News 2001年12月26日 10:28 AM 更新

魔法のスニーカー“Ginger”に乗ってみた(2)

 ボストンから50マイル北にあるマンチェスターは,技術の町だ。Texas InstrumentsやソフトウェアメーカーのAutoDeskが事務所を構えている。しかしKamen氏は,ニューハンプシャーが好きなのは,税金が安いことと,自由思想が根付いていることが理由だと言う。なんといっても,「我に自由を,しからずんば死を」を標語とする州だ。

 「(ニューハンプシャーの)社会基盤は,若くて新しい。それが想像力を助けている」(Kamen氏)

 またマンチェスターはボストンに近く,東海岸で最も尊敬を集める大学が多く集まっている。そのためSegwayは,全米屈指のエンジニアを採用することができる。またKamen氏がマサチューセッツ工科大学(MIT)の客員教授であることもこれに一役買っている。彼がHTをプラグに差し込んで充電している間――1回の充電で平均11マイル,最大17マイル走行することが可能だ――私たちはR&Dラボの片隅で歓談した。

 Kamen氏は,HTに利用されている技術は,「IBOT」と呼ばれる同じようなマシンに使われていたものだと説明した。6台の車輪を持つIBOTは,体が不自由な人が動き回れるようにと,同氏が開発したものだ。しかしHTは,より広範囲な問題をターゲットにしている。都会の中でより効率的に動き回るためにはどうすべきかという問題に。

 Kamen氏は,「私たちは,長年の問題をすべて解決する技術を利用している」とし,人びとが高速かつ長距離を移動できる手段として,飛行機や電車,自動車などを挙げた。

 「しかし,最後に私たちが歩行者に戻ったとき,私たちは5000年前に手に入れた技術しか使えない。その技術とは,サンダルだ」。同氏は「Air Jordan」のメリットを無視して,こう話している。「この製品の目的は大きく2つある。非常に巧みな技術がそれだ。これは,社会の最も基本的な構成要素,つまり歩道の上に築き上げたものであり,動き回ることができる」

魔法のスニーカー

 Kamen氏によると,SegwayのHTはスニーカーと自転車の隙間の新しい分野を照準にしているという。

 「私たちは自転車と競合するつもりはない」。同氏は昔ながらの2輪自転車は,Segwayが行ける場所,つまり歩道を走れないと言う。HTは,幅が人間の肩幅より狭く,簡単に操作できる。しかもマラソン選手よりはスピードが遅く,最高でも時速12.5マイルだ。

 またKamen氏は,「HT同士が衝突しても,怪我しないように設計されている」としている。

 「私たちは,(HTが)スニーカーと競合すると考えている。これは魔法のスニーカーなのだ」(Kamen氏)

 私がそろそろ試乗させてもらおうとしたとき,SegwayのR&Dセンターの研究員たちが,いくつかのHTが汚れていることを心配して,研究施設で実際に利用され実験された証拠を消そうと隅々まできれいに磨いていた。もちろん,私は汚れを気にしない。実社会でHTが使われた場合にはかなり汚れて当然だろう。

 運転者が乗る位置は,たった20センチ程度の高さだが,最初の一歩を踏み出すには,非常に高く感じられ,躊躇してしまった。ようやくHTに乗ると,まるで平衡点を探すかのように多少前後に揺れた。実際,HTは平衡点を探していたのだ。エンジニアたちは,最初はびっくりするだろうが運転者もマシンもお互いに慣れてくるはずだと説明した。HTと運転者がバランスを取り戻したら――すぐにそうなるのだが――さあ,走らせてみる時間だ。

 Kamen氏は,明らかに初心者にこのデバイスを紹介することを喜んでいるようで,ハンドルバーの片手でつかんで乗り込めば簡単だと教えてくれた。私は一旦降りて,右手でバーをつかんで,右足から乗り込み,次に左足を乗せた。今回は私が左足をまだ乗せる前から,急にマシンが後ろにバックしてしまった。だが,マシンは正常に機能していた。そう,バランスを崩したのは私の方だった。

 さあ,行ってみよう! マシンに立つことに慣れたら――2,3分も経たずに快適に思えてくるはずだ――ゆっくり重心を前に移すだけで,前に進み,元の姿勢に戻せば速度が落ちて止まる。マシンは,わずかな動きを探知する。私はヘルメットを被って,R&Dセンターの壁と壁の間で何周か走ってみた。一方の壁にはSegwayのエンジニアが,もう一方には会社の広報担当者が寄りかかっていた。コーナーを回る時に,私は狭い場所でターンし,逆の方向を向いた。(後ろに傾けてバックさせることもできるが,180度回転して前に進んだほうがずっと簡単だ)。

前のページ1 2 3次のページ