News 2001年8月27日 11:55 PM 更新

2人の大臣が口を揃えた“IPv6”――インターネット協会が設立披露パーティー

7月1日に公益法人化したインターネット協会が,都内で設立パーティーを開催した。来賓として出席した片山総務大臣と平沼経済産業大臣が口を揃えて“IPv6”に触れるなど,パーティー会場はさながら次世代インターネットへの“決起集会”になっていた。


インターネット協会設立披露パーティー

 財団法人インターネット協会は8月27日,都内で設立披露パーティを開催,協会メンバー企業首脳や政府要人,マスコミ関係者などが多数参加した。同協会は,1992年6月に設立した電子ネットワーク協議会と,1993年12月に設立した日本インターネット協会が,2001年3月に統合して誕生。同年7月1日に総務省と経済産業省から公益法人設立許可を得て,財団法人化した。理事長には,富士通の秋草直之社長が就任している。

 秋草理事長は冒頭の挨拶で「インターネットは経済活動のベースとなっている。2005年までに世界最先端のIT国家になることを目指しているe-Japan構想においても,当然インターネットがベースとなっている」と語り,“インターネット”を名前に冠する協会として,責任の重い立場であることを述べた。


「経済活動やe-Japan構想でも,ベースはインターネット。協会としても責任が重い」と語る秋草理事長

 同協会の前身でもある日本インターネット協会は2000年6月に,LAN普及団体の「ネットワーク協議会」とJava言語・環境の普及啓発を目的とした「Javaカンファレンス」という2団体を統合している。つまり,今年3月に2団体が統合した形でできた同協会は,実はインターネットに関連する4つの団体が集まってできているというわけだ。

 秋草理事長もこの件について触れ,「4団体が統合したことで,日本中のインターネット専門家が集まったということになる。今日お集まりの皆さんは頭の先から足の先までインターネットで染まっている人ばかりだろう」と語り,専門家集団の同協会は,大きな力になるとアピール。「この団体の提案力,意見を国内外に発信して,新しい時代におけるインターネットの問題点,課題を提案するべきだ」と締めくくった。

 続いて来賓の挨拶として片山虎之助総務大臣が壇上に上がった。「2005年までに世界最大のIT国家にしようということだが,その中核は世界最高水準のインターネット網の整備である。そのためにはIPv6を踏まえたインターネット網への移行が重要で,断固としてやらなければならない」と語り,e-Japan構想にはIPv6のような新しいインターネット技術の必要性を訴えた。


「世界最大のIT国家には,IPv6を踏まえたインターネット網への移行が重要」と語る片山大臣

 総務省では,7月に開催された情報通信審議会の第4回総会で“21世紀におけるインターネット政策の在り方について”という答申の中間報告が行われた。この件について片山大臣は「情報通信審議会では,色々な提言があった。しっかり実行していきたい」と述べて,政府のやる気を見せた。

 もっとも,その一方では「こういうものは“官”だけではダメ。小泉総理ではないが,“民”でやってもらえることはなんでもやってもらう。官がヨタヨタその後をついていく」との弱気発言も飛び出し,会場からは失笑ももれた。

 片山大臣は,7月の参議院選挙を終えたばかり。それもあってか「これからは,選挙運動も,投票も,開票もインターネットを使うようなことを本気で考えていきたい。電子政府や電子自治体というのは1番最初にやらねばいけないことだと思っている」と,懸案の電子政府について“総責任者”の一歩踏み込んだコメントも出た。

 続いて,平沼赳夫経済産業大臣が挨拶。最近のIT経済の低迷に触れ「IT産業に陰りがみえると言われているが,第2ステージを迎える中間点で一息ついているだけと私はみている。IPv6ひとつをとってみても,無限の将来が期待されている」と訴えた。

 また「eコマースを拡大していくためには,わが国にとって法律問題や規制撤廃問題など数々の問題を解決していかなければならない」と述べ,インターネット社会構築には問題が山積している点を指摘。このような問題に対して,協会から提言を求めるなど協力を仰いだ。


「IT産業に陰りはない。IPv6ひとつをとってみても,無限の将来が期待されている」と語る平沼大臣

 乾杯の音頭をとった慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏は「インターネットの世界で,これだけ背広とスーツが集まるパーティに出席したのは初めて。ましてや大臣が2人も来ている。インターネットの世界も,大変大きな転換期を迎えている」と語った。

 さらに「本来,私が技術の動向を話するべきだが,2大臣の口から“IPv6”という言葉が出てくるとなると,私は何を話せばよいのかということになる」と述べ,会場の笑いを誘っていた。

 村井氏は,インターネットの“グローバル性”を強調し,「インターネット上ででき上がることは世界貢献につながる。財団法人という機関は日本独自のものだが,政策としての協会の取り組みが“国に対するインターネットの規範”として世界に示せる可能性も出てきた」と語り,世界に対する貢献ができることが,協会設立の大きな側面であることを訴えた。


「グローバルなインターネット上での取り組みは世界貢献につながる」と語る村井氏

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[西坂真人, ITmedia]

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