News 2001年8月10日 09:09 PM 更新

日本SGIがプロデュースするロボットは,「美」を追及する?

日本SGIがロボットをプロデュースする。「RoboCup」をスポンサードするなど,ロボットビジネスには積極的な同社だが,一体,どのようなロボットが生み出されるのだろうか? ヒントは映画「A.I.」に登場する少年型ロボット「デイビッド」だ。

 ロボットと人間が共生する未来の世界を描いたスティーブン・スピルバーグ最新監督作「A.I.」。日本SGIがプロジェクトに加わっている「Posy」(ポージー)というロボットの基本コンセプトは,まさにA.Iに登場する少年型ロボットの「デイビッド」だという。

 日本SGIでは,7月1日付けで新規事業推進本部を設置。その中に,Posyプロジェクトを“プロデュース”するロボット事業推進室はある。マスコミへの露出はほとんどないが,Posyは既に今年5月,青山スパイラルホールで開催されたウェアラブル・コンピュータを利用したファッションショーに登場している。

 ロボット事業推進室の大塚寛室長によれば,「まだα版」という状態での出演だったそうだが,そのロボットらしからぬ「可愛らしさ」はなかなか好評だったという。Posyのデザインを担当したのは,北野共生システムプロジェクトのヒューマノイドロボット「PINO」を手がけた松井龍哉氏だ。

 「本格的なものから,玩具レベルのものまで,さまざまなロボットが登場しているが,みんないかにも“ロボット”という雰囲気を醸し出している。Posyはそうしたものではなく,女の子も入りやすいというか,ロボットということを意識せずに触れられるようにしたい。分かりにくいかもしれないが,“美的”なものを追求してくつもり。A.I.では,そのあたりが非常に上手く描き出されている」(大塚氏)。

 大塚氏は「本当は,ロボットという言葉も使いたくないくらい」と,冗談交じりで付け加える。

日本SGIと北野博士の出会い

 Posyには,松井氏だけでなく,PINOの開発者である北野宏明博士もプロデュース的な立場で関わっている。同博士はPINOで「ロボットのLinux」を掲げ,研究機関や大学の研究所向けにそのプラットフォームを販売している(6月29日の記事参照)が,大塚氏にPosyについて聞くと「PINOと同じように,オープンソース的なロボットとして発展させていきたい。エクスクルーシブなものにはしない」という答えが返ってきた。

 松井・北野というPINO開発陣と日本SGIが出会ったのは,「Windows NTマシンについて松井さんから問い合わせがあったのがきっかけ」(大塚氏)。松井氏を通じて北野博士と知り合った大塚氏は,和泉法夫社長に北野博士を引き合わせる。ただ,このときの元々のテーマは,ロボットの共同開発などではなく,「RoboCup」のスポンサードに関するものだった。

 北野博士に会ってその情熱に打たれた泉社長だが,日本法人の独断でスポンサーになることはできない。すぐに米国本社CEO(最高経営責任者)であるRobert Bishop氏と面会する機会を設けた。

 「最初,Bishopは時間がないといっていたが,結局,北野博士のプレゼンを20分近くも熱心に聞いていた」。米SGIがRoboCupのスポンサーになることを正式発表したのが2000年8月。Posyのプロジェクトが立ち上がったのは,それからわずか3ヵ月後の11月のことだ。

ロボットというインタフェース

 誤解のないように付け加えておくが,ソニーの「AIBO」のようにコンシューマー向けにPosyを量産販売する計画が,日本SGIにあるわけではない。「日本SGIがロボットの開発プロジェクトに加わることで,どうやってビジネスにつなげていくかはまだ分からない。ただ,研究テーマとして,ロボットというインタフェースがどのようにあるべきか,非常に興味がある」(大塚氏)。

 また,同じくロボット事業推進室の秋元大氏は,「どのようなロボットが現在の世の中で必要とされているのかは,まだ分からないと思う。マスコミなどでは“ロボットビジネス”というフレーズをよく目にするが,実際のマーケット規模はほんとうに小さいもの。いわゆる黎明期に,将来どうなるかということを議論してもあまり意味がない」と言う。

 「例えば,1000万円で“お掃除ロボット”が発売されたら,現在のテクノロジーからすれば画期的なこと。ただ,それなら年間200万円でメイドさんを雇ったほうが何倍も満足できるはず。ロボットはまだそのレベルでない。どんなところでロボットが必要とされるのか,Posyプロジェクトでは,ロボットの可能性を探るのも重要な目的だ。そこに,日本SGIは“絵の具と筆”を提供することになる」(秋元氏)

 女の子でも入りやすく――この言葉が示すように,Posyは女の子をイメージしたものになる。正式な発表は,「秋頃になる予定」(大塚氏)だ。日本SGIの描くロボットのイメージは,どのように具現化されるのだろうか?

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[中村琢磨, ITmedia]

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