News 2001年10月31日 10:43 PM 更新

MS,車載端末用Windows CEの最新版をリリース

マイクロソフトの車載端末向けOSの最新版「Windows CE for Automotive 3.5」がリリースされた。自動車業界の要求に応えるための機能が追加されたことが特徴だ。

 「東京モーターショー2001」開催中の幕張で10月31日,マイクロソフトは車載情報システム用の最新OS「Windows CE for Automotive 3.5」を発表した。WCE for Automotive 3.5の特徴は,「PCの汎用性と組み込み機器のリアルタイム性を兼ね備えている点」(マイクロソフトITS戦略統括部の平野元幹部長)。自動車メーカーや車載端末開発者の負担を大幅に軽減できるという。

 「Auto PC」から「Windows CE for Automotive」に名称が変わったのが2000年9月。平野氏は,このときの最大の変化は「自動車業界に受け入れられるよう努力したこと」だったと話す。WCE for Automotiveが,Windows CEファミリの中で独自の展開を見せているのもそのためだ。

 マイクロソフトでは当初,Auto PCをPocket PCのようにユーザーインタフェースまで作り込んだ製品にしていたが,「自動車メーカーから,他社と同じ画面デザインのものは受け入れられない」と指摘され,WCE for Automotiveでは,プラットフォームに特化することにした。

 また,WCE for Automotive 3.0には,日本独自仕様として,地図の高速描画ライブラリ「GDI-Sub」を導入するなど,国内の自動車メーカーの要求に応えるための改善を行ってきた。

 最新版のWCE for Automotive 3.5では,この流れをさらに発展させ,新たに「フレキシブルUI」を導入。また,Windows CEファミリでは初めて,デスクトップ用OSで使われている音声認識システム「SAPI5」(Speech API バージョン5)に対応した。

 フレキシブルUIは,「ACC」(Automotive Common Control)ならびに日本独自拡張仕様のACC-extを利用したUI構築ツールで,画面の遷移やアニメーションなどをXMLリソースファイルで定義することができる。バージョン3.0では,モデルごとにUIを開発する必要があったが,フレキシブルUIにより,UIをコンポーネント化することが可能になり,リソースを再利用できるようになった。

 「現在,車載端末開発の作業工程の3分の1がUI部分だと言われる。1モデル開発するのに,プログラマやデザイナーを100人も導入している状況だが,WCE for Automotive 3.5の登場で開発環境は大きく変わるだろう。自動車メーカーが社内でUIまでを開発し,システム開発だけを外注することも可能になる」(平野氏)。

 そのほか,WCE for Automotive 3.5では,DRAMの電源をいったん落としてから起動するコールドブートの速度アップが図られたほか,開発するシステムの規模に応じてモジュールを選べるようにした。

 具体的には,ブラウザであれば,組み込みIE4(3.3Mバイト)または携帯電話向けブラウザの「MS Mobile Explorer」(700Kバイト)を,日本語フォントはMSゴシック TrueType(4.2Mバイト)もしくは小型ビットマップ(600Kバイト)を選ぶことができる。「小型車用には低価格でメモリ容量も少ないロースペックな車載端末,高級車向けにはハイスペックな車載端末という切り分けが可能になる」(同氏)。

 平野氏は,WCE for Automotiveに搭載された新機能は,「Windows CE for Automotiveフォーラム」の成果だと強調する。WCE for Automotive 3.0のリリース時に結成された同フォーラムには,現在デベロッパー会員55社,オブザーバー会員33社のあわせて88社が参加。日立製作所やNEC,富士通など5社がGDI-Sub対応の地図描画用グラフィックチップを開発しているほか,旭化成や日立など5社がはSAPI5対応の音声認識エンジンの開発に取り組んでいるという。

 ただ平野氏は,WCE for Automotiveにはまだ課題は多いと語る。同氏によれば,WCE for Automotiveに必要なのは「さらなるリアルタイム性の追求」だという。

 「例えば,システムの立ち上がり時間の短縮は大きな課題だ。現在の仕様だと使用可能な状態になるまで約4秒。これでは自動車メーカーは納得しない。起動を高速化するには,アプリケーションやドライバの起動順番をコントロールする必要がある。WCEではまだやっていないが,アプリケーションランチャーを導入すれば解決できる」(同氏)。

 またWCE for Automotiveは,自動車向けにWebサービスを提供する「Microsoft Car.NET」の実現に向けたものでもある。米MicrosoftでAutomotive Business Unitのディレクターを務めるGonzalo Bustillos氏は,WCE for Automotive搭載端末とCar.NETにより,「車内で協調Webサービスを実現できる」と説明する。

 「あるイベントが発生すると,同時に複数のサービスが立ち上がる。例えば,道路で自動車が故障したら,ディーラーやサービスエージェントに自動的に電話が繋がり,スケジュール張にも故障のことが反映される」(同氏)。

 なお,平野氏によれば,次期バージョンのWCE for Automotive 4.0ではテレマティクス管理センターと連携したサーバサービスが利用できるようになるという。

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[中村琢磨, ITmedia]

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