News 2001年7月25日 09:14 PM 更新

マイクロソフトのオンラインサポート,「画面が青くなった」でも検索可能に

マイクロソフトが,Web上のサポートサービスに話し言葉による情報検索システムを導入する。「デジタルデバイド」対策ということだが,実際にどれぐらい検索は容易になるのだろうか。何しろマイクロソフトが持つサポートデータベースは業界最大級規模だ。

 マイクロソフトが,オンラインサポートサービス(www.microsoft.com/japan/support/)に自然言語処理機能を導入する。8月1日より,「業界最大級規模」(マイクロソフト取締役の東貴彦氏)という約4万件のサポート情報を格納するデータベースを,話し言葉や文章で検索できるようになる。

 マイクロソフトでは,約2年前から東京大学と共同で「Strelitzia」と呼ばれる自然言語処理プロジェクトをスタート。オンラインサポートサービスの“ユーザビリティ向上”ならびに“デジタルデバイドの解消”をコンセプトに掲げ研究に取り組んできた。

 プロジェクトでは,マイクロソフトが自然言語検索エンジンを開発し,同義語情報や専門用語辞書構築など自然言語処理の応用分野を東京大学側が担当した。「一定の成果があがった」(マイクロソフト取締役の東貴彦氏)ことから,今回,実際のサービスとして提供することになった。

 これまで,マイクロソフトのオンラインサポートは,「キーワード検索」にしか対応していなかった。例えば,ワープロソフトである「Word」の段組機能について調べたい場合,きちんと「段組」と入力しなければならなかった。段組という単語を知らなければ検索できないし,期待するような結果は得られない。

 ある程度知識のあるユーザーならキーワード検索でも特に問題ないが,「これだけPCが普及すると,いろいろなユーザーがいる。全てのユーザーが使えるシステムにする必要があった」(東氏)。ソニーやコンパックコンピュータなどのPCメーカーが,オンラインサポートに自然語検索システムを導入していることも影響した。

 Strelitziaの導入により,「段組」を「ワードで文章を左右に分けて入力する方法を教えて」という話し言葉で検索できるようになる。また,現在のキーワード検索ではWordのことはアルファベットで「Word」と表記しなければならないのだが,Strelitziaは揺らぎにも対応しており,「ワード」と入力しても構わない。

 さらに,Strelitziaは「成長型システム」だという大きな特徴がある。これは,東京大学情報基盤センターの中川裕志教授が担当した専門用語抽出の研究成果によるもので,Strelitziaは,ユーザーが質問文で使用した単語を辞書データベースに取り込むことができるという。

ユーザビリティは向上するのか?

 実際,Strelitziaによって,ユーザビリティはどれくらい向上するのだろうか? マイクロソフトのデモンストレーションを見る限り,東氏が「一定の成果」と説明するように,現状では「今一歩」といったところのようだ。

 例えば,「ワードで文章を左右に〜」と話し言葉で段組を検索できるようになっても,検索結果は従来のキーワード検索のときと同じ。膨大の数の回答が表示されて,一般のユーザーだったらそこから目的の内容を見つけるのに一苦労だろう。もちろん,絞り込み検索をすればいいのだが,それでは「話言葉で入力できるようになった」だけであり,ユーザビリティの向上やデジタルデバイドの解消には繋がらない。結局,ユーザーの能力まかせということになる。

 また,「画面が青くなってしまう」という文章で検索を行ったところ,当然のように,「ブルースクリーン」に関する情報が表示された。ブルースクリーンという単語を知らないから,「画面が青くなってしまう」と入力したのに,これではちょっと不親切ではないだろうか。

 もちろん,マイクロソフトもこういった“アンユーザビリティ”は認識している。同社プロフェッショナルサポート本部長の河野恭久氏によれば,今年11月には約7000語の専門用語辞書を追加,単語の解説を提供する予定だという。また,2002年2月には対話型のナビゲーションシステムを導入する計画で,「その段階で,一応の完成を見る」(河野氏)。

関連リンク
▼ Strelitziaプロジェクト(8月1日オープン)
▼ マイクロソフトオンラインサポート
▼ マイクロソフト

[中村琢磨, ITmedia]

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