News 2001年7月27日 09:30 PM 更新

“ゆったりネット接続”のススメ

 東京の“パブリックスペース・インターネット接続インフラ取材”シリーズの締めくくりとして,新宿の京王プラザホテルに行ってきた。距離的には,新宿駅西口から徒歩5分程度といったところだろうか。西口通路からは,都庁方面に向かう動く歩道が使えるので,時間のタイミングが合えば,結構ラクに行ける。(タイミングが合わないと,歩道の動く方向が,逆方向になってしまうのだ)。

 また,西口電脳街というか,ヨドバシカメラなどの量販店が集まっているエリアからも,それほど時間はかからない。ショップを物色し,買い物の帰りにちょっとというには悪くない場所だ。

 ここも,(以前に紹介した)小田急センチェリーハイアットホテルと同様に,日本アイ・ビー・エムとの協業による無線LANスペースのひとつだ。実験期間ということもあり,無線LANの案内はホテルのどこにも見あたらない。試しに,フロントの前あたりで接続を試みたが,アクセスポイントは見つからなかった。仕方がないので,フロントデスクで聞いてみたが,どうも要領を得ず,最終的にはフロントと同フロアの3Fにあるティーラウンジを案内された。

 案内された場所に行って聞いてみたら,もうひとつのカクテル&ティーラウンジがそうではないかという。3Fには,同様のスペースが2カ所あるのだ。「なんだ,フロントのすぐ目の前じゃないか。さっきアクセスポイントが見つからなかったのは,なぜなんだろう」と思いつつ,そこに行って聞いてみると,確かにそうだという。席に案内されて腰を落ち着けた。実験期間とはいえ,ちょっと情報が行き渡っていないなという印象を受けた。

極上ソファで,ゆったりネット接続。ただし,飲み物は高め

 ソファは極上,かなりゆったりとしている。快適だ。客層としては,打ち合わせをするビジネスマンや雑誌の取材を受ける大学の先生,それに著名人っぽい人が目立つような気がした。実際ぼく自身も,ここで打ち合わせをしたり,取材を受けたりしたことがある。騒がしい喫茶店と違い,静かなスペースで話しができるのがいい。

 テーブルについて,パソコンを開き,アクセスポイントを探すと,すぐに見つかった。ただ,アクセスポイントのハードウェアそのものは,どこに隠されているのか分からなかった。ちなみに,DHCPで割り当てられたIPアドレスは,172.16.17.241で,ネットマスクは255.255.248.0というプライベート空間だ。

 ブラウザを開くと,設定済みのスタートページのURLを呼び出しているはずなのに,実際には京王プラザホテルの(ウェブサイト)が表示された。

 何と言っても無料なのだ。これくらいは仕方がないと思う。たぶん,プロキシサーバが,この役割を担っているのだろう。海外の空港やホテルなどの接続システムでは,同じ仕組みで認証画面が現れ,クレジットカード番号の入力などを行い,それ以降,課金が始まるシステムを採用していることが多いようだ。

 いろいろ試してみたところ,速度的には500kpbs程度はラクに出ているようだ。今となっては,この速度をブロードバンドというにはおこがましいが,それなりのスピードだ。

 ただ,某ホストにtelnet接続を試みたところ,どうしてもつながらなかった。あとで別の場所でホストのログを調べてみると,usr14.keioplaza.xephion.ne.jpからのアクセスが,hostnameをベリファイできずに,接続が拒否されていた。telnetが使えないのを不便に感じるユーザーはいるかもしれないが,ほかのプロトコルは大丈夫だ。Webは快適だし,SMTPもPOP3も問題ない。

 ただし,飲み物は高い。街の喫茶店とは比べものにならない。たとえば,コーヒーは850円。これに,サービス料と消費税が付加されて,合計981円となる。でも,従業員はさすがにホテルで,接客態度は申し分ない。黙っていても,コーヒーはお代わりをついでくれるし,相当長居しても,嫌な顔ひとつしない(たぶん)。新宿という地の利も便利だし,さらに同じ新宿でも,以前紹介した小田急センチェリーハイアットホテルより駅に近い。

 今週は,スケジュールが中途半端で,用事と用事の間に数時間のスキマができることが多く,ぼく自身は,このスペースに2度も足を運んでしまった。いったん家に戻るには時間の余裕がないし,もったいない。かといって,パソコンショップ巡りをずっと続けるほどの短い時間ではない。また,普通の喫茶店で時間をつぶすには,ちょっと長すぎる時間だ。こういう時間のスキマにちょっとした仕事を片づけるには,最適の空間じゃないかと思う。たぶん,今後も積極的に利用させてもらうんじゃないだろうか。

電源の確保が……

 こうしたスペースが増えるのは大歓迎だが,問題はパソコンの電源だ。無線LANに関しては,無料で使えても,各テーブルにコンセントがあるわけではなく,電源は自前で調達しなければならない。無線LANカードは,意外に電力を消費するので,11時間のバッテリ運用時間を誇る愛機のLaVieMX LX60T/7も,そんなに悠長なことをいっていられない。

 特に,ちょっと暗いスペースでバックライトをつけて作業すると,結構なペースで電池が減っていく。その後に何もなければ,バッテリを使い果たしてもいいのだが,たいていは,時間のスキマをうまく利用するために,こうしたスペースを使うので,バッテリが空っぽになってしまっては困るのだ。電源も無償でというのは理想的だが,そこまで贅沢は言えまい。

 ネット接続ができるパブリックスペースをいくつか体験してみて思ったけれど,今後のインターネット接続インフラは,つないだ時間でいくらといったシステムではなく,そうしたコストを気にしないで,使いたい時に使いたいだけ使えるというものになるべきだ。

 かつては,時間課金だったプロバイダも,最近は,まだちょっと高いとはいえ,比較的リーズナブルな月額固定料金で,課金を気にしないで使えるようになった。物理的な接続も,テレホーダイなどの定額電話料金,そして,ADSLやケーブルテレビインターネットにより,常時接続が当たり前の環境になりつつある。こうした環境が整うことで,インターネットが,ぼくらの暮らしの中で,どのように機能していくのかが見え易くなる。

 高額課金の携帯電話でインターネットにつなぐなんてのは,よほどの非常事態の時だけ,というような時代が早く来て欲しいものだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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