News 2001年10月2日 11:55 PM 更新

キヤノン,インクジェットプリンタ8機種とデジカメ2機種を発表

年末商戦に投入するインクジェットプリンタ8機種とデジカメ2機種を発表したキヤノン。インクジェットではVIVIDという新しい色へのアプローチを行い,BJシリーズに「PIXUS」という新ブランド名も冠している。同社ではこの製品を足がかりに「シェアトップを」と意気込んでいた。

 キヤノンは2001年末商戦に投入するインクジェットプリンタ8機種,および320万画素,400万画素のコンパクトデジタルカメラを発表した。

 キヤノンの御手洗社長は「デジタルイメージング機器合計で,2005年に5000億以上の売り上げを目指す。下方修正しなくていいよう,非常にコンサバティブな数字。デジタルカメラとインクジェットプリンタの両方でシェアトップを獲る」と話す。

 今年の製品群は,トップへと迫りつつある各分野で,さらにライバルへと肉薄するためのものだ。キヤノンはこの10年でもっとも成長した1兆円超の企業(95年前後に連結ベース1.5兆円規模だったが,現在は3兆円に迫る規模に成長している)だ。

 「2005年には4兆円規模にまで成長し,そのうちの30%に当たる7500億円がカメラとインクジェットプリンタ事業になる」(御手洗氏)。

 今年の同社製インクジェットプリンタは,ミドルレンジに1パス双方向印刷の高速ヘッドを搭載したBJ S700を置き,その下位にS500,S300,S200の低価格機を配置。ハイエンドには高速の写真画質出力を特徴とするBJ Fシリーズを置く,昨年と基本的に同じ構成だ。またBJシリーズには「PIXUS(ピクサス)」という新しいブランド名が与えられた。

 A4対応では最高機種となるF900は,従来機比で2倍にノズル数を増加させた製品。A4サイズの写真印刷を1分で行えるのが特徴である。また,昨年モデルのF870後継としてF890,ダイレクトプリント機能を搭載したF890PDを投入する。

 F890は,同時発表されたデジタルカメラのPowerShot S30,S40と専用ケーブルで接続し,カメラ側の操作で印刷を行うこともできる。F900と同じ画質,速度でA3ノビにも対応(A3全面写真出力2分)したF9000も追加された。


従来機比で2倍にノズル数を増加させたF900

 低価格なSシリーズは普通紙画質や速度などの実用性能を重視した構成,上位機種のFシリーズは高速に写真を出力することを目標にした製品で,価格帯によって重要視する性能に変化を付けたラインナップである。

 Fシリーズの画質は,基本的に昨年から変化していないが,今年は色に関して従来とは異なるアプローチを行っている。昨年までのFシリーズは比較的銀塩写真に近い色の傾向を持っていた。今年もデフォルト状態では同様の出力となるが,新たに加わったVIVIDと呼ばれるカラーモードをオンにすることで,人間が頭の中で思い浮かべた時の色に近い,つまり記憶色に近い色再現を行うよう調整した。

 また,VIVIDではインクジェットプリンタの色再現域がPCの標準的な色空間であるsRGBよりも広いことを利用し,PCディスプレイ上では再現できない色を出力する。エプソンが昨年発表したナチュラルフォトカラーと同様のアプローチだが,VIVIDの方がより強く補正を行うようだ。VIVIDは今回発表の全機種に対応している。

 こうした記憶色補正は,画像に対して一律に彩度向上などの処理を施すのではなく,特定範囲の色に対して,色相と彩度を同時にずらすことによって実現しているという。

 例えば,くちびるのピンクはより鮮やかに見えるようにするが,肌色はそのまま補正せず,自然なままで残したり,風景の建物はそのままの色合いにしつつ背景の空や緑を記憶色に近い色相に変化させながら彩度を上げる,といった処理が行われる。

 さらに全機種が各色独立インクタンク,四辺フチなし印刷をサポート。四辺フチなし印刷は印刷速度の低下が僅かで,はがき全面の写真画質印刷を100枚に行った場合に,約1時間で処理が終了するという。

 また,フチなし印刷時のマージンを4段階に調整し,裁ち落とし幅をマニュアルで調整できるようにしてある。このあたりは,フチなし印刷で速度が大きく落ちてしまうライバルをよく研究しているという印象だ。

「PowerShot」の新製品2機種も発表

 デジタルイメージング機器のもう一方の柱であるデジタルカメラは,PowerShot GシリーズとDigital IXYの中間に位置するPowerShot Sシリーズに新機種を投入。PowerShot G2に搭載されたの高精度ホワイトバランスや新映像エンジン,3点測距AiAFなどの技術をコンパクトな筐体に収めている。

 発表された2機種は,いずれも減色カラーフィルターの1/1.8インチCCDを搭載し,35ミリフィルム換算で35〜105ミリの電動ズームを搭載している。

 上位機種のS40は400万画素,下位機種のS30は320万画素で,両者の価格差は1万円と比較的接近しているが,S30に搭載される320万画素CCDは新開発の高感度・ローノイズ対応を採用しており,製品の魅力としては張り合っている。最高感度もS40がISO400であるのに対し,S30はISO800までゲインアップ可能となっている。言い換えれば同じ感度ではS30の方がノイズの面で有利といえるだろう。


320万画素でISO800まで対応するS30

 両機種とも,セットボタンと十字ボタンを統合した新しい操作ボタンを採用し,他の設定ボタンを含め,ほとんどの操作を右手親指だけで行える。また,手動式のレンズバリアを採用し,その開閉で電源のオン/オフを行える。PowerShot G2の機能性や高画質な画像処理,カスタマイズ性などはそのまま,コンパクトさを重視したボディとレンズを与えられたのが新PowerShot Sシリーズと言える。

 また,新機種だけの機能として新たにマイカメラと呼ばれる機能が加えられた。これは起動画面やシャッター音などを,自分の好みに合わせてカスタマイズする機能。あらかじめパッケージには100種類の音の組み合わせや背景画面が収められており,PCからダウンロードすることで好みの設定にできる。

 さらにキヤノン製デジタルカメラユーザー向けに無料で利用可能なCanon Image Gatewayをオープン。Image Gatewayでは,インターネット上のフォトアルバムサービスが利用できるほか,マイカメラ用のコンテンツも提供される。

 キヤノン販売社長の村瀬治男氏は「デジタルフォトイメージングの未来を創るキヤノンというキャッチフレーズを掲げているが,もう未来ではなく現在だとの想いを感じ,私自身新製品に興奮している」と話す。その自信が目標とするシェアトップ企業への肉薄へとつながるかどうか。年末商戦はもうすぐだ。

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[本田雅一, ITmedia]

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