News 2001年7月26日 11:11 PM 更新

マニア向けからの脱却を図る50回目の「AUDIO EXPO」

最新のオーディオ・AV機器を一堂に集めた展示会「AUDIO EXPO」。今年は,映像やネットワーク関連の出展やイベントが目立つなど,オーディオ専門展からの脱却を打ち出している。

 「AUDIO EXPO 2001」が10月5日〜8日までの4日間,東京ビッグサイトで開催される。今年のEXPOでは,従来にもまして映像や通信・ネットワーク関連の出展やイベントが目立つなど,オーディオ専門展からの脱却をはかっているのが特徴だ。その思いは,ポスターにも表れている。


AUDIO EXPO 2001のポスター。背景のカラーバーは“映像”,中央の@を音符に見立てたマークは“通信”をイメージ

 今年のAUDIO EXPOは,7月10日の時点で国内77社の出展が決定している。新規出展が約3分の1(24社)を占めており,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモ,松下通信工業といった通信・ネットワーク関連企業がその中に名を連ねているのが興味深い。オーディオ用チップに注力するシーラス・ロジックのような半導体メーカーも新たに出展している。

 今回初の試みとして,製品カテゴリー別に分かれたゾーン方式を採用して,来場者に分かりやすい展示構成を行った。会場では,ホームシアターやプラズマディスプレイなど映像関連,DVDオーディオ/SACDなど次世代オーディオを紹介した「オーディオビジュアルゾーン」が会場を大きく占める。そのほか「リスニングルーム」「真空管オーディオ」「カーAV」「エンタテインメント」「コミュニケーション」と,それぞれ特色を持たせた6つのゾーンで,オーディオ/ビジュアル/コミュニケーションの最先端技術が体験できる。

 そのほか,スピーカーやオーディオアクセサリーの工作教室や,毎年“局アナ”候補が集うという「キャンパスDJコンテスト」などイベントも盛りだくさんだ。デジタルオーディオの最新動向などオーディオやAV機器の最前線を紹介する各種セミナーも行われる。入場料は1000円(前売り900円)で,高校生以下は無料となっている。

 AUDIO EXPOの最大の特徴は「エンドユーザーが数多く来場する展示会」だということだろう。昨年の調査によると,来場者の81%がエンドユーザーであった。主催者側が「AUDIO EXPOは,ネクタイ族が中心の,他の展示会とは違う」と強く訴えるのもうなずける。また,来場目的も「お目当ての商品の下見」が50.5%と半数を占めており「購買意欲旺盛なエンドユーザーが集う展示会としても,メーカーから評価が高い」(実行委員会)。

 今年で50回目を迎えるAUDIO EXPO。第1回開催は1952年にまでさかのぼる。鉱石ラジオ全盛の時代から続いている伝統ある老舗の展示会だ。一方で,オーディオマニアと呼ばれるヘビーユーザーが集うマニアックな展示会としても名をはせている。

 多少なりともオーディオをかじったことのあるユーザーなら分かるだろうが,なにしろお金がかかる趣味だ。スピーカー1セットが数十万円なんてのは序の口で,家1軒買えるお金をオーディオ機器に費やしている“筋金入り”マニアも少なくない。それでも,オーディオマニアに言わせると「車1台買っても100万,200万はかかる。1000万円のベンツを持っていてもそれほど驚かないのに,それがオーディオだと何でそんなに驚かれるのか不思議だ」となる。当然,所得の多い中高年ユーザーがオーディオマニアの中心となっていた。

 AUDIO EXPOが「オーディオフェア」と呼ばれていた時代は,まだまだそんなマニアックな雰囲気が漂っていた。しかしここ2,3年は来場者が様変わりしてきているという。実行委員会の広報委員長を務める松下電器の江本修氏は,来場者の分析結果に触れ「若い人や女性の比率が高まっている」と述べた。


AUDIO EXPOの広報を務める江本氏

 同氏によると,10〜20歳代の若年層の来場比率が,1998年には37%だったのが,1999年には50%,2000年は58%にまで拡大している。女性の比率も1998年の10%から,2000年には25%に増え,4人に1人が女性という状況になった。


昨年のAUDIO EXPOの様子。近年,若年層や女性の来場が増えているという

 実行委員長を務めるパイオニアの杉本昌穂氏は「デジタル全盛の世の中,いつでもどこでもオーディオを楽しむ“ユビキタス・オーディオ”の時代に入ってきた。昔からのピュアオーディオだけを扱っていたのでは,最先端のオーディオ技術や製品をカバーすることが難しくなってきた」と語る。


オーディオ専門展からの脱却を訴える杉本氏

 一方で「映像関連はオーディオ展に必要ない」「最近のオーディオフェア(エキスポ)は,昔のように良い音に巡り合わなくなった」と嘆くオーディオマニアも少なくない。

 総合展示会が苦戦する昨今の状況下で,映像のみならず通信・ネットワーク分野まで取り込んだ今年のAUDIO EXPO。マニア向け専門展からの脱却が,果たして「吉」とでるか「凶」とでるか。

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関連リンク
▼ AUDIOEXPO2001公式ホームページ

[西坂真人, ITmedia]

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