News 2002年3月27日 05:35 PM 更新

松下,透明スピーカー「サウンドウィンドウ」を発表

松下電器産業が,透明パネルを空気圧で振動させて音を鳴らす“透明なスピーカー”を開発した。液晶画面から音が出るPDAや携帯電話,映像と音声の一体感が味わえる液晶ディスプレイ,音が鳴る照明器具などさまざまな製品への応用が期待できるという。

 松下電器産業は3月27日,透明パネルを空気圧で振動させて音を鳴らす透明スピーカー「サウンドウィンドウ」を,松下電子部品と共同で開発したと発表した。

 スピーカー振動板の透明化によって,液晶ディスプレイの表示部前面から音を鳴らすことができたり,部屋の壁や車の窓ガラスといった構造物と組み合わせることも可能になる。また,透明パネルに柔軟な素材を使用しており,パネルに触れても音が変わらないため,タッチパネルにも応用可能だ。


透明スピーカ「サウンドウィンドウ」の応用例

 従来のスピーカーは,振動板に紙やウレタンを使ったコーン型の動電形スピーカーが主流となっている。これは,コイルと磁気回路に音信号の電流を流すことで発生した“磁界の力”でコーンを振動させ,音を出す仕組みだ。そのため,たとえコーンの素材を透明にできたとしても,その後ろにある磁気回路やコイルなどまでを透明にすることはできない。

 松下が開発したサウンドウィンドウは,音の“空気圧”によって間接的に振動板を駆動させ,ドライバ(電気信号で振動を発生する駆動用ユニット)が自由に配置できる「エアロドライブ技術」と,小型ドライバで大面積パネルを駆動できる「音響テコ技術」という2つの最新技術によって,透明なパネルを振動板にしたスピーカーを作り出している。「振動板の駆動に空気圧を利用することによって,パネルを直接的に駆動するのに比べて消費電力を25%削減できる」(同社)。


音の空気圧によって間接的に振動板を駆動させる「エアロドライブ技術」


小型ドライバで大面積パネルを駆動できる「音響テコ技術」

 スピーカーを透明にすることで,どのような製品が生まれるのだろうか。

 「液晶TVやPCの液晶ディスプレイに用いると,表示画面から音が出てくるために映像と音声の一体感が味わえる。また,PDAや携帯電話といった小型情報機器ではスピーカーのスペースが省けるため,より小型化が可能となる。そのほか,車のフロントウィンドウから音が出てきたり,音が鳴る照明器具などさまざまな製品への応用が期待できる」(同社)。


透明スピーカーによって,PDAや携帯電話の液晶画面から音を出すことができる

 ただ,空気圧を利用して駆動するシステムの欠点として,空気層の幅が広いと高域が出にくいということがある。同社でも「現時点の100μメートルという空気層の幅で,10KHzまでの高域出力が可能。タッチパネルや携帯電話などの用途にはこのスペックで十分だが,ピュアオーディオ向けにはもう少し高音域を改善しなければならない。さらに今後の課題としては,ドライバの小型・高性能化も必要」と話す。

 この新技術を使った製品としては,小型タッチパネル向けの透明パネルモジュールが年内に松下電子部品から発売される。このモジュールを組み込んだPDAが,サウンドウインドウ製品第一弾となる予定だ。同社の液晶ディスプレイや携帯電話などに組み込んだ製品展開については「検討中だが,時期は今のところ未定」(同社)と語っている。

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[西坂真人,ITmedia]

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