News 2001年9月11日 11:55 PM 更新

AV機器もイーサネット?──ビクターが描く家庭内AVネットワーク像

家庭内AVネットワークは,TCP/IPベースが良い? 日本ビクター技術開発本部の柴本氏は,AVネットワークの実現に重要なのは「インターネットとの親和性だ」と強調する。

 ハイパーメディアコンソーシアム主催のフォーラムで9月11日,日本ビクター技術開発本部の柴本猛氏が,同社のAVネットワークに関する取り組みについて講演した。

 柴本氏は,まず,AV機器のネットワーク化について「IEEE 1394を利用した製品がいろいろと登場してはいるが,ネットワークAVが実現されてるとは言いがたい」との見方を示し,「社内的には,IEEE1394はインターネットとの相性が良くないのではという意見がある」と語った。

 「AVネットワークの実現に重要なのは,プロプラエティな技術にこだわらないこと」と同氏。

 家庭内AVネットワークを構築する手段としては,物理インタフェースにIEEE 1394を採用するHAViや,電灯線ネットワークの「ECHONET」などが候補に挙がっているが,ビクターが選んだのは,イーサネットである。

 「これまで,いろいろな方法が検討されてきたが,インターネットとの親和性を考えた場合,AVネットワークにはイーサネットが向いている。プロトコルにはTCP/IPを使い,ネットワークAV機器には全て,イーサネットのインタフェースを装備することになるだろう。ギガビットイーサネットであれば,ストリーミングデータのやり取りも可能だ」(柴本氏)。

 なお製品化については,1社で進めるのではなく,「いろいろなところと話をしていく」(同氏)。

 また柴本氏によれば,日本ビクターでは,年末から2002年初頭にかけて,ネットワーク対応のデジタルビデオカメラなどを発売する予定だという。

イーサネットによる家庭内AVネットワークの構築

 日本ビクターが考えるAVネットワークを実現する重要なポイントは,AV機器に組み込まれる小型のWebサーバ(ナノサーバ)ならびに,各機器を管理する「マネージャ」と呼ばれるデバイスにある。

 ネットワーク化が想定されるAV機器は,デジタルビデオカメラのほか,デジタルテレビ,ビデオデッキ,オーディオなどさまざま。こうした機器には全て,ナノサーバが内蔵される。このWebサーバは,クライアントに対してHTML/Javaアプレットを送出するのが役目だ。

 「データ送出,ならびに自分のハードウェアリソース管理を行うだけなので,Webサーバは非常に小さくすることができる」(柴本氏)。


プロトコルは,TCP/IPならびにUDP/IP。有線と無線(Bluetooth/IEEE 802.11b)を組み合わせてネットワークを構築する

  これらのAV機器(サーバ機器)は,ナノサーバ上に自らの機能を記述したプロファイルを持つが,このデータを収集して,一元的に管理・制御できるようにするのが,マネージャと呼ばれるデバイスの役割だ。

 ユーザーが実際に操作するクライアント機器(TV等の表示系機器で,Webブラウザを内蔵する)は,まずこのマネージャに接続,マネージャは接続可能なデバイスの一覧を返す。ユーザーはこの中なら利用したいAV機器を選択し,その機器(サーバ)にリンクすることになる。また,マネージャはDHCP/DNSサーバの役割も果たす。

 「技術的には,PCでもビデオデッキでもマネージャになることができる。アンプだっていい。インターネットへのゲートウェイになるホームゲートウェイに機能を統合することも可能だ」(柴本氏)。

 イーサネットによる家庭内AVネットワークの構築を掲げる柴本氏だが,「家庭内ネットワークが1つの世界ではないことは承知している」とも話す。

 「例えば,プロキシを通してHAViのネットワークと相互接続できるようにすることも考えている。赤外線を使うエアコンや照明器具も,専用のプロキシを通して操作できるようにする」(同氏)。

 「大事なのはインターネットとの親和性」──講演の最後もこの言葉で締めくくった柴本氏。既に確立されている技術だけに,TCP/IPベースのAVネットワークは構築が容易になるようだ。ただ,イーサネットケーブルを家中に引き回すことになるのは,いかがなものかと……。

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[中村琢磨, ITmedia]

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