News 2002年3月22日 11:59 PM 更新

AppleのiPodをWindowsで〜Mediafour社XPlay βプレビュー

開催中のMacworld Expo Tokyoで,iPodをWindowsマシンでも利用できるようにするソフト「XPlay」のβ版が展示されていた。早速,その出来栄えを試してみたが,完成度の高さはなかなかのようだ。

3月22日付け記事中におけるMediafour社のソフトの正式名称は「XPlay」です。関係者の皆様にお詫びするとともに訂正いたします(3月26日)

 iPodは,アップル・コンピュータが出したMP3プレイヤーだ。記憶デバイスに1.8インチのハードディスクを使用し,5GBあるいは10GBという大容量を誇る(10GBモデルは21日のMacworld Expo TOKYOの基調講演で発表された)。10GBなら6日間音楽を流しっぱなしにできるだけのMP3データを入れておけることになる(160kbpsで計算)。インターフェースには高速なIEEE1394(アップルの呼び方ではFireWire)を使用,オーディオCDをリッピングしてMP3にしたというものを転送するなら,十数秒ですんでしまう。

 電源はリチウムポリマーバッテリー。連続使用でも10時間以上再生していられる(これはカタログデータではなくて,わたしの実測の結果)。充電の電源もFireWireケーブルから供給されるものを使うから,パソコンと接続してれば充電できてしまうことになる。

 いや,最大の魅力は,デザインかもしれない。極力ボタン類を減らした,いかにもアップルらしいシンプルなデザインだ。真っ白の前面とジッポのライターのような鏡面仕上げの背面を見るだけでも欲しくなる人もいる。

 でも,iPodには大きな問題がある。アップル純正品だけあって,Macintoshがないと使えないのだ。いまのMacintoshにはやはり純正のiTunesというMP3ソフトがあるのだけど,iPodはこれと組み合わせることを前提としている。iTunesにはMacintosh版しかない以上,iPodをつかうにはMacintoshが必要となるのだ。iPodが欲しくなったWindowsユーザはどうすればいいのだ。

 Mediafour社のXPlayはこの要求に応えるものだ。つまり,iPodに入っている曲の管理がWindows上でできるようになるのである。まだβ版の段階ではあるものの,Macworld Expo TOKYOで展示デモが行われていたので,それを見てきた。

 XPlayがインストールされたPCとiPodとをIEEE1394ケーブルでつなぐ。ここで,PC側のコネクタが6ピンの場合にはiPodのモードが自動的に「プレイヤー」から「ハードディスク」に切り替わるのだけど,4ピンの場合には,iPod側の操作で強制FireWireモードにする必要がある。

 この状態で,MediaPlayerを起動するとiPodの中身を調べてその内容を表示する。「デバイスでコピー」を使えば,PCのハードディスクにあるMP3ファイルをXPlayにコピーすることができるわけだ。ただし,iPodからPCへのコピーはできない。不正コピーを防ぐための措置で,これは純正iTunesでも取られているものだ。

 また,ExplorerからもiPodにアクセスできて,中はこんなふうに見える。


 曲のファイルにたどりついたら,ダブルクリックすればMedia Playerが起動して,iPod内のファイルを直接再生できる。


 これは,かなり大変な処理をしているのだ。

 まず,フォーマットの違いを乗り越えないといけない。iPodのハードディスクのフォーマットはMac OSで使われているHFS+というものだ。これは普通のWindowsシステムではアクセスできないので,それをなんとかしなければいけない。かなりたいへんな作業なのだけど,Mediafour社には,すでにMacDrive5というMacintoshのディスクをWindowsで見るためのツールがある。彼らには,お手のものだったのだ。

 iPod内でのMP3データは複数の隠しディレクトリにランダムに格納されている(違法コピーをやりにくくするためだろう)。それを統括するデータベースファイルはあるのだけど,その形式は公開されていない。これを解析して,曲名とアーティスト名で整理しないといけない。Explrerで見たときに,上図のようにアーティストで分類されているというのは,整理をした結果を使って仮想的に見せているものなのだ。

 最後に,文字コードの問題がある。WindowsとMacintoshとでは使える文字に微妙な差があるのだ。これをできる限りコンバートしないといけない。地味なことだけどこれはかなり大変(速度をスポイルする問題でもある)。

 みせてもらったXPlayはまだ英語版だ。だからデモ用のiPodに入っている曲は全部アルファベットになっていた。そこで,わたしのiPodをつないでもらって,どうなるかみせてもらった。



 日本語の曲名もちゃんと表示されている。これは実はしかけがあって,このマシンには前述のMacDrive 5日本語版もインストールされているのだ。日本語文字の処理はこのドライバがやっているものと思われる。でも,そうだということはXPlayのローカライズも全く同じ方法でできそうであり,やっぱり日本語処理も問題ないだろうという予想ができる。ローカライズにかかる時間も少なそうだ。

 iPodが発表されたのが昨年の10月。Mediafour社は,その後すぐにXPlayの開発を宣言。すぐにプレビュー版をだすと予告も出した。ところが,最初のプレビューがでるまでに予想以上に時間がかかった。しかも最初のものはやっとファイルが見られますという程度のもの。おやおやと思っていたのだけど,その後は順調に開発が進んだようだ。どうも,いちばん最初のところに一番大きな山があったらしい。それにしても,正直に言って,もうこのレベルにまで到達しているというのはちょっと予想外だった。おみそれしましたっていうところ。

 現バージョンは,iPod内の曲数が多くなったときに速度の点で問題がある。わたしのiPodも900曲くらい入っているけど,XPlayがそのリストをとり出すのに1分半くらいかかっていた。でも,これは既に修正リストの中に入っているそうなので,製品版までには解決されるだろう。

 ひとつ言い忘れていた。iPodはMP3プレイヤーであると同時に,IEEE1394の外づけハードディスクとしても扱える。XPlayはもちろんこれにも対応している。だから,MacintoshとWindowsとの間のデータ交換をiPod経由で行なうということもできるわけだ。

 iPodが欲しかったWindowsユーザーには必須だし,Windowsも使っているiPodユーザにもおすすめのソフトになりそう。現在,http://www.mediafour.com/xplay/で,プレビュー版の情報が得られる。メールアドレスを登録すればプレビュー版のソフト(現在プレビュー5)の入手先もわかる。

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