り込む場合,ネット上でそのまま振り込むことはできず,いったん現金を引き出してから振り込むことになる。

 特に出金の手数料は1回につき315円と割高なので,入出金を繰り返すと,むしろクレジットカードを利用した場合のほうがコスト的に安くすむかもしれない。だが,若山氏はこうした使い方はイーバンク銀行の目指すところではないと話す。「イーバンク銀行の口座は,あくまでネット決済用のサブバンクとして捉えてほしい。基本的にはイーバンク銀行の顧客同士でやりとりをするという形だ」(同氏)。

 なお,7月23日は口座開設の受け付け開始であり,実際の業務開始は8月上旬になる予定だ。

プラットフォーム拡大に2つの策

 “送金手数料ゼロ”を掲げて,ネット専業銀行市場への参入を果たすイーバンク銀行。収益構造としては,クレジットカードと同様に利用企業からの手数料収入が「ほぼ100%」(若山氏)を占める。このため,イーバンク銀行の成功は,同社のシステムを利用するECサイトがどれだけ現れるかにかかっている。イーバンク銀行では,企業が支払う手数料を,クレジットカード手数料(一般的には5〜7%)の半分程度に設定する見込みだが,これは賛同企業を募る1つの手段にすぎない。

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