News 2002年4月22日 11:16 PM 更新

プロバイダー責任法で何が変わる? 総務省大村氏に聞く

5月中に施行される予定の「プロバイダー責任法」。施行されると,プロバイダーにはどんな影響があるのだろうか? 総務省の大村氏は「何かが劇的にかわるわけではない」と説明する。

 2001年11月22日に成立した「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」。通称,「プロバイダー責任法」と呼ばれるこの法律は,公布後6カ月以内に施行されることになっており,今年5月中には施行される見込みである(PDF形式の条文はこちら)。

 プロバイダー責任法は,インターネット上に公開されている情報によりプライバシーや著作権の侵害があった場合に,プロバイダーが負う損害賠償の「責任範囲を規定」したものである。では,この法律が実際に導入されると何が変わるのだろうか? 施行が間近に迫っているだけに,もう一度確認してみようと思う。そこで,総務省総合通信基盤局の大村真一氏(電気通信利用環境整備室課長補佐)に話を聞いた。(聞き手:中村琢磨)

ZDNet:これまでも,テレサ協(社団法人テレコムサービス協会)が定めたガイドラインに沿って,大手ISPなどはプライバシー・著作権侵害に対処してきましたが,プロバイダー責任法の導入によって何が変わるのですか?

大村:この法律によって,劇的に何かが変わるということはありません。これまでプロバイダーが自主的にプライバシーや著作権の侵害に対応してきたことは知っています。プロバイダー責任法の狙いは,自主的対応を促すことにあります。もちろん,これまで自主的な対応をとってこなかったプロバイダーは,プロバイダー責任法の施行によって態度を改めなければならないでしょう。

ZDNet:個人で掲示板を開設している人には,何か影響はありますか?

大村:基本的に,個人の掲示板はプロバイダーとは呼べないです。というのも,プロバイダー責任法は,「第3者としてのプロバイダー」を対象としたもので,自ら掲示板を運営し,書き込みもしているような場合は,プロバイダーではなく,「発信者」ということになります。

 繰り返しますが,プロバイダー責任法はプロバイダーの免責事項を定めたものであり,何かを取り締まるための法律ではありません。プロバイダー責任法という呼称が,プロバイダーが負うべき責任を規定しているような誤解を招いているのかもしれませんが,「プロバイダー責任“制限”法」というほうが正確な表現です。

ZDNet:プロバイダー責任法の免責ルールに従えば,プロバイダーは法的責任は問われないということですか?

大村:この法律では,例えば,プロバイダーが権利侵害を知らなかった場合や,違法情報の存在を知っていても権利侵害だと認めるに足りる相当の理由がなければ,プロバイダーが何らかのアクションを起こさなくても責任は問われないことになっています。ただし,情報を削除しなかったことについて,権利を侵害されたと主張する人が納得しなければ,最終的には裁判所の判断に任せることになります。

ZDNet:“相当な理由”とは?

大村:それはプロバイダーごとの判断に依ると思います。テレサ協では運用に関するガイドラインを準備しており,その中で独自の判断基準を設けていますが,「名誉毀損・プライバシー侵害の判断基準は社会環境の変化によって変化するものであることを考慮する必要がある。ガイドライン策定後も不断の見直しが必要」としています。

ZDNet:条文では,プロバイダーを具体的に挙げていませんが,ホスティングサービスや掲示板のほかにどのようなものが含まれるのでしょうか? 例えば,ファイル交換サービスはどうでしょう?

大村:具体的な名称は言えません。条文では,「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し,その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう」としてあります。ファイル交換サービスの事業者は,場合にもよりますが,サービスの運営に積極的に関与しているのであれば,プロバイダーではなく発信者ということになります。そうだとすれば,プロバイダー責任法による免責は認められないでしょう。

ZDNet:一部では,プロバイダー責任法は「2ちゃんねる潰し法」という意見もあるようですが。

大村:プロバイダー責任法と2ちゃんねるの関係についてはよく聞かれます(笑)。当然ですが,プロバイダー責任法がどこか特定のプロバイダーを対象にしているということはありません。それに,プロバイダー責任法は免責事項を定めたものなのですから,何かを潰すことになるとは考えにくいです。

 また,プロバイダー責任法が施行されると,プロバイダーはログデータや個人情報を公開しなければならないと考えている人もいるようですが,これも間違いです。確かに,プロバイダー責任法では「発信者情報開示」として,権利侵害が明らかな場合や,損害賠償請求の行使のために開示を受ける正当な理由がある場合は,発信者の個人情報を開示することになりますが,仮に開示に応じなくても,故意または重過失がなければ免責されることになっています。

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▼ 総務省

[中村琢磨,ITmedia]

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