News 2002年5月10日 09:31 PM 更新

10万×10万ピクセルの画像も瞬時に拡大・縮小できます――NGCが「iBrowser」発表

IT関連商社のエヌジーシーが、マルチメディアコンテンツブラウザ「iBrowser」を発表した。ファイルサイズが大きい高精細・大画面の画像を、普通の家庭用PCなどで瞬時に見ることができ、さらに画面のスクロールや拡大・縮小といった処理が、画像のクオリティを落とさず高速に表示できるという

 IT関連商社のエヌジーシーは5月10日、マルチメディアコンテンツブラウザ「iBrowser」を発表した。画像の容量に依存しない表示エンジンによって、ファイルサイズが大きい高精細・大画面の画像を、普通の家庭用PCなどで瞬時に見ることができ、さらに画面のスクロールや拡大・縮小といった処理が、画像のクオリティを落とさず高速に表示できるという。

 iBrowserは、韓国のInnotiveが開発した高速画像ブラウザ。エヌジーシーが今年3月にiBrowserの総代理店契約を締結し、このほど国内で本格的に販売することとなった。


画面を触るだけで瞬時に画像を拡大・縮小したり、スムーズにスクロールさせることができる

 発表会場では、タッチパネルディスプレイにiBrowserで新聞の全紙面を映し出し、画面を触るだけで瞬時に画像を拡大・縮小したり、スムーズにスクロールさせるといったデモンストレーションが行われた。

 「今回のデモでiBrowserを動かしているのは、デルの個人向けノートPC。WSのような高いスペックのマシンでなくても、普通のPC上で超高解像度の大きな画像データを高速に表示できるのがiBrowserの特徴。10万×10万(ピクセル)といった巨大な画像も、リアルタイムに近いスピードで拡大・縮小できる」(同社の太田純一取締役)。

 iBrowserは、ピクセル・オン・デマンド技術に基づいた表示処理で、必要な時に必要なデータだけを効率よくアクセスすることによって、大きなファイルサイズでもハードウェアに依存することなく高速な表示が行える。  例えば、3メガピクセルのデジカメで撮影した画像は、2048×1536ピクセルでファイルサイズが1.5Mバイト前後もある“重いファイル”となる。この画像をホームページに掲載して、Internet ExplorerのようなWebブラウザで閲覧する場合、画像データ全体を1つのファイルとしてダウンロードし、メモリに取り込んでいくため、瞬時に表示するということは難しくなる。雑誌のスキャン画像や、フィルムスキャナーで取り込んだ銀塩フィルムのデータなどは、さらにファイルサイズが大きくなるため、ますます画像は表示しづらくなってしまう。

 しかし閲覧する側からすると、いくら巨大な画像ファイルでも、例えばXGAのモニタを使っていれば、1024×768ピクセルしか見ることができない。一度に表示できるのはモニタ解像度の上限までで、残りの部分はスクロールをして見ることになるからだ。

 そこでiBrowserでは、大きな画像ファイルをタイル状に分割する「イメージタイル構造」を採用。表示しやすい小さな画像サイズに切り分け、表示の際に必要な部分だけにアクセスすることによって、モニタ上ではあたかも瞬時に表示されたかのように見せている。前述の10万×10万ピクセルという巨大な画像も、1枚が1000×1000ピクセルのイメージタイルを縦横に100枚ずつ敷き詰めた集合体と考えるわけだ。


ハイパーピラミッドとイメージタイル構造

 また、スムーズな拡大や縮小には、元画像から解像度の異なる複数の画像レイヤーを生成して画像を再構成する「ハイパーピラミッド」という技法を採用。さまざまな大きさの画像を用意し、瞬時になおかつスムーズに切り替えることで擬似的にズーミングを行う。「さらに、各画像レイヤーには独自の圧縮技術を用いてデータの読み込み時間を短縮し、表示スピードを向上させている」(同社)。


さまざまな大きさの画像を用意し、瞬時に切り替えることで擬似的にズーミングを行う

 iBrowserは静止画像以外にも、Windows Media Playerに対応したフォーマットの動画・オーディオデータを扱うことができる。また、大量の静止画像を高速に表示することでアニメーションのような表現も行える。「動画やアニメーションも、静止画と同様の高速表示技術を取り入れているため、1ページ内に100タイトルの動画を同時に再生することも可能」(同社)。

 iBrowserの応用例としては、まず紙の媒体の置き換えが考えられる。「紙の媒体は一覧性が高く、凝ったページデザインも多い。iBrowserは、印刷物をそのままスキャナーなどでPCに取り込むため、紙のページをめくる感覚で直感的に見たいものを選べる」(同社)。

 国内では、日本アムウェイが商品カタログのCDにiBrowserを使っているほか、フジテレビが朝の番組「めざましテレビ」の新聞紹介のコーナーなどで採用しているという。

 「韓国ではTV局での採用のほかに、博物館やテーマパークなどにiBrowserを搭載した情報端末が数十台納入されている。また、衛星写真などギガバイト級の高精細画像にも瞬時にアクセスできるので、政府の気象関係などにも採用され始めている。日本では、CAD、医療分野への応用、新聞や雑誌などの電子出版への展開も考えている」(同社)。

 同社では、iBrowserをブラウジングエンジンとしてライセンス販売するほか、ユーザーの用途に合わせてカスタマイズするなどソフト開発も行う。また、iBrowserを使ったコンテンツを制作する代理店も募集する。iBrowserの価格は1台目(1ライセンス)が140万円、2台目以降は10万円/台となる。iBrowserにオーサリングソフト、ハイパーリンク作成ツールなどをセットにした価格は280万円。

関連リンク
▼ エヌジーシー
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[西坂真人, ITmedia]

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