News 2001年8月28日 05:05 PM 更新

Intel,プロセッサの新並列処理技術を発表

Intelが開発者向けの会議「IDF Fall 2001」で,新しい並列処理技術を発表。シリコン技術の発達でプロッセッサは大規模な回路を内蔵できるようになったが,並列処理の効率の悪さから多くの無駄な部分が出ているのが実情。新技術は,この問題のブレイクスルーとなる可能性がある。

 Intel主催の開発者向け会議「Intel Developer Forum Fall 2001(IDF Fall 2001)」が明日開幕する。それに先立ち,今回のIDFの見所についてプレス向けに説明があったが,その中で注目されるのが,SMT(Simultaneous Multi Threading)と呼ばれる並列化技術だ。

 Intelは他にも,SDRAMをサポートするPentium 4向け廉価版チップセットのi845,次世代I/O技術の核となる3GIO,P2P技術の具体的な応用,モバイルプロセッサのロードマップなどについて基調講演の中で触れる予定だが,もっとも大きな発表は明日,Paul Otellini氏(執行副社長兼Intel Architecture Group ゼネラルマネージャー)が基調講演で発表するSMTになるのは間違いないだろう。

マルチタスクOSのスレッド単位で並列処理

 プロセッサにおけるSMTとは,マルチタスクOS上で実行される複数のスレッドを明示することで,異なる処理パイプライン上で並列処理する技術だ。一般的な並列処理機能を備えたプロセッサでは,複数の処理パイプラインを命令単位で並べ替え,依存関係のない並列処理に置き換えて実行するスーパースケーラ技術を導入している。だが,SMTは,そのさらに先にある技術である。

 マルチタスクOS環境下では複数のスレッドが同時に走っており,スレッド間の依存関係は全くないか,あってもそれほど密なものではない。つまり,別々のスレッドを別パイプラインに割り当て,並列で実行しても依存関係が発生せず,効率的に複数スレッドを処理できる。

 SMTが特に優れている点は,従来と命令の互換性を維持できることだ。各スレッドを明示的にパイプラインに振り分ける処理は必要となるが(通常,これはOSが明示することになる),各スレッドの命令は既存のものをそのまま流用できる。並列に実行可能な命令をあらかじめ1つにまとめておくVLIWと決定的に異なるのはこの点だ。

 近年のプロセッサは,シリコン技術の発達で大規模な回路を内蔵できるようになったが,複数の処理パイプラインを実装しても,効率よく並列化できないと,多くの無駄な部分が出てきてしまう。SMTは,そうしたハードウェアリソースの無駄になる部分を最小限に止める技術である。

どのプロセッサに,どのような形で実装されるか?

 SMTは,マイクロプロセッサ業界では広く知られた技術だが,まだ実際のプロセッサに実装された実績はない。かつてAlphaプロセッサの技術がDECからCompaqへと移った頃,将来のAlphaプロセッサ(EV8)にSMTを実装すると発表し,記者向けの発表会も行ったことがある。

 そのAlphaプロセッサはEV8が完成することなく,先日,開発が終了することが発表され,その知的財産権はインテルに売却された。しかし,EV8は設計を終わらない段階で開発が終了しており,明日のIntelによる発表は,EV8の技術を導入するという話ではなさそうだ。

 というのも,今年2月にIntelはSMTをPentium 4のアーキテクチャに応用する「Project Jackson」という計画について情報をリークしていたからだ。Project Jacksonで計画されているプロセッサは,二つのプロセッサをひとつに収めたものと言われている。現時点では推測でしかないが,Pentium 4のコアを1チップに収め,SMTで処理の振り分けを行うものになると思われる。

 こうしたアーキテクチャが特に有効なのはサーバの分野であり,Xeonプロセッサの将来形としてSMTを応用したプロセッサを投入するのではないだろうか。Intelはハイエンドに64ビットのIA-64アーキテクチャを持つが,このIA-64は,少なくとも今後2世代はパフォーマンスが大幅に伸びるだけのスケーラビリティがある。これに対して,IA−32アーキテクチャのXeonプロセッサは先が見えている。IntelはSMTを用いてこのギャップを埋め,IA-32サーバのスケーラビリティをさらにアップさせるのではないだろうか。

 いずれにしろ,このSMTについては明日,正式な発表が行われる予定だ。

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関連リンク
▼ IntelのIDF 2001公式サイト

[本田雅一, ITmedia]

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