News 2002年6月21日 10:46 PM 更新

ソフトウェアはアートだ――ICCの「Art.Bit Collection」

NTTインターコミュニケーション・センターの開館5周年イベント「Art.Bit Collection」では、ソフトウェアを「アート」として捉えた作品が披露されている

 6月21日より、NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)の開館5周年イベントとして「Art.Bit Collection」が開催されている。このイベントは、ソフトウェアをプログラムする過程を「アート」として捉え、「ソフトウェアを表現の媒体、道具、環境、素材として扱っていくことができるか」(ICC)という可能性に挑戦するもの。ICCのギャラリーには、グラフィカルな環境でソフトウェアを開発する「ビジュアル・プログラミング」をはじめ、40作品が展示されている。その中から、興味深い作品をいくつか紹介しよう。

 「ネットワークの裏側を見せる」というコンセプトを持つセンソリウムの「Web Hopper」という作品は、ネットワーク上を流れるWebへのアクセスを可視化するもの。ICCに設置したマシンから、海外にあるWebサーバにアクセスすると、世界地図上にその信号の軌跡がリアルタイム表示される仕組みになっている。「普段われわれが使っているネットワークの背後には、表示されている以上の情報が含まれている。そうしたネットワーク上の情報の流れを可視化させるとどうなるのかという好奇心を満足させてくれるだろう」(ICC)。

 また、「Tokyo Local Webscape」というブラウザでは、「東京の風景に埋め込まれたWebページ」を見渡すことができる。サーバのある住所を推定して、風景の中にそのWebページを表示しているという。デモでは、東京都庁から見た風景に「jpドメイン」を持つWebページを表示していた(新宿区、渋谷区、中野区にあるものが表示されている)。

 「ToonTalk」や「AgentSheets」というビジュアル・プログラミングのソフトでは、プログラミング言語ではなく、視覚的な対象物の順番を入れ替えたり、ディスプレイに表示されるキャラクターを操作することで、プログラムを生成することが可能。

 ToonTalkは、ロールプレイングゲーム世界に、プログラミング要素を取り入れたもので、例えば、数字アイコンの「1」と「1」を重ねると、足し算をするネズミが現れて「2」のアイコンと取り替えたりする。また、AgentSheetsは、スプレッドシートにプログラミングを組み合わせたような環境。それぞれのセルについて関連性を定義しておくと、高度なモデル解析ができるようになるという。実際に、土砂崩れを発生させるデモンストレーションが行われている。


「ToonTalk」(左)と「AgentSheets」

 先進的な作品がそろうArt.Bit Collection展の中でも、特に過激なのが「アプリケーションやデスクトップを疑う」というジャンルの作品。「慣れた表層としてのコンピュータ・スクリーンをその根本から疑い、そこにさまざまな形でノイズを混入させること、あるいは破壊し再構築することなど、最もアーティストらしいソフトウエアへのアプローチを行っている」(ICC)。

 「CO.JP browser」というソフトは、「xxx.co.jp」ドメインのWebサイトを自動的に検索(ib3.co.jpやamz.co.jpなど3文字のものを勝手に生成してアクセスする)。そのサイトが実在した場合、Webページのリソースを取り込んで色や文字のパターンとしてランダムに表示するというのだ。表示されたWebページは何が何だかわからなくなってしまうのだが、「次々と変化していくパターンを楽しむ」(作成者のJODIさん)ことが目的だという。

 このほか、Art.Bit Collectionでは、来場者向けに「体験、ビジュアル・プログラミング」などのワークショップや、「プログラミングと脱コンテクスト化」といったシンポジウムも用意されている。会期は8月11日まで。開館時間は午前10時〜午後6時。入場料は一般800円、大高校生600円、中学生以下は無料となっている。

関連リンク
▼ Art.Bit Collection

[中村琢磨, ITmedia]

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