News:ウェストコースト通信 2001年10月22日 04:16 PM 更新

ウェストコースト通信:すべてが移ろい,壊れ行く中,輝き続けるeBay

同時多発テロによる物理的・精神的ダメージ。底の見えないリセッションと,散々たる企業業績,そしてITバブルの崩壊……。その中にあって,eBayは以前と変わらぬ輝きを保ち,「インターネット企業」が単なる幻想ではなかったことを示している。

 9月11日を境に世界が変わってしまった。もはや,9月10日までのアメリカは戻ってこないのではないか。こんな気持ちを多くのアメリカ人が抱いている。

 経済的なダメージに加え,アメリカ人の精神に与えた衝撃は,同時多発テロ発生から1カ月を経た今も予想以上に深い。未曽有の大惨事を前にして,これまで自らが強い関心を抱いていたことがすべて些事に思え,まったく異なる人生を歩みだした人も少なくない。

 また,天下国家のことだけではなく,家族や愛する人との時間を大切にしようという傾向も顕著にみられるようになった。一人暮らしをしている人は,急に孤独感にさいなまれ,日本でいう「出会い系サイト」に安らぎを求めようと,それらサイトは活況を呈してさえいる。

 ただでさえチャリティーが盛んなお国柄ではあるが,9月11日を機にその犠牲者や家族へのさまざまな形でのチャリティー活動も続いている。

 サンノゼに本社があり世界最大のオンラインオークションを運営するeBayは,ニューヨーク州知事とニューヨーク市長の要請を受けて,同社のサイト上で“Auction for America”というチャリティーオークションを開催している。この10月17日には,全米38州の州知事も自らのアイテムをeBay上に出品して,チャリティーに協力することも発表された。

 国中にこれまでと一変した空気の漂う中,先週から次々と各社の第3四半期の業績が発表されている。減速する景気に追い討ちをかけるような同時多発テロの影響もあり,各社総崩れともいえる状況だ。

 そんな中,目を引くのは前述のeBayだ。「シリコンバレーの新聞」がうたい文句であるサンノゼ・マーキュリー紙10月19日付のビジネスページのトップを飾っているは,このeBayが第3四半期もまた好調な業績を発表したとのニュース。

 ネットバブルが崩壊して以来,つぎつぎとドットコム企業が倒れてゆく中で,常に黒字を出し続け,期待を上回る業績を上げ続けている稀有な企業だ。

 もともとeBayは,コレクター向けのサイトとしてスタートした。創業者であるPierre Omidyarが,フィアンセの収集するお菓子のペッツの容器のトレーディングの場としてインターネットに開設したのが,その成功物語のささやかな始まりだった。

 一部のマニアの世界向けのトレーディングの場としてだけでもビジネスとして十分に成立したであろうが,eBayは実利品も含めたあらゆるアイテムの取引の場としての拡大を目指し,それを実現している。たとえば,自動車のオンラインオークションでもeBayが全米一の規模を誇っているのだ。

 この成功を支えた米国におけるeBayのマーケティング手法はネットブームの当時としては,やや意外なものであった。多くのネット企業が,知名度によるマーケットシェアの獲得を目指し,マスメディアに巨額の広告宣伝費を投じる中で,eBayは一貫して保守的な態度を貫いた。

 ユーザー獲得のコスト効率を優先させ,口コミ(はやりの言葉で言えばバイラルマーケティングということになろう)によるユーザー数拡大と効率的なオンライン広告のみにフォーカスしたのだ。

 既存のネットユーザーの間では,すでにeBayは高い知名度とユーザー数を獲得したこともあり,さらなるユーザーベースの獲得を目指し,テレビCMや一般誌への広告を行うようになったのは,ようやく今年に入ってからのことである。

 当初は,オークションという変動価格による取引の場のみであったeBayだが,最近では固定価格による取引の比重も高まっている。一定の価格であればオークションの終了をまたずに購入できる"Buy It Now"(eBayジャパンでは「即時購入」と呼ばれている)の導入や,eBay上で自らのオンラインショップができる「eBayストア」も固定価格の販売に役立っている。またeBay傘下のHalf.comでは,すべての商品が半額で買えるというように,これも固定価格による取引増大に大いに貢献しているようだ。

 ネットでのビジネスは,結局のところ,すべてだめなんじゃないか。そんな悲観的な見方が充満する中で,eBayの快進撃に心救われる人も少なくないだろう。

[小田康之, ITmedia]

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