News 2002年6月17日 07:11 PM 更新

小さなバイキングサッカーチーム「VIKI」

デンマークの全長28センチのロボット「VIKI」は、マインドストームの匂いがする

 「VIKI(ヴィキ)」を見てきた。RoboCup-2002のヒューマノイドリーグにエントリーされているデンマークのロボットだ。何がすごいって、他のヒューマノイドは1体や2体のエントリーなのに、このチームは11体揃えちゃったってことだ。


 かわいい。VIKIってのは「Viking」な名前なわけだけど、そういう勇猛なイメージじゃない。むしろ、「Pixy」とか「Goblin」とかそっち系のやつにみえる(身長28センチ)。これが11体もワヤワヤうごいたら、なんか楽しそうじゃない。

 VIKIを開発したのは、南デンマーク大学マースク・マッキーニ・モラー製造技術研究所(エンタテインメント・ロボット社との共同開発)だ*1。Henrik Hautop Lund教授*2が説明をしてくれた。教授は、あのマインドストームの開発にも関った方なのだそうだ。


 VUKIのコンセプトは、「シンプル、スモール、チープ」だ。ホンダ「ASIMO」やソニー「SDR」のような高価なものではなく、量産したときには「こどもでも買える」価格のものをつくるわけ。だからこそ11体も連れてこられたのだ(リザーブもいたので、ほんとは12体だったのだ)。


 コスチュームを脱がせた姿がこれ。フレームやギア等のパーツはマインドストームでおなじみものだ。でも、ボディパーツはエポキシのハンドメイドのものだし、モータやセンサーも普通の(マインドストームのじゃない)ものを使っている。モータは5つ。両腕で1つ、上半身で1つ、お尻に1つ、そして両脚に各1だ。センサーは赤外線センサー(コスチュームを着ている写真で首の周りにあるのがそれ)、モーションセンサー(5つ)、それに接触を感知するスイッチだ。電池はリチウムポリマーをCPU用とモータ用に各1。

 言い忘れてた。ボールは専用のもの。中に電池と赤外線LEDが入っていて、自分で光っている(赤外線だから人間の目ではわからないけど)*3。VIKIの赤外線センサーは1.5mの距離にあるボールを見つけられるそうだ。足元はかえって大丈夫なのか聞いたら、「だいじょうぶ」だそうだ。


 わたしなんか、11体のロボットが協調してフィールドを走り回るんじゃないかってちょっと期待しちゃったんだけど、それはまだまだだった。いまのところは各自が自分で動くというレベル。プレスリリースには「Bluetoothを搭載」って書いてあったんだけど、それも、「Not Yet」だった。だから、デモンストレーションも有線でおこなわれた。だけど福岡ではワイヤレスになる予定だそうだから、そのときまでには「Bluetoothを搭載」になるのかもしれない。そうなったときに、お互いが協調して動くためのインフラができることになる。

 というわけで、これが動き。まだ、ゆっくりだ。


流し込まれたプログラムでのケーブルレスでの歩行。(動画を見る:1.9Mバイト)


ボールを蹴る(動画を見る:0.7Mバイト

 VIKIの制御はすべて内蔵されたコンピュータで行われる。デモでは、ノートパソコンとシリアルケーブルでつないで、外からコマンドを送っていたけど、これは単に行動のきっかけをおくっているだけ。キーボードをジョイスティックの代わりにしているようなものだ(ちょっといじらしてもらった)。もちろん、コマンドはBluetoothで送るというのが、本来の姿だろう。


データを送っているところ

操作は、同研究所のLuigi Pagliarini教授*4

 Lund教授が開発者だっていう先入観を除いても、VIKIのつくりはとってもMindStormsだ。パーツが使われているってことだけじゃなくて、設計思想がそうなの。

 例えば、おなかのあたりにあるモータがまわると、上半身を左または右に傾く。でも、ある一定のところまで傾くと、ストッパが働いてそれ以上動かなくなる。それでもモータを回していると、こんどはモータの力は足につながった糸を巻き上げる様に働く。つまり、足が持ち上がるわけだ。そのときには上半身は傾いているわけだから、片足立ちでもバランスを崩すことはない。こういうシンプルで無駄のない設計というのは、マインドストームの匂いがする。

 あらかじめ行動プログラムを流し込んでおけば、VIKI単体で動作させることもできる。近い将来には、VIKIの動作プログラムを簡単に(子どもむけにも)作れるためのツールを作るつもりなのだそうだ。このあたり、赤外線通信が、ケーブル(またはBluetooth)になったってだけで、完全にマインドストームの世界だ。

 というわけで、「ひとつほしいです」っていったんだけど、まだダメだって。一般売りされたら買っちゃいそうだなぁ。


*1どちらも南デンマークのオーデンセという市にある。アンデルセンの生誕地として有名で、メルヘンなイメージの強い街なのだけど、デンマークのロボットのメッカでもあるのだそうだ。
*2カタカナでどう書いていいのかよくわからない。ごめん。
*3なんか回路も入っているので、もしかすると赤外線は変調されて光っているのかもしれない。それは聞き忘れた(福岡で聞いてきます)。
*4名前でわかると思うけど、イタリアの方だ。

[こばやしゆたか, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.