News 2002年6月6日 09:01 PM 更新

“変身”するパソコン――バイオノートNVのコダワリ

ソニーが5月25日に発売した「バイオノートNV」は、ユニットを交換できるベイシステム「エンターテインメントベイ」が特徴となっている。この新システムについて、開発経緯や商品化にあたってのこだわり、今後の展開などを開発担当者に聞いた

 ソニーが5月25日に発売した「バイオノートNV」は、ユニットを交換できるベイシステム「エンターテインメントベイ」が特徴。同社ならではの周辺機器ユニットが用意されたこの新システムについて、開発経緯や商品化にあたってのこだわり、今後の展開などを開発担当者に聞いた。


 ベイユニットは、スペースが限られているノートPCの周辺機器増設に便利なシステムだ。これまでもIBMの「ウルトラベイ」や富士通の「マルチベイ」など、各社が対応製品を出している。標準搭載されているFDDユニットを外して、別ユニットを装着するという方式が一般的だ。ただ、各社が用意しているユニットの内容は、CD-R/RWやDVD-ROMといったオプティカルドライブ、増設HDD、サブバッテリなど、基本性能をグレードアップさせるものが多かった。しかし今回ソニーが用意したユニットは「NetMD」「コンパクトウーファー」「FDD」「テンキー」の4種類。FDD以外、各社がこれまで揃えてきたような周辺機器は見当たらない。


ユニットは「NetMD」「コンパクトウーファー」「FDD」「テンキー」の4種類。ウェイトセーバーはメモリースティックと名刺が入るようになっている

 バイオノートNVの製品コンセプトは「“変身”するパソコン」。このコンセプトが表しているように、他社が機能拡張にベイユニットを用意しているのに対して、同社ではユニット交換によって多種多様なシーンに対応できるPCに“変身”させていくことを狙っているのだ。

 同社バイオノートブックコンピュータカンパニー商品企画部の久保郁子さんは、エンターテインメントベイが生まれた背景について「NVのベイには、これまでと違ったユニットを入れていこうというのが、開発当初からあった。目的に合わせてベイユニットを変身させることで、個人だけではなく、家族で1台を共有して使ってもらうことも前提としている。例えば、リビングに1台置いて、家族一人ひとりが好きなベイを装備して、それぞれがやりたいことを楽しむという利用シーンを想定している」と語る。

 4種類のベイユニットの中で注目は、ノートPCでは世界初搭載の「Net MDドライブ」だ。Net MDは、USB経由でPC上の音楽データをMDに高速転送できる新規格で、著作権保護技術「OpenMG」に対応。音楽配信サービスのデータをMDに転送することもできる。今回用意されたNetMDベイユニットは、NVのためだけに開発されたオリジナルドライブ。ベイに収まる薄さで、MDLP2/同4対応で最大約32倍速の高速転送ができるなど、同じくNetMDを搭載したバイオMXのMDドライブと同等の機能を持つ。


バイオMXのMDドライブと同等の機能を持つNetMDベイユニット。手動でMDを取り出せるイジェクト機構を上面に装備

 バイオノートNVは3機種がラインアップされており、全機種にFDDベイユニットが標準搭載。上位2機種にはNetMDベイユニットが同梱され、このうち最上位機種(PCG-NV99M/BP)は4種類全てのユニットベイがついてくる。別売りで購入できるのは、NetMDとテンキーのベイユニット。つまり、全てのユニットベイが同梱されている最上位機種を購入しないと、コンパクトウーファーユニットは手に入らないのだ。

 しかし久保さんによると、4種類のベイの中で一番ユーザーに受けているのが、コンパクトウーファーだという。「装着するだけでノートPC付属のスピーカーでは表現しづらかった低音域が増強され、深みのあるサウンドになる。日本だけでなく世界でも評価が高いのだが、店頭でのアピールが難しいのが残念」。


コンパクトウーファーの特性。低音域がしっかり出ている

 ベイユニットの中で一番こだわりがあり、また開発に一番苦労したのは、意外にもテンキーだったという。同社機構設計リーダーの雨宮亮治氏は「飛び出してきたテンキーを支える機構や、ポップアップチルトスタンドといった動きのある部分は、地味だけど開発に苦労した」と語る。


テンキーの裏には、引き出すと自動的に立ち上がるチルトスタンドが

 スペースが限られたノートPCには、デスクトップPC用キーボードにあるようなテンキーが装備されていない。しかし、表計算や家計簿など数字を多く扱うソフトではテンキーは便利で、またゲームソフトにもテンキーを利用するものが多い。そのため、PCショップなどではUSB外付けタイプのテンキーがよく売れている。


 「私の中では、まずテンキーをノートPCに載せることを2年ぐらい前から考えていた。NVの開発案が出る前に、バイオノートFXのFDDユニット部分に無理やりテンキーを入れてみて社内で試してもらったところ評判がよかったため、次の新しいモデルには、なんとかしてテンキーを付けたいと思っていた」(雨宮氏)。


機構設計リーダーの雨宮亮治氏

 NVの特徴となっているユニークなエンターテインメントベイだが、今後バリエーションは増えていくのだろうか。

 雨宮氏によると、開発段階ではミニプリンタユニットやスキャナ、Pentium 4の余熱を利用(!)して芳香させる“アロマベイ”など、同社ならではのユニークな意見があったという。「大きさ的にはClieのクレードルとしても使えそうだし、インフォキャリーのようなビューワー端末を入れても面白いかもしれない。隠しネタとしては、車の中にあるようなカップホルダーも便利なのでは、といった意見も出た。技術的には十分可能だが、水に弱いPCの横に設置するのは故障の原因にもつながるので、商品化は無理かもしれない(笑)」(雨宮氏)。

 それでも、すでに開発段階でいくつか試作モデルができあがっており、製品として登場するかは試作のできしだいとのこと。詳細は教えてもらえなかったが、今回用意されたベイユニットのように、これまでにないような周辺機器であることは間違いないようだ。

関連記事
▼ Net MD内蔵「NV」、TV録画対応「GR」 バイオノート夏モデル

関連リンク
▼ ソニー
▼ バイオノートNV紹介ページ

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.