News:速攻レビュー | 2001年10月1日 08:24 PM 更新 |
日本ではまだ大きな市場を形成していないパーソナル複合機だが,米国ではすでにインクジェットプリンタ市場の20%を占めるまでに至っているという。その米国で70%のシェアを持つのがHewlett-Packardだ。
これまでパーソナル複合機を扱ってこなかった日本ヒューレット・パッカードだが,今年,国内では同社としてはじめての製品となる「hp psc 750」を投入した。早速,その実力の程を確認してみた。
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プリンタとスキャナ,コピー機の機能を持つ複合機「hp psc 750」――上部から見たところ |
米国でこうしたインクジェットプリンタをベースにした複合機が登場したのは,およそ7年ほど前のこと。HPが発売した「OfficeJet」シリーズがその嚆矢で,プリンタ,スキャナ,FAX,コピーという,複合機の要素をすべて備えた同製品は,SOHO市場を中心に売れた。
一方,99年に登場したpscは,プリンタ,スキャナ,コピーの頭文字を取ったもので,FAX機能は統合されていない。PCにはFAXモデムがある他,電子メールなどで代替可能な場合が多いこと,FAXは単体での所有率が高いことなどがその理由だそうだ。
FAX機能を落とす分,コストを引き下げたことで,pscは成功を収め,インクジェットプリンタベースの複合機市場は大きく伸張した。しかし,これはあくまでも,SOHOマーケットが大きい米国での話。果たして日本でも同様の大きな市場があるかどうか,疑問を唱える者も少なくない。そこで日本HPは,家庭ユーザーにおける2つの異なるニーズを満足させる製品として,複合機のメリットを次のように説明しようとしている。
まず,PCを利用する"お父さん"は,高性能なPCプリンタと,様々な画像をPCでハンドリングできるスキャナが欲しい――つまり,カラーインクジェットプリンタとフラットベッドスキャナの両方を購入したい。
ところが"お母さん"は,これを快く思わない。部屋が狭くなるし,元々PCはWebや電子メール程度にしか使わないからだ。しかし,そんなお母さんも,コピー機は使いたい。一々コンビニに行くのも面倒だし,FAX機のコピー機能では,困ることも多いからだ。
“お父さん”が,そんな“お母さん”に購入を説得できるのが,パーソナル複合機――というわけだ。複合機ならカラーコピー機としても利用でき,設置場所もひとつで済む。
さて,肝心の製品だが,これまでこうした製品は,プリンタの速度面で少々不満が残るものが多かった。日本市場ではエプソンのCCシリーズが高いシェアを誇るが,カラー印刷時の速度や普通紙の画質に関しては,数世代前のものとなっている。
対してpsc 750は,Deskjetシリーズの中堅機種である「Deskjet 957c」の印刷エンジンをベースに開発されている。Deskjetシリーズは普通紙への印刷品質がモノクロ,カラーともに高く,写真印刷以外の用途では速度面での不満も小さい。
複合機では写真印刷よりも,実用的な書類の印刷/コピーが多くなるだろう。それを考えれば,普通紙画質の高いDeskjetシリーズのエンジンがベースになっている点は好感が持てる(贅沢を言えば,Deskjet 990Cxiのエンジンならばさらに良かったのだが)。
したがって,プリンタとしての基本的な機能はDeskjet 957cに準ずる。モノクロ毎分11枚,カラー毎分8.5枚(いずれもエコノモード)で,インクカートリッジも同一である。
ただ1点,大きく異なるのは,自動両面印刷ユニットを利用できないことだ。メカニズム的に取付部分はあるのだが,自動両面ユニットを制御する端子部分が省略されているため,取り付けても動作させることはできない(ドライバ側でも自動両面印刷は無効になる)。
これに光学解像度600×1200dpiのCCDフラットベッドスキャナが組み合わされる。現在,HPは市場価格の下落を理由にフラットベッドスキャナ市場から撤退しているが,かつてはScanjetシリーズが一世を風靡したことがある。その技術が現在,複合機の分野で引き継がれている。
本製品はDeskjetの上にスキャナを乗せたようなデザインとなっており,思いの外,場所を取らない。設置に必要な面積は,背の高さ以外はDeskjetシリーズとほぼ同じと考えていい(ただし,高さに関してはスキャナ部の蓋を開くスペースが上部に必要)。