News 2001年10月18日 09:32 PM 更新

DRAM価格は来年第2四半期に底を打つ――ガートナージャパン

ガートナージャパンがまとめたDRAM市場の動向と今後の展望によると,DRAMの価格は2002年第2四半期に底を打ち,それからゆるやかに上昇していくという。

 「DRAM市場にとって2001年は最悪の年だった。さらに2002年も悪い状況は続く。一方,DRAMの価格は,2002年第2四半期に底を打ち,それからゆるやかに上昇していく……」

 ガートナージャパンが10月18日に行ったプレス向けブリーフィング「世界のDRAM市場動向と今後の展望」の中で,同社シニアアナリストのAndrew Norwood氏はDRAM市場の動向と展望をこのように語った。

 同社データクエスト部門の調査では,2001年の世界DRAM市場の売上が対前年比66.6%減の105億ドルとなり,2002年になるとさらに19.2%減となる85億ドルになると予測している。


世界DRAM市場の売上げ推移

 ピークだった1995年には418億ドルを記録していたDRAM市場も,以後,1998年までは下降線をたどってきた。しかし1999年からは反転し,2000年は300億ドルを超えるところまで回復していた。

 それがIT不況で2001年に一気に下落。同社予測によると,2002年はピーク時(1995年)の実に1/5にまで落ち込むという状況になる。今回のDRAM不況の底深さが浮き彫りとなった結果が見て取れる。

 「DRAM市場にとって2001年は“ワーストイヤー”だった。さらに2002年も悪い状況は続くだろう」(Norwood氏)。

 大きく落ち込んだ2001年DRAM市場の最大の原因は,大幅な価格の下落だ。128MビットDRAMのスポット価格推移を見てみると,昨年10月には11.3ドルだったのが現在では1.05ドルにまで落ち込んでいる。なんと,この12カ月で90%も価格が下落してしまったのだ。これでは,いくら売っても売上げは伸びない。


128MビットDRAMの価格推移

 このようにDRAM価格が急落した原因についてNorwood氏は「DRAM需要そのものが消滅した。その最も大きな要因はPC需要の不振にある」と語る。

 毎年15%前後の成長を見せていたPCの販売が,今年初めて前年を下回ると見られている。この「PC販売の落ち込み」によってDRAMの需給バランスが崩れた。DRAMの供給過多が生じ,それが価格の下落となって表れているのだ。

 何社かのDRAMメーカーは減産計画を発表しているが,それも小手先のものであり,主要メーカーによる徹底した生産調整ではない。マーケットシェアを失うことを恐れて,率先して対策をとるメーカーがいないのだ。結局,今後も苦しいシェア争いを続けなければならないことになる。

 しかし市場での現在のDRAM価格は,はっきり言って異常だ。「昨年10月には230ドルした256MバイトのPC133 SDRAMが,今では30ドルで買えてしまう。しかし実際のコストは70ドルかかっている」(Norwood氏)。つまり,DRAMメーカーは原価割れで生産しているというのだ。

 「この異常な競争に耐え切れないメーカーが2002年には出てくる」とNorwood氏は警鐘を鳴らす。

 特に現在シェア3位の韓国Hynix Semiconductor(旧Hyundai)は財務的に厳しく,「2002年の早期にDRAM市場が回復しないと,企業として存続できるか疑問」(同氏)という切迫した状況だ。シェア4位の独Infineon Technologiesと6位の東芝が事業統合するという動きもある。

 つまり,DRAMメーカーの統廃合が加速されることで稼動ライン数が削減される。そうなれば,産業構造のリストラクチャリングが働き,それがプラス成長に転ずる要因となる。このような理由から「2002年の第2四半期にはDRAM価格の下落は底を打ち,以後ゆるやかに回復するだろう」という冒頭のNorwood氏の予測が成り立つのだ。

 現在の状況はDRAM業界にとっては厳しいが,底値でメモリを購入することができるパソコンメーカーやエンドユーザーにとっては好材料といえる。

 「DRAMメーカーはビジネスを維持するために,70ドルのメモリ代金のうち40ドルを支払っているのだ。彼らに感謝しよう」(Norwood氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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