News 2001年11月12日 11:55 PM 更新

Bill Gates氏基調講演レポート――PC業界は「始まりの終り」を迎えたばかり

COMDEXの基調講演に立ったGates氏は,PC業界の成長が曲がり角を迎えたという見方を一蹴,今後も世界経済の牽引車になると強気だった。揺籃期を終えた同業界の今後の10年を同氏は占って見せたが,もちろんそこでの基盤となるのはTablet PCや.NETなどMicrosoftの各技術という話だった。

 この1年,IT系イベントの基調講演ではIT産業,特にPCの不景気をテーマにした話が行われることが多い。Intelも自社の開発者向けイベントで,不景気の今こそ投資を行わなければ次の波に乗り遅れることになる,と各社への奮起を促した。PC産業を支えるトップ企業は,いずれもPC産業が枯れ果てた木々のようになりつつあるとは,全く思っていない。もちろんそれは,Bill Gates氏も同じだ。

 Gates氏はここ数年のNasdaq指数低下,消費意欲の減退,PC市場の飽和など,あらゆる“悪い材料”を挙げながら,英国の政治家ウィンストン・チャーチル氏の言葉を引用し「これは“終わり”ではない。“終わりの始まり”でさえない。それはおそらく“始まりの終わり”なのだ(This is not the end. It is not even the beginning of the end. But it is, perhaps, the end of the beginning)」と話した。


開幕前日の基調講演に登場したBill Gates氏

 すべての産業は,立ち上がるとき,最初の10年は興奮の坩堝となるものだ。その産業が重要なものであれば特にそうだ。しかし,市場が立ち上がった時,あるいはあまりの興奮からその市場に過剰な期待が寄せられ,その興奮から冷めた直後には,その産業は“もう終わった分野”と見られることがある。

 Gates氏は,これまでの興奮に包まれた10年は終わったが,これから新しい10年が始まると話す。振り返ればこの10年はWindowsの歴史でもあった。初めて市場に認知されたWindows 3.0が登場したのが1990年,それからの10年の歴史の基礎となった。昨年にリリースされた最後のWindows 9xの中にも,Windows 3.xのプログラムコードは大量に残っていた。しかし今年,プリインストールPCのOSからWindows 3.xの16ビットコードは完全に消え失せた。

 Gates氏はデジタル技術の成長がまだ続いている証明として,6億7300万ものメールボックスが存在すること,2億人ものインスタントメッセージングのユーザーが世界中にいること,デジタルカメラは年1300万ユニットの大市場へと成長し,世界中で販売されるカメラの21%がデジタルカメラで占められていること,そしてWindowsXPが出荷開始の2週間で700万ライセンス販売されたことを挙げ,これからの10年を予想して見せた。

 Gates氏の予想は以下の通り。

 まずデジタル技術の進化・発展は,生活と密接に統合されるようになる。そして経済は再び,技術の進化によってドライブされるようになる。そしてナレッジワーカーの生産性は,これまでの10年と比較して2倍に向上する。企業コンピューティングの世界は,Webサービスによって真のB2B環境へと発展する。家庭では,エンターテイメントの革命が起こる。

 そして,それらに必要なのが,信頼できるシステムの基盤だと話し,Microsoftがこれからの10年を支えるために開発している製品群を紹介した。とは言え,急に新しい製品が出てくるわけではない。

 昨年のCOMDEX/Fallで発表したTablet PC,Webサービスの技術基盤となるMicrosoft .NET,スケーラビリティの高いサーバシステム,そして今週発売となるゲームコンソールのXbox――などがそれだ。Gates氏はそれぞれのデモを交えながら,新製品を紹介した。


Xboxを受け取り,試遊台に設置しようとするGates氏。かなりご機嫌な様子で「PCよりずっと簡単だね」

 特にGates氏が現在もっとも力を入れていると言われるTablet PCは,NEC,東芝,富士通,Compaq,ワコム,Acer,Samsung,FIC,VIA,Intel,Transmetaなどの企業が製品開発に関わっており,来年には製品が登場する予定。Tablet PC対応のOSは,Windows XP Tablet PC Editionとなる。基調講演では各社が開発中のTablet PCが紹介された。


ずらり並んだTablet PCの試作モデル


ノートPCの液晶パネルをひっくり返すとタブレット型になるAcer製のTabletPC

 Xboxに関しては,いまさら説明の必要はないだろう。製品版の完成に伴い,デジタルテレビ放送なみにコンテンツレベルによる再生の禁止/許可を与えるペアレンタルロック機能が初めて公開されたほか,いくつかのXboxタイトルを紹介。基調講演会場の聴衆から抽選で4人にできたてのXboxがプレゼントされた。


様々なレベルで利用できるコンテンツのレベルを設定可能なペアレンタルコントロール機能


会場ではできたてホヤホヤのXboxが4人にプレゼントされた

 そして最後にGates氏は,進化し続ける世界にはほかのどんなビジネスよりも,多くのビジネスチャンスがある,デジタル社会の発展が引き続き世界を引っ張っていく,と述べて,そのスピーチを締めくくった。

[本田雅一, ITmedia]

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