News 2001年11月12日 08:27 PM 更新

未来は子供たちの手に――故・大川功氏の理念を受け継ぐCSK

故・大川功CSK名誉会長と,MITメディアラボ共同創設者のNicholas Negroponte氏。2人が共有していた理念は,「世の中を動かしていくのは子供たちだ」ということ。CSKと財団法人大川情報通信基金はこの理念を具現化すべく,「大川センター」を設立した。

 今年4月,京都府・精華町の関西文化学術研究都市に,「大川センター」が開設された。これは故・大川功CSK名誉会長の「子供たちが情報化社会の創造を先導していく」という理念を受け継ぐため,CSKと財団法人大川情報通信基金が設立したものだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボや米Legoなどの協力を得て,小学生中〜高学年を対象に,ワークショップ「CAMP」(Children's Art Museum & Park)を行ってきた。


地域密着型の運営を目指す大川センター。地元小中学校とも連携を図る計画だという。また故・大川氏と深い親交のあったNicholas Negroponte氏の協力により,MITメディアラボにも「The Okawa Center for Future Children」が2004年開設される予定だ

 11月10日には,同センターでCAMPの成果報告会「FUTURE for CHILDREN」が開催された。基調講演を行ったMITメディアラボ共同創設者で,現在はチェアマンを務めるNicholas Negroponte氏は,「子供たちは遊ぶことによって学ぶ。これまでは教えられることが,唯一の学習方法であったが,インターネットの世界では,教えられることと自ら学習することの境目がなくなっている」と述べ,CAMPの役割は,次世代を担う子供たちに,発明やデザインといったクリエイティブな環境を提供していくことだと力説した。

 4月より開始されたCAMPワークショップは,インターネットで募集した小学生3年生〜6年生を対象に,想像力を豊かにするカリキュラムを提供してきた。例えば,MITメディアラボで開発された「クリケット」(電池で動く小さなコンピュータ)に,モーターやセンサーなどを組み合わせてオリジナルの作品を創ることで自分を表現することを学ばせたり,「レゴマインドストーム」ではボールを運ぶロボットのプログラムを開発したりなど,イマジネーションを働かせることに重きを置いている。


クリケットのプログラミング方法を体験する成果発表会の参加者


「CAMPの良さは,全てがデジタルなのではなく,アナログ的なものとデジタルを組み合わせて,クリエイティブな作品を創っていけるところ」とCSK特別顧問/MIT客員教授の中村伊知哉氏。写真は,クリケットに落花生とタワシを組み合わせたピッチングマシーン

 CAMPでは今後,粘土を使ってアニメーションを製作する「クレイメーション」ワークショップや,直感的に作曲が行えるおもちゃの楽器を使った「トイシンフォニー」ワークショップなどを展開していく予定だ。また中村氏は,「インターネットは“道路”ではなく,“広場”。閉ざされた場所でワークショップをやっていても意味が無い。今後,インターネット上で世界中の子供が参加できる環境を用意したい」と展望を語った。


成果発表会で行われたパネルディスカッションも白熱。大いに盛り上がりを見せた

 Negroponte氏は講演の最後に,米中枢同時テロ事件について触れ,「テロリズムに対してどうやって対応していけばいいのだろうか,子供たちに聞こう。子供には偏見がない。子供はソーシャルエンジニアなのだ」と締めくくった。

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▼ CAMP

[中村琢磨, ITmedia]

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