News | 2001年10月22日 10:09 PM 更新 |
「我々がやろうとしているのは,“ナイトライダー”のような車の実現」――ゼンリンデータコム社長の林秀美氏のスピーチは,こんな刺激的な言葉で始まった。
これは「2001東京国際自動車会議」内のセッション「車の情報化はどこまで進むか―iオートモービルの未来―」での一場面だ。同会議は,自動車メーカーから部品メーカーまで自動車業界の経営者・開発者が一堂に集まった“自動車サミット”ともいうべき催し。今週開催される東京モーターショーに合わせて行われた。
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「“ナイトライダー”のような車の実現」と語るゼンリンデータコム社長の林氏 |
ナイトライダーは,15年ほど前に放映されていたTVドラマシリーズ。主人公の刑事マイケル・ナイトの愛車「ナイト2000」は,007のボンドカーさながらのさまざまな改造が施され,マイケルの良き相棒となって活躍するというアクションドラマだった。
AI(人工知能)を搭載したナイト2000は人間並みの人格を持っており,冗談を交わしたりもする。機械が人間らしく会話をするという発想は当時としては画期的な内容で,フロントグリルに電飾が光るあの独特のスタイルとともに,記憶している読者も多いだろう。
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人間並みの人格を持ったAIを搭載したナイトライダー(ナイト2000) |
では,“ナイトライダーのような車の実現”というのはどんなことを意味するのか。まさか,赤色LEDが点滅し,水陸両用でロケットブースターを搭載した車のことではあるまい。林氏はそれを「我々ドライバー自身の,良きパートナーとなってくれる車」と定義する。
会場では,こんなシチュエーションが紹介された。
ドライバーが「お腹が空いた。ラーメンでも食べたい」と言うと,いつも行くラーメン屋さんを提案してくる。「いつものラーメン屋さんか……」と,ちょっと不満げに言うと,「最近オープンしたラーメン屋があるので,そこに行きましょう」といった会話が展開される。
提案されたラーメン屋も,単なる新規オープン店ではなく,それまで行ったラーメン屋を分析して嗜好や性格,体調のパターンなど全て加味した上でチョイスされた店であるという。
「車そのものがコミュニケーションしてくれる。ドライバーや同乗者の志向に応じて認識する,有能な秘書でありパートナーのような車」と林氏は語る。
こんな夢物語のような車が,本当に実現するのだろうか。
同社では,コンテンツプロバイダーとしてデータの提供する立場から,個人やグループ単位のプロファイリング(収集,整理)システムを構築することで,ナイトライダーを実現するためのアプローチを行っている。
その第一弾として,10月24日より,ネットワーク型地図情報サービス「Zm@p on net(ゼットマップ オン ネット) 」を開始する(10月17日の記事参照)。
これは,専用クライアントソフトを利用し,同サービス向けに作成した新市街地図データをネットからダウンロードして使用できるサービスだ。地図データはベクトルデータのため,連続的で無段階の拡大縮小やスクロールが可能という。
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ネットワーク型地図情報サービス「Zm@p on net」 |
現時点では,地図データベースの更新は基本的に年4回と,ややリアルタイム性に欠けたシステムとなっている。「目標はリアルタイムのメンテナンス。まず始めに,テーマパークやランドマークとなるような施設は開設日に更新するようにしていく」(林氏)
このZm@p on netは,まずPC向けでスタートし,来春以降,携帯電話やPDA向け,そしてカーナビ向けへと順次拡大していく予定だ。
このようなサービスを足がかりに,同社ではリアルタイム情報を個人の嗜好を配慮して提供していくシステム「ONE to ONEサービス」を展開していくという。
「ユーザーのアクセスや行動・状態・状況をもとに学習していくことで,このシステムが“パートナー”に近づいていく」(林氏)。
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リアルタイム情報を個人の嗜好を配慮して提供していく「ONE to ONEサービス」 |
林氏が描く“ナイトライダー”実現までの未来予想図は,次のようなものだ。
こうしてみると,かなり高め?のハードルを超えなければならないようだ。例えば,ハード的には,センシング技術やAI(人工知能)技術,完全な音声認識など,さらなるテクノロジーの進展が必要だが,林氏は「それはここに来られている(自動車メーカーや部品メーカーの)皆様に実現してもらいたいこと」と述べ,自動車メーカーとの相互協力によって実現する点を強調した。
「そして,2005年には“車がパートナーになる日”,つまりナイトライダーが実現する」(林氏)。
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