News | 2001年11月28日 11:47 PM 更新 |
「Javaの導入によって,デジタル放送の番組制作は大きく変わるだろう」――。
パシフィコ横浜で開催されている「JavaOneコンファレンス」のセッションで,トマデジ・エグゼクティブプロデューサーの舟橋洋介氏は,デジタル放送へのJava導入のメリットを語った。
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デジタル放送へのJava導入のメリットを語る舟橋氏 |
昨年12月から始まったBSデジタル放送では,データ放送規格としてBML(Broadcast Markup Language)という新しいページ記述言語が採用された。このBMLによってメッセージ提示型データ放送や電話回線を利用した双方向サービスを可能にしている。
舟橋氏のいるトマデジは,TBSのBSデジタル放送チャンネル「BS-i」向けにデータ放送送出管理やデジタルコンテンツ制作などを行っている。つまり,BMLを日常的に使っている専門家というわけだ。
その舟橋氏が「BMLで作られる番組は,リアルタイム性に乏しく,スタティックなものが多い」と語るのだから,よほどのことなのだ。
同氏はBMLについて,スクリプトの再利用が簡単にできなかったり,マルチスレッド非対応,リソース運用に強い制限があるなど,プログラミング言語としては非常に使いづらいことを指摘。「プログラミングに労力がかかってしまうのがBMLの課題。結局は番組制作のコスト増につながる。これがJavaなら全て解決する」(舟橋氏)。
Javaならば,どんな番組が作れるのだろうか。
まず舟橋氏は「日焼けゲーム」というJavaを使った視聴者参加型のポイント獲得ゲームを紹介した。
このゲームでは,例えば視聴者がゲームの中で新聞を読むのに合わせて「CMを見ますか」と聞いてくる。このCMを見ると10ポイント入るようになっている。また,視聴者がゲーム内でラッキーな状況になった時を見計らってCMを入れる――なんてこともJavaなら可能になってくる。
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ゲームの中で新聞を読むのに合わせて「CMを見ますか」と聞いてくる |
また,「テレペット」というサービスでは,テレビ内にペットが住んでいて視聴者のよく見る番組に合わせて成長していく。例えば,視聴者がニュースをよく見る人ならスーツ姿のペットが現れる。
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ニュースをよく見る視聴者ならスーツ姿のペットが現れる |
さらに,このニュース好きな視聴者がたまに野球を見たときは,スーツを着たペットがバットを振り回すといったアニメーションを行う,といった具合だ。このような“シーマン”的サービスもJavaベースなら可能だ。
「受信機のブラウザ機能を放送局側で付加できる。そのことによって放送局ごとに事業性を見出すことができる。BMLではできない」(舟橋氏)。
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ニュース好きな視聴者がたまに野球を見たときのテレペット |
「ファミコンぐらいのレベルのゲームはJavaで作ることができる。コンテンツ制作も,日焼けゲーム程度なら1週間程度でできる」(舟橋氏)。
JavaOneの展示会場では,Javaベースで動作するデジタル放送受信機のプロトタイプが展示されていた。
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Javaベースで動作するデジタル放送受信機のプロトタイプ |
欧州などではJavaをベースにしたDVB-MHP(Digital Video Broad-casting-Multimedia Home Platform)がデジタル放送のデータ放送規格となっている。また,韓国の衛星デジタル放送事業者KDBでもDVB-MHP方式を採用するなど,欧州以外でもDVB-MHP採用の動きが広がっている。
メリットの大きい動画コンテンツでのJava導入について「日本でもARIB(電波産業会)でJavaの採用について比較検討している」(舟橋氏)という。ただ,メーカーや放送局がこのような新技術を受け入れるかが今後のポイントになる。先行するBSデジタル放送が振るわないため,コスト増にもつながりかねない新たなデータ放送技術の導入に,果たして踏み切るかどうか,疑問が残るからだ。
「JavaがBMLより優れているという議論とは別に,事業性の確保について受信機メーカーと放送局との調整が必要だろう」。舟橋氏はこう指摘していた。
関連リンク
JavaOne公式サイト
トマデジ
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