News | 2002年2月8日 11:14 PM 更新 |
自動車向けマーケット――オートモーティブ市場に半導体業界が熱い視線を送っている。
オートモーティブ市場向けの半導体に力を入れているフィリップス セミコンダクターズは2月8日,オートモーティブ分野の市場動向や最新の技術ソリューションをマスコミに紹介する「プレス・テクノロジー・フォーラム」を開催した。
ゲストスピーカーとして登場したGartner DataquestのMike Williams氏は,オートモーティブ市場動向の中で「エレクトロニクス業界,特に半導体メーカーはオートモーティブ市場に大きな関心をよせている」と語った。
半導体業界が注目するオートモーティブ市場。その背景には,単なる移動手段であった自動車が,今,“路上を走る最新エレクトロニクス機器”へと大きく進化し始めているということがある。
例えば,急ブレーキ時のタイヤロックを防ぐ「ABS」や,事故などの衝突時にショックを吸収する「エアバッグ」など,近年自動車の安全装置として登場したものには,数多くのエレクトロニクス技術が使われている。また,リモコン操作でドアのロック/アンロックが行えるキーレスエントリーや,イモビライザーと呼ばれる盗難防止装置,従来のキャブレターに代わる電子燃料噴射装置,急速に普及が進むカーナビゲーションシステムなど,自動車に使われるエレクトロニクス技術は枚挙にいとまがない。
このように,本来,メカニカルな制御で動いていたものが,近年は機械制御の部分が電子コントロールへと急速に変化しているのだ。さらに,安全性/利便性を向上させるための車載用電子システム「テレマティクス」分野は,今後大きな市場に発展するものとして注目されている。
「半導体は一般経済に左右されやすい業界。実際に経済不況が叫ばれている現在は,半導体業界は過去最悪の状況となっている。しかし,同じ半導体でもオートモーティブ市場は,一般経済に左右されずに,独自の安定した成長をみせている」(Mike氏)。
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黄色のラインが半導体市場全体の成長率。青のラインのオートモーティブ半導体市場は独自の安定成長をみせている |
さらにMike氏は,オートモーティブ市場の将来性について「車載されるエレクトロニクス機器のコストは,今後も増加する傾向にある」と指摘する。同氏によると,現在車両価格の約12%を占めている車載エレクトロニクス機器のコストが,2010年には30%にまで拡大するというのだ。「法規制の後押しもあってABSやエアバックなど安全装備のニーズが高まっている。また,GPSを使った盗難追跡装置やイモビライザを搭載した自動車は保険会社が保険料を下げるといった動きも出ている。コスト削減という視点からも,これらのエレクトロニクス機器を搭載していくという傾向は,今後も続くだろう」(Mike氏)。
また,技術の進歩によって自動車の性能が均一化するに従い,競合との差別化の材料としてエレクトロニクス機器を取り付けるという傾向が高まっている点も見逃せない。
自動車販売台数の予測をみても,米国/欧州/日本/アジア諸国ともに毎年数十万台ずつ増加する右上がりの安定した需要が見込まれている。
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右上がりの安定した需要が見込まれる自動車販売 |
経済の好・不況に左右されるマーケットに一喜一憂してきた半導体業界が,これまでも,そして今後も安定した成長が期待できるオートモーティブ市場に熱いラブコールを送る理由がここにあるのだ。
半導体業界がオートモーティブ分野に注目する理由がもう1つある。なかなか普及が進まない最新のワイヤレス技術――「Bluetooth」が一番活躍しそうなのが,このオートモーティブ分野なのだ。
日本フィリップス半導体事業部のDrue Freeman氏は「カーメーカーの多くが,Bluetoothに関心を示している」と語る。
「例えば,Bluetoothを使ったワイヤレスヘッドセットを使えば,ケーブルなしで携帯電話で話ができたり,音声認識でカーナビとやりとりも可能になる。また,Bluetooth対応のPDAやPCを介して,テレマティクスモジュールとの連携もできる。車の整備の際にも,ケーブルをつながずに各種検査が行える。さまざまな料金支払いのシステムにも応用可能だ」(Drue氏)。
今回のプレス・テクノロジー・フォーラムでは,自動車のエレクトロニクス化が進むことによって近い将来実現するカーライフの一例が紹介された。
「数千曲もの音楽データが自動車の中に搭載される。ドアを開けて車に乗り込んだら,音楽データの中からユーザーにあわせた音楽が自動的に流れるようになる。また,膨大な曲データの中から好みの1曲を選び出したい時は,聞きたい曲のフレーズの一部分を口ずさむだけで,音声認識によって曲データを瞬時に探し出してくれる。これは夢物語ではなく,フィリップスの研究機関では,すでに実験レベルですでに成功している技術だ」(同氏)。
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