News 2002年6月26日 11:09 PM 更新

AMD、2004年にはHammerに完全移行を表明――TechXNY現地レポート

AMDは新プロセッサコア、Hammerシリーズをボリュームゾーンに投入していく計画を明らかにした。積極的に64ビット化を進めることで、プロセッサは4Gバイトメモリサイズの制限から解き放たれることになる

 AMDは米国ニューヨークで開催中のTechXNYで、次世代アーキテクチャを採用する新プロセッサコア「Hammer」シリーズを、積極的にボリュームゾーンに投入。AMDの上級プロダクトマーケティングエンジニア、Steffanie 真弓 Bowles氏は、来年中には出荷数の半分を現行のK7アーキテクチャから移行させ、2004年いっぱいまでに完全にHammerシリーズへと切り替える計画を披露した。

 64ビット化により、プロセッサはメモリサイズの制限(4Gバイト)から解き放たれる。4Gバイトという巨大なメモリは途方もない数字にも思えるが、これまでの歴史を振り返り、数100KバイトのメモリでPCをビジネスに活用していたことを考えれば、決して非現実的な話ではない。

 現行アプリケーションの実行パフォーマンスは十分な領域に達していると言われるが、高度化が進むセキュリティ技術、自然言語ユーザーインターフェイス、リアルタイムの情報処理技術、ゲームやバーチャルリアリティなどの現実空間エミュレーションなどの分野では、まだまだパフォーマンスやメモリサイズが不足している。

 すべては高度な情報処理の固まりであり、様々な分野で64ビット化の恩恵を受けられるというのが、AMDの主たるメッセージだ。将来、このままアプリケーションソフトウェアが高度化していくと、32ビットではいつか頭打ちの状態になるが、64ビットならば、まだパフォーマンスを向上させる余裕があるとAMDは説明する。

 もっとも、64ビットアーキテクチャへの移行でコストや互換性、既存アプリケーションの速度などに問題があるようならば、市場はなかなか拡大しないだろう。AMDは積極的に既存製品がカバーしているプライスレンジをHammerシリーズへと引き継いでいく。Hammerシリーズは32ビットのパフォーマンスの犠牲なしに64ビット化を果たしているため、十分なボリュームを出荷できればエンドユーザーは割高なコストを支払うことなく64ビットアーキテクチャへと移行できる。

 これまでの64ビットプロセッサは、企業向けのハイエンドサーバでの用途ばかりを意識して設計、マーケティング戦略が練られていたため、ボリュームゾーンで大量に出荷することによりコストを下げるという発想はなく、互換性に関してもあまり重視されてこなかった。

 また企業向け製品として捉えた場合も、Hammerシリーズのx86-64アーキテクチャならば、32ビットと64ビットのコードをシームレスに利用できるため、ある時点で64ビットへと一斉に移行するといった無理な運用をユーザーに強いないというメリットがある。

 ユーザーはHammerシリーズを採用するプラットフォーム上で従来の32ビット資産を活用し、必要な部分を必要に応じて64ビット化できる。また32ビットパフォーマンスも高いHammerシリーズならば、局部的にパフォーマンス向上が見込める部分だけを64ビット化することも可能だ。

 AMDはデスクトップPC向けのHammerにAthlonの名称を与えることを発表しているが、これはすなわち現在のAthlonがカバーしている市場をそのまま引き継いでいくことを示している。価格的にもインテルのPentium 4を意識したものになるだろう。数字的な優位性もアピールできる64ビットアーキテクチャで、インテルに対してアグレッシブに挑戦していく構えだ。

 なお、AMDはプロセッサブランドとして「現行Athlon XPをHammerシリーズ投入後にDuronブランドに切り替える戦略は実行しない」(Bowles氏)。それはAthlon XPがローエンドに降りてこないことを意味しているわけではなく、プレミアムブランドのAthlonプロセッサが提供するパフォーマンスを、Duronと同等の価格レンジにも提供していく。Hammerアーキテクチャ採用のAthlonには、後継となる上位製品であることを示す何らかのシンボルが加えられることになるだろうが、現在のところ、正式なブランド名は明らかになっていない。

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[本田雅一, ITmedia]

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