News 2002年5月31日 12:08 PM 更新

インタビュー
新CEOが語る「Transmetaの現状と展望」(2/2)


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Perry:もちろん、256ビットCrusoeのCMSにも組み込まれるでしょうが、現行のTM5800もこれから長い間、様々な市場に向けて販売を続けていく予定です。したがって、新機能はTM5800のCMSに対しても追加されます。

ZDNet:Crusoeは元々、小型ノートPC向けのTM5000系と組み込み向けのTM3000系がありましたが、現在立ち上がっているのはノートPC向けだけです。他に有望と見ている市場はありませんか?

Perry:私は家電向けの組み込み半導体市場でMIPS、ARMなど多くのプロセッサを使った製品と関わってきました。しかし、そこで痛感したのはインターネットに接続される機器では、プラグインなどソフトウェア資産の関係でx86互換のメリットが非常に大きいということです。

 また、家電向けの組み込みプロセッサではフォームファクタが重要になります。熱の問題は一番重要な課題なんです。

 x86プロセッサがインターネットに接続する家電製品で重要なことがわかりつつ、それでもなおこれまで使えなかったのは、家電製品としてパッケージできるだけの省電力性がx86プロセッサに無かったからです。しかし、Crusoeならそれが可能になります。

 例えば、非常に薄いデジタルアンプ付きのインターネットアクセスAV家電をファンレス設計で作り、x86資産を活用して多数の機能を持たせることができます。また、トランジスタが少ないことから、他のx86プロセッサよりコスト競争力も高い。x86互換の価値が高く認められる分野では、他のどんな製品にも負けないのがTransmetaのCrusoeです。

ZDNet:とはいえ、これまでCE市場でインターネットアクセスデバイスは受け入れらて来ませんでした。なぜ、これからは受け入れられるのでしょう?

Perry:それは製品が証明しています。バイオUがそれです。これはPCの形をした家電ですよね。そもそも、ホットスポットは2年前は存在していませんでした。コストも同じで、ここ数年でデバイスの単価は大幅に下がりました。Crusoe自身も例外ではありません。こうして低価格化が進めば、ある時点でx86ベースの家電製品も受け入れられるようになるでしょう。

 また、ビジネスのインフラも2年前とは様変わりしています。例えば東芝の新しいタブレット型端末にはMidori LinuxとCrusoeが組み込まれています。ただのタブレット型端末というだけならば、とても売れる製品ではないかもしれません。しかし、東芝は全社的にBluetoothを推進し、様々な家電品にBluetoothを組み込み、Bluetoothを経由してタブレット型端末から制御可能にしようとしています。

 他の製品と繋がるネットワークが新たに構築されてきていることで、そのフロントエンドとなるデバイスの価値が高まっていると言えるでしょう。本格的に盛り上がってくるのはまだまだ先のことでしょうが、垂直市場的に広がってきています。

ZDNet:小型・軽量のPCベースの機器が受け入れられるためには、市場環境の変化が不可欠でしょうが、ホットスポットや3G携帯電話の動向はどのように見ていますか?

Perry:今まさに広まりつつあるホットスポットは、間違いなく普及・成功すると確信しています。こんな便利なものはありませんよ。先日も「成田エクスプレス」の車内で、無線LANのアクセスサービスが5月27日から開催されたというチラシを見て利用してきました。米国ではスターバックスや空港でも使っています。

 すると周りに人が集まってきて、一時的にロックスターみたいな気分が味わえます。無線LANもそうですが、小さいノートPCにみんな強い興味を惹かれるようです。様々な場所でネットワークに接続できるようになったこと。これは大きな市場環境の変化です。この変化によって、多くの人が出先でワイヤレスネットワークにアクセスしたいと思うようになります。

 そして持ち歩いて使うようになると、バッテリ持続時間や重量、サイズなどに対して興味を持つようになるわけです。そして、それこそ私たちが最大の価値を提供できる市場なのです。

 3G携帯電話に関しては、無線LANとの組み合わせでの利用が想定できますね。ホットスポットはどこにでもあるわけではありませんから、それをフォローするものとして3G携帯電話が使われるかも知れません。しかし、3G携帯電話だけでは顧客の満足を満たすのは難しいと思っています。速度が思ったほど速くなかったからです。

Ditzel:仮に私が日本で暮らしていたなら、必要な時にホットスポットがあれば十分だと思うでしょうね。それ以外の場所では、遅くてもいいので使いやすくリーズナブルなインフラを利用するでしょう。

 ホットスポットの話に戻りますが、日本では通信キャリアが積極的にこの事業に取り組んでいますが、米国では草の根で無線LANのインフラを整えようという動きがあります。サンフランシスコの街中では様々な有志が、自分たちの使っているアクセスポイントを解放しているのです。1ブロックも歩いてみると、あちこちに無線LANのアクセスポイントを見つけることができますよ。

Perry:こうしたユビキタスなネットワークの利用が拡がっていくことは、我が社にとって大きな追い風になると考えています。

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[本田雅一, ITmedia]

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