News 2001年10月19日 11:55 PM 更新

真のWindows時代の始まり〜連載終了のご挨拶に代えて

 この連載も108回目を迎えた。除夜の鐘ではないけれど,煩悩の数だけ,いろんなことを書いてきたことになる。第1回は1999年の8月16日掲載なので,2年と少しが経過したことになる。

 当時のぼくは,翌年の2月に発売になるはずのWindows 2000を熱心に評価していた。あのころのマイクロソフトは,Windows NTの後継となるWindows 2000を,企業向けのみならず,パワーユーザーにも使ってもらえるOSであるというマーケティングをしていた。雑誌の付録としてもRC2が配布され,一般ユーザーを巻き込んだ大規模なベータテストも行われた。

 ところが,実際にWindows 2000が発売されてみると,同社からは企業ユーザー向けのOSとして位置づけるという方針が表明され,コンシューマ向けのパソコンにこのOSがプレインストールされることはほとんどなかった。

 かろうじて,ソニーはVAIOにWindows 2000モデルを用意し,その堅牢性,安定性をアピールしたが,決してコンシューマ用OSのメインストリームにはならなかった。このあたりの経緯は,このコラムの読者であれば,十分にご存じのことだと思う。

 今,Windows XPの発売を前に,ようやくWindowsがひとつになろうとしている。プロフェッショナルとホームエディションという2つのバージョンがあるとはいえ,その基本アーキテクチャは同じだ。

 もっとも,マイクロソフトは,今日の時点になっても,日本語版のホームエディションを,未だ評価用に提供していない。各社のパソコンにプレインストールされるのは,ほとんどがホームエディションなので,この状況にはちょっと奇妙な印象を感じる。

 ホームエディションとプロフェッショナルの違いは多岐にわたるが,ごく普通の使い方をする分には,ホームエディションで不便を感じることはないだろう。いろんな意味で,ホームエディションは9x系OSから大きな進化を遂げたが,プロフェッショナルは,その前身である2000系OSに,それほど多くのアドバンテージを付け加えることができなかったということでもある。

 9x系OSでサポートされていたのに,XPホームエディションでサポートされていない機能は,Windowsドメインへのログオン機能のみだといっていいだろう。それも,パスワードの入力さえいとわなければ,ドメインネットワーク上のリソースは何不自由なく利用できる。

 メーカーに自社仕様のパソコンを大量に特注する大企業はともかく,量販店でパソコンを購入し,自分で環境を作るユーザーで構成されたSOHOなどでは,プロフェッショルを選ぶ理由を見つけにくいかもしれない。第一,量販店に並ぶパソコンは,そのほとんどがホームエディションプレインストールなのだ。そういう意味では選択肢がないということでもある。

 マイクロソフトは,製品の出荷までに,プレインストールされたホームエディションをプロフェッショナルにアップグレードするためのソリューションを,何らかの形で提供するとアナウンスしている。が,キャッシュバックキャンペーンなどのリリースはあったものの,この部分については,まだベールに包まれたままだ。

 白状すると,ぼくは,過去に,Windows Meプレインストールパソコンを親類縁者3名に購入させている。時期的には多少ズレはあるので,仕様的には異なるパソコンだが,11月になったら,追加のメモリモジュールとアップグレード用のパッケージを届けようかと思っている。

 これらのパソコンの運用に伴い,ぼくのところに求められるSOSのほとんどは,突然のブルースクリーンやフリーズなど,電話やメールでの訴えでは何が起こっているのか,よくわからないことばかりだったからだ。

 ぼく自身は,Windows 2000をコンシューマにも自信を持っておすすめできるOSとしてとらえていたが,残念ながら,世の中の流れはそうならなかった。でも,XPは違う。このOSなら,みんなが幸せになれそうな気がする。OSの優劣はさておき,みんなが同じOSを使うということは,想像以上に重要なことだからだ。それは,みんながPCアーキテクチャのマシンを使うことで得られたメリットを考えればわかってもらえると思う。

 1987年,パソコンに関する単行本を初めて上梓したとき,ぼくは,そのあとがきで,世の中のパソコンがみんなPC-98になればいいのにという意味のことを書いた。のちに,パソコン通信のBBSで知り合った方からメールをもらい,それじゃパソコンの世界がつまらなくなるかもしれませんねという感想をもらされた。

 当時は,NECのPC-9800シリーズの全盛期で,そのほかのメーカーのパソコンはサードパーティから発売されるアプリケーション不足に苦労していた。ソフトとハードはクルマの両輪のようなもので,どちらがなくても運用はできない。

 時は流れ,DOS/Vパソコンが少しずつポピュラーな存在になってきた。Windowsは98シリーズとPCアーキテクチャの間の垣根を少しずつ取り除き,今では,多くの海外製アプリケーションが何の工夫も必要とせず,日本語版のOSで動くし,OSそのものもマルチ言語対応で,英語版のWindowsで日本語を使うのに特に不自由することはない。そして最後の砦であったWindowsの一本化だ。

 世界中のパソコンがひとつのWindowsで動こうとしている。LinuxやUNIXがあるじゃないか。Macはどうなのよ。などなど,いろいろな意見はあると思うが,とりあえず,今の時点では,Windowsプラットフォームがひとつになることが大切だ。

 世界中のパソコンがPCになり,Windowsで動く。とてもよくないことだということはわかってはいるが,それによって得られる幸せは計り知れない。ただ,このあたりで,強大な互換OSが出てきてほしいという願望もある。そんなことがあっても,自信を持ってマイクロソフトのWindowsを選ぶようにお奨めできるだけのアドバンテージを,きちんと見せてほしい。

 長い長い過渡期を経て,今ようやくMS-DOSの後継OSとしてのWindowsが世に問われようとしている。物語はこれから始まるのだ。

 長い間,ご愛読ありがとうございました。ご意見ご感想,連載再開(笑)のご要望などがあれば,ぜひ,編集部まで。ではまた,いつか,どこかで。

[山田祥平, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.