News 2001年10月17日 11:59 PM 更新

東芝と松下,液晶事業で新会社を設立

東芝と松下電器が,両社の液晶事業を統合する形で液晶新会社を設立する。東芝の大型低温ポリシリコンTFT液晶量産技術と,松下の高速液晶駆動技術を組み合わせることで,高付加価値で競争力の高い液晶の生産を目指す。

 松下電器と東芝は10月17日,両社の液晶事業を統合し,液晶新会社を設立すると発表した。東芝の大型低温ポリシリコンTFT液晶量産技術と,松下の高速液晶駆動技術を組み合わせることで,高付加価値で競争力の高い液晶の生産を目指す。

 

 液晶事業の新会社は,東芝が60%,松下電器が40%の出資比率で設立。両社の液晶事業に関する開発・製造・販売部門を移管する。これにより,世界第3位の事業規模を有する液晶メーカーが誕生することになる。

 記者発表には,東芝からは岡村正社長と濱野栄三郎常務が,松下電器からは中村邦夫社長とディスプレイデバイス社の大鶴英嗣社長がそれぞれ出席した。


記者会見にのぞむ東芝・岡村社長(右)と松下・中村社長(左)

 液晶ディスプレイ市場は,韓国を筆頭にアジア各国の液晶メーカーが台頭し,熾烈なコスト競争が展開されている。

 両社は今年2月に,低温ポリシリコン液晶パネルを製造する合弁会社「アドバンスト・フラット・パネル・ディスプレイ(AFPD)」をシンガポールに設立するなど協力関係を深めていた(2月23日の記事参照)

 今回の提携について岡村社長は「液晶事業は新規参入も多く,競争も激しくなっている。液晶に関する両社の技術を融合させ,高付加価値商品を作り出し,国際的競争力を高めていくことが必要だった」と語る。

 また,松下電器の中村社長は,「今年2月のシンガポール新会社設立のとき,液晶事業統合の話も同時に持ち上がった」と,今回の新会社設立が両社の協力関係の一環である点を述べた。

 東芝が誇る低温ポリシリコン液晶は,次世代ディスプレイとして期待される有機ELでも利用される重要デバイスだ。従来のアモルファス液晶に比べて高精細化が図れるだけでなく,回路をポリシリコンの基板上に作りこめるため,部品点数の削減などローコスト化にも有利となる。「これからのブロードバンド時代には不可欠の液晶。部品点数の少なさは軽量で壊れにくくなり,モバイル機器に適した液晶ディスプレイともいえる」(岡村社長)。

 一方,松下電器も1994年に液晶事業部を設立してから今日まで,液晶分野の拡大・強化を図っており,最近では,世界最高の応答性を実現したワイド液晶や,高精細の車載向け液晶,携帯電話向け小型液晶などバラエティにとんだアプリケーション液晶を投入している。

 低温ポリシリコンや高速駆動技術といった最先端の液晶製造技術は,いわば両社の切り札的存在だ。競合会社同士で,このような先端技術での協業というのは,極めて珍しいケースといえる。

 この点について岡村社長は「技術開発のスピードが非常に早く,時間との勝負になっている。価格競争も厳しい。生産拠点の統合による量産効果がコストダウンにつながり,商品化スピードもアップする」と協業の理由を語った。

 また,中村社長は「もう1つ加えると,液晶TVや携帯情報端末,カーナビなど今後松下内部での需要が急激に旺盛になる。技術とともに量産効果を製品に反映させ,自社製品の競争力を高めていくため」と語った。

 新会社では,単なる液晶表示パネルの製造だけでなく,低温ポリシリコンの基板に駆動装置やメモリーを組み込んだシステム液晶,さらには有機ELなど次世代ディスプレイの開発も行っていく。共同での技術開発や部品材料の標準化をはかり,PCモニタや液晶テレビといった大型液晶からPDAや携帯電話向けの小型液晶まで,フルラインアップで展開していく方針だ。


固い握手を交わす両社の社長

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[西坂真人, ITmedia]

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