News 2001年11月16日 03:12 AM 更新

出荷遅延は大きな問題だが,顧客との関係は悪化していない――Transmeta副社長

新型Crusoe TM5800の出荷が来年にずれ込んだTransmeta。しかし,同社副社長のJim Chapman氏は,顧客との緊密な関係には変化がないと楽観的な見通しを示した。同社はラスベガスのホテルでプレスなどに向け1GHz動作のTM5800のデモを行っている。

 日本では新型Crusoe TM5800/5500の出荷遅延を理由に,搭載機の出荷日変更が相次いでアナウンスされた。当事者であるTransmetaの様子を,COMDEX/Fall 2001の期間中,プレスや顧客向けに開設したブリーフィングルームで伺ってみた。

 昨年は派手なパーティを催し,顧客(すなわちPCベンダーやサーバベンダー)やプレスに振る舞ったTransmeta。今年はベニシアンホテルのスイートでいくつかの製品を並べ,個別でインタビューに応えるという対応こそ同じものの,今ひとつ話題性に欠ける。その原因の中には,いつまで経っても登場しない新プロセッサと,最近の株価低下および小型PC市場の伸びが期待値ほどに達していないことなどが挙げられる。

 Transmeta上級副社長のJim Chapman氏は「我々は新しい0.13ミクロンプロセスの製造ラインを立ち上げるために努力を重ねてきた。量産出荷は11月を予定していたが,これが1月中旬に延びた。新製造ラインはCrusoe向けにカスタマイズしたプロセスを用いており,立ち上げ延期のリスクは常にある。年末の商戦期がいかに重要かは理解しているが,顧客(すなわちソニーと富士通)とは十分にコミュニケーションを取っており,大きな問題にはなっていない」と話す。

 とはいえ,年末商戦の時期を逃してしまう影響はメーカーにとって非常に大きい。新型Crusoe搭載機を待ちわびていた指名買いバイヤーは,1月まで待ってくれる可能性もあるが,どれにしようかと迷いつつ年末商戦華々しい量販店に出かける顧客は失うことになる。

 「繰り返すが,大きな問題だという認識はある。しかし顧客との関係は悪化していない。彼らは第2世代Crusoeに大きな期待を寄せており,今後のロードマップに関しても評価をもらっている」(Chapman氏)

 では今回の問題はなぜ発生したのだろうか? Transmetaは台湾TSMCをファウンダリとして利用している。TSMCは0.13ミクロンのロジックLSIをすでに製造しており,プロセッサの製造でも実績がある。出荷遅れの原因はどちらにあるのか,との問いにChapman氏は「我々とTSMCは共同でCrusoe向けにカスタマイズしたプロセスを開発しており,どちらの責任という問題ではない。これは協業であって,我々が単純に注文した品物を受け取れなかった,ということではない」と話す。

 また長く続く株価低迷や,小型PC市場の伸びが日本を含めてほとんど見られないことにも触れ「株価であれば,インテルも同じ時期に大きく下落している。時価総額は下がっているが,株価に依存した財務体質ではない。我々は製品が存在しない時期を何年も過ごし,長期の視野に立って会社を運営してきた。今後も運営を続けるだけのキャッシュを銀行に保有しており,株価下落がすなわち会社の存続に影響を与えることはない。小型PC市場に関しては,元々の立ち上がりが我々の想像を超えたもので,当初立てていた計画からすれば十分に大きな顧客を得ている」と話した。

 実際の顧客との関係はソニーおよび富士通関係者の取材を行ってみなければ何とも言えないが,彼らには末期のx86ベンダーが見せる悲壮感は見られない。会社のコアメンバーが変化していないことも,社内に混乱がないことを示している。ただ,今回の延期はTransmetaに対する見方をよりいっそう厳しくすることだろう。

 最後にブリーフィング会場でデモンストレーションされていた1GHz動作のTM5800を紹介しておこう。TM5800の1GHz版は来年の中頃までに登場する予定だが,実際にシリコンが動作しているデモンストレーションは行われていなかった。デモはCrusoeの評価ボードをデスクトップPCに組み込むことで行われ,クロック周波数と動作電圧,消費電力をそれぞれモニターするアナライザが取り付けられていた。


デモは1GHz Crusoeの評価ボードを搭載したPCで行われた

 アナライザの数値によると,クロック周波数は400MHz〜1GHzの間でリニアに変化し,400MHz時0.95ボルト,1GHz時は1.3ボルトで動作している。低負荷時の消費電力は0.62ワット,1GHz動作時の消費電力は6〜6.3ワット程度である。


1GHz Crusoeのアナライザ画面で消費電力をモニタした

 アナライザのモニタ画面はWindows 98だが,評価ボード上で動作しているのはWindows XPで,256MバイトのDDR SDRAMメモリを搭載している。この状態で単純な評価は行えないが,既存のCrusoeマシンと比べるとずっと高速に感じる。問題は1GHz版の出荷をいつ始めることができるかだ。

 Crusoeの本命は来年の後半に登場するとアナウンスされている256ビットコアの高性能モデル,およびTM5800並の性能でPCのシステムチップをひとつに統合したモデルと言われるが,現行モデルの出荷があまりに遅れるようだと,いくらPCベンダーとの関係を密にしていても,エンドユーザーの方が興味を失ってしまうかもしれない。

 来年の後半(実際の製品に搭載されるのは,さらにその半年後だろう)にきちんと製品を出荷できるのか。2003年の後半には,インテルも低消費電力プロセッサのBaniasを投入予定だけに大幅な遅れは許されない。

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[本田雅一, ITmedia]

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