News | 2001年8月3日 11:59 AM 更新 |
Russell氏のプレゼンテーションによると,SSE2を用いることで3Dジオメトリ演算で2倍以上,音声認識で20%,画像処理で30%,そして暗号化で2倍のスピードアップを図れる。
また,HDTVのリアルタイムデコードや,MPEG2エンコードを高品質にリアルタイムで行うことも可能になる。これは同一のPentium 4システム上で比較した差だが,Pentium 4がPentium IIIよりもクロック周波数で大きく上回ることを考慮すれば,その差は非常に大きなものだ。
Russell氏は2本のソフトウェアで,その効果の程を示して見せた。ひとつはエーアイソフトの「デジカメde同時プリント」,もう一つはプロジーグループの「TMPEG Enc」だ。
デジカメde同時プリントは,デジタル画像を修正しながらプリントするソフト。オリジナル画像を直接変更せず,レタッチパラメータを見ながらその場で補正処理を行って印刷や表示を行うようになっている。したがって,レタッチ処理を行う速度が操作性に大きく影響するわけだ。
この製品の場合,SSE2に対応するだけで48%の性能向上を図ることができたという(なおSSE2対応版は現在のところ未発売。次期バージョンで対応が行われる)。また,TMPEG Encは「まだ対応を始めたばかり」ながら,8%以上の高速化を果たしており,最適化を進めることでさらなる高速化を実現できるそうだ。さらには,DirectX 8がSSE2への最適化を行うことで,SSE2で高速化されるアプリケーションは広がりを見せることだろう。
インテルはPentium 4の最適化に対応した新しいC++とFORTRANのコンパイラをリリース済みであり,ソフトウェアの最適化支援ツールである「Vtune日本語版」もPentium 4対応のバージョン6が今年第4四半期に出荷が予定されている。さらに「Visual Studio .NET」には,Pentium 4に対応した最適化コンパイラが同梱される。Russellはこれによって,Pentium 4対応アプリケーションが大きく増加すると見込んでいる。
現在のところ,日本で出荷されているSSE2対応アプリケーションは21本。これが年末までには,49本まで増加する予定だという。なお,ワールドワイドでは,今四半期中にも170本を数える見込みだ。
Russell氏は,「コンシューマが本当にPentium 4を買うのか?」と問いつめられると,「Pentium 4ならばこんなに優れたアプリケーションが使えるのに,Celeron搭載のバリューモデルしか買わないなんて。それは不幸な話だ」と冗談めかした。だが,話がモバイルに及ぶと「私自身ノートPCユーザーであり,どこでもPCを使えるという利用形態が今後増えていくだろうことも認識している。われわれにとってノートPCでPentium 4を動かすことは最優先の課題だ」と真顔になる。
とはいえ,モバイルはモバイルで,デスクトップはデスクトップで,同じビジョンを異なるアプローチで仕掛けねばならない矛盾は,当面の間,解決することはできないだろう。かたや新型Pentium IIIで解決できるとしている問題に対して,Pentium 4でなければ将来がないという言い方はできない。
企業向けPCは,リースのサイクルが回ってくれば,いずれ置き換わっていくものだ。そのときにPentium 4を選ばない理由は何もない。コンシューマ向けにも,価格が引き下げられ,Pentium IIIの魅力が相対的に落ちてくるため,新型Pentium 4以降は出荷量も伸びてくるだろう。だが,それは残念ながら「Extended PCで有効になるADVICEの各応用分野が,エンドユーザーをPentium 4に導く」といった積極的なシナリオではない。
インテルの思惑通りに話は進むのか,それとも緩やかな移行になるのか。オーディオやビデオのアプリケーションが,急激にキラーアプリケーションへと成長するとは思えないのだが,個人的には「できれば自分の予想は外れて欲しい」と考えている……。
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