News 2001年9月26日 09:54 PM 更新

日本IBMのPC戦略はどうなる?

再編止まぬPC業界。日本IBMはPCのブランドを「NetVista」「ThinkPad」に統一し,中小企業をターゲットにする戦略を打ち出した。今後のPC事業の展開についてマーケティング部長の川口氏に話を聞いた。

 米Gatewayの日本市場撤退や,米Hewlett-Packardと米Compaqの合併など,PC業界再編の動きが加速している。

 そんな中,日本アイ・ビー・エム(IBM)も,PC製品のブランドを「NetVista」「ThinkPad」に統一し,中小企業・SOHO向けの販売を強化するという動きを見せている(9月7日の記事参照)。同社のPC事業の取り組みについて,パーソナル・システム事業部PCマーケティング部長の川口恭司氏に話を聞いた──。


川口恭司氏

ZDNN:ブランド統一は,SOHOや中小企業を狙ったものですか?

川口:個人向けデスクトップPCのブランドだった「Aptiva」は,個人ユーザーにインターネットという体験をもたらす製品として誕生しました。だが,現状では個人向け,企業向けという分類はもはや意味をなさないでしょう。

 というのも,ブロードバンド時代を迎え,家庭のPCにはネットワークインタフェースが標準で備わるようになりました。一方,企業向けと呼ばれる製品にもサウンドカードが装備されるなど,機能面での違いはほとんどありません。そういった状況でブランドを一本化することは理にかなっているでしょう。ただ,バンドルするソフトなどで店頭売りと企業向けの色分けはします。

ZDNN:つまり,ハードウェア的に個人向けに特化した製品はもう出ないということですか?

川口:そういうわけではありません。「ThinkPad iSeries S30」の“ミラージュブラック”のように,特徴的な製品を開発していくつもりです。

ZDNN:国内では,NetVistaよりもAptivaのほうが認知度が高かったのでは?

川口:確かに,その通りです(笑)。プロモーションもたくさんやりましたし。NetVistaブランドへの統一について,当初よりAptivaの開発に加わっていた社員の反対もありましたが,ワールドワイドでデスクトップのブランドはNetVistaということになっていますので……

店頭販売撤退はない

ZDNN:今後,ネット直販を強化していくのでしょうか?

川口:現状の販売実績では,ネット直販よりも店頭のほうがはるかに多く,ネット直販はわずか十数%にすぎません。また日本IBMの独自調査では,店頭でPCを購入するユーザーの25〜30%が企業ユーザーという結果が出ています。

 そこで,小売り店と協力して中小企業向けの販売戦略を展開します。具体的には,小売店にサポートコーナーのようなものを設置し,日本IBMの担当者がSOHOユーザーの相談にのります。また,そこではPCだけでなく,サーバ製品も売り込んでいきます。既に,いくつかのショップと話を進めており,年内にも実施される見込みです。

ZDNN:取引のある量販店全てが対象になるのでしょうか?

川口:対応が可能な店舗で展開します。ただ,それ以外の量販店を軽視するわけではなく,納入する規模をコントロールすることもありません。もちろん,「ブランドがNetVistaになったら,もう取り扱いません」という量販店があれば話は別ですが。

ZDNN:将来的には,ネット直販に完全に移行することはありますか?

川口:それは考えにくいです。来年度中には,ネット販売の売り上げをPC事業全体の30%には引き上げたいと考えていますが,そのうちの半分は,直販営業を通したものになるでしょう。純粋にネットだけで商品を買ってもらうのは,なかなか難しいことです。また,将来的にネット直販が拡大しても,店頭売りと半々がいいところじゃないでしょうか。

 実際,デルコンピュータも,法人営業がいたり,量販店に製品を置いていたり,“ハイブリッド”型のビジネスを展開しています。ネット直販に移行した方が,粗利は多くなりますが,それは,現在の売り上げ分を全て,ネットだけで達成できたらの話であって,現実的にはそうはいきません。

ZDNN:IBMはエンタープライズ分野のビジネスを拡大しています。その中で,PC事業はどのような位置付けにあるのでしょうか?

川口:IBMがハードウェアメーカーである以上,ハードウェアで利益を出せる構造を持つことは非常に重要です。例えば,トータルなシステムを提供する際に,他社製品のOEMで賄うことも可能ですが,IBMの製品として提案することに意味があります。PC事業は,そうそう簡単に止められるものではありません。

 また,具体的な数字は言えませんが,日本IBMのPC事業は黒字です。もし,今の2倍の量を売ろうとして,大々的なプロモーションを展開したら黒字の維持は厳しいかもしれませんが。

(文中敬称略)

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[中村琢磨, ITmedia]

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