News | 2001年8月20日 11:50 PM 更新 |
富士通研究所は8月20日,現時点で世界最高となる100Gビット/平方インチの記録密度を持つ磁気記録技術を開発したと発表した。ノートPCなどに搭載される一般的な2.5インチHDDで,約110Gバイトの容量を実現可能。同技術は,2001年度下期に発売するHDD製品に採用される予定だ。
水平磁気記録方式では,記録密度は100Gビット/平方インチが限界と言われていた。高密度化には「熱ゆらぎ」という問題がつきまとっていたからだ。熱ゆらぎとは,高密度化により微細化した磁性粒子が,室温程度の温度環境でも熱エネルギーの影響を受けるようになり,記録した情報が劣化してしまう現象のこと。富士通研では,この熱ゆらぎを防ぐために,新たな記録媒体として「SFメディア」を採用した。
SFメディアは,記録層と下地層の2層構造で構成される従来のディスクと異なり,この両層の間に多層層構造の「安定化層」とを設け(下図参照),記録層の記録信号を安定させることに成功。これによって,熱ゆらぎに対する耐性は,富士通の従来製品と比べて3倍になるという。
しかしながら,熱ゆらぎを軽減するだけでは高密度化は図れない。富士通研では,SFメディアに,0.16マイクロメートル幅で磁気信号を書き込む新技術,ならびにデータ読み取り出力を従来比で2倍以上アップした「ダブルスペキュラー型GMRヘッド」を組み合わせることで,100Gビット/平方インチの高密度記録技術に実用化のメドをつけた。さらに,より高出力ヘッドと組み合わせれば300Gビット/平方インチの記録密度(2.5インチHDDで約330Gバイト)も実現可能だという。
デスクトップ向けの3.5インチHDDからは撤退した富士通。ノートPCやデジタル家電といった成長市場でトップシェアを目指す同社にとって,今回の高密度記録技術が大きな武器となることは間違いないだろう。
なお富士通では同技術の詳細を,米国ミネアポリスで8月20日(現地時間)より開催される「TMRC国際会議(The Magnetic Recording Conference)」で発表する予定だ。
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