News | 2002年6月18日 08:12 PM 更新 |
コンパックコンピュータは6月19日、グリッドコンピューティングシステム構築事業への参入を発表した。同社ソリューションセンター内に約10人の専任エンジニアを用意した「コンパック・グリッドサポートセンター」を開設。米国ならびに欧州に設置しているグリッドサポートセンターとネットワークで接続し、グリッドコンピューティングに必要な技術検証試験やを行う。同分野にフォーカスした専門のサポートセンターを設置するのは国内で初めてだという。
グリッドコンピューティングは、ネットワーク上にある複数のコンピュータリソースの共有化利用を行おうというもの。科学技術分野計算分野では既に導入が進められているが、コンパックテクニカルサポート本部兼HPTC推進部の中野守本部長は、「将来的には民間企業の基幹業務系など広い範囲で利用されるようになるだろう。次世代インターネットのインフラとして、最も重要な技術だ」と強調する。
コンパック・グリッドサポートセンターでは、グリッドコンピューティングのデモンストレーションを体験することができる。コンパックの東京本社と、大阪、つくばの事業所を接続し、流体解析や3DCG、フラクタル図形描画などといったアプリケーションをグリッドコンピューティング環境で実行している。ネットワーク構成は、東京が1CPUのワークステーション、大阪が8CPUの大規模サーバ、つくばが2CPUの小規模サーバとなっており、11CPUの仮想スーパーコンピュータと同等の処理能力を発揮できるという。
グリッドコンピューティングの事例としては、一般家庭のPCの空き時間を利用して地球外生命探索の計算処理を強調して実行する「SETI@Home」というプロジェクトが有名。ただコンパックの場合は、一般ユーザーのPCやインターネットを利用したグリッドコンピューティングというよりも、企業ネットワーク内でのグリッドコンピューティングの実現を目指している。
「グリッドコンピューティングは、基幹業務やデータマイニング、ならびにサプライチェーンなどにも使えるようになるだろう。例えば、東京にメインフレームコンピュータがあり、大阪に1Tバイトの顧客データあるという状況でデータマイニングを行うには、現状では1Tバイトをコピーするしかない。グリッドコンピューティング環境なら、東京のメインフレームだけでなく、例えば各支社にあるUNIXサーバのリソースも使うことができ、処理時間も短くなる」(中野氏)。
ただ、中野氏は、グリッドコンピューティングが実際の業務で使われるようになるには、「少なくとも5年はかかるだろう」と見る。「複数の企業がグリッドコンピューティングで相互乗り入れしようとした場合、ポリシー設定を正しく決めなければならない。また、重要なデータを共有化する際のセキュリティー管理も大事だ。かといって、セキュリティをガチガチにしてしまうと、今後は実行速度が低下してしまう。ミドルウェアのチューニングを含めて、課題はまだまだある」(同氏)。
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[中村琢磨, ITmedia]
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