News 2002年1月23日 10:06 PM 更新

ウワサの“パワーアシストスーツ”を着ちゃいました(2)

 膝,腰〜背中,それに肘の関節の後に「布の中に入った風船」がついている。この風船に空気を送り込むと,それが膨らんで関節を伸ばすパワーになるというわけ。上の写真ではひざの風船の空気が抜けているのだけど,この状態でも体重は支えている。彼女は「空気椅子」ポーズを取っているわけだけど,風船で支えられているので,ちっともつらくないというわけ。

 身体の左右側面にはアルミの構造材がある。介護者を抱き上げたときの2人分の体重は,これが支えてくれる。腰や足首に負担をかけることはない。

 紹介が遅れた。スーツを着ているのは長島由紀子さん。彼女は応用化学科の学生であり山本研究室の学生ではない。身長があっているという理由で手伝いにかりだされているのだ*4

 スーツ自体の重さは18キロなのだけど,でも,その重さはスーツ自身が支えているから,長島さんは特に重いとは感じないそうだ。ただ,スーツを脱いだときに,スキー靴を脱いだときと同じ開放感が,全身で味わえるんだって。

 さて,このスーツを着て,ベッドに寝ている人を抱き上げて車椅子に乗せるというのはこういう感じになる。抱えあげられているのは竹澤千秋さん。

 軽々運んでいる (実際に軽く感じるそうだ) 。じゃぁ,こんどは車椅子からベッドへかなと思ったら,それはまだできないのだそうだ。膝の関節をある程度以上曲げることができないために,低い姿勢がとれない。同じ理由で床に敷かれた布団に寝ている人を持ち上げることもできない。でも,これについては,次のバージョンに向けて開発中だそうだ。

 さて,これを見ていたヘイワードYUKOはがまんができなくなった。自分も抱きかかえてもらいたいらしい。それはそうだ,わたしだって持ち上げられたい。でもわたしは体重制限に引っかかった (いまのところ68キロまでしか持ち上げた実績がないそうだ) 。残念。

 「きもちいい!」んだって。ほんとに肌にしか触れないそうだ。ただ,被介護者が首に回した手が,ちょっとメカにあたる感じがあるって。また,車椅子におろされるときに,ちょっとどすんと落とされる感じがあるそうだ。スーツが手首をサポートしていないから,最後の最後に落っことしちゃう形になっちゃう。でも,これは姿勢を低くできるようになれば,それで解決するはずだ。

なぜ「介護用パワーアシストスーツ」か

 山本先生が「介護用パワーアシストスーツ」の研究をはじめたのは12年前。人間を助けるものを考えるとき,いきなりロボットではなく,まず人間そのものを補助するものをと考えたそうだ。また,研究室にくる学生へのテーマとしても,自分たちで体験できるものでちょうどいいということもあるらしい*5


*4 しかもこの日は,前の日ほとんど寝ていなかったそうだ。「 (介護用パワーアシストスーツ を着れば) 寝不足でもこれだけの力が出せるんですよ」ですって。ありがとうございます。

*5 福祉システム工学科というのは,できて2年 (この春3年目) の新しい学科なのだそうだ。それまでは機械工学科でこの研究は行われていた。石井さんも,機械工学科から山本研究室に入った。

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