News 2002年7月17日 11:00 PM 更新

“シリアル”の勝者は誰?

現在、「シリアル」のバス規格が盛んに提案されているが、どれがデファクトスタンダードになっていくのだろうか。日本サイプレスが開催したデベロッパー向けのセミナーの中で、パーソナルデバイス向けインタフェースの最新動向が語られた

 現在、パーソナルデバイス向けインタフェースとして「シリアル」のバス規格が盛んに提案されている。EthernetやUSB、IEEE1394といった既に広く普及しているシリアルバス規格をはじめ、PC向け次世代I/O技術「PCI Express」や既存のUSBを機能拡張した2.0/On-The-Go(OTG)といった、より高速な新規格も次々と登場している。

 インタフェースの流れは“パラレル”から“シリアル”に着実に移行している。しかし、さまざまなシリアルバス規格が登場した結果、どれがデファクトスタンダードになっていくのかが見極めづらくなっているのも事実だ。

 日本サイプレスが7月17日に開催したデベロッパー向けのセミナーの中で、パーソナルデバイス向けインタフェースの最新動向が語られた。


Cypress SemiconductorのLane Hauck氏

 なぜ、シリアルバスが注目されているのだろうか。Cypress SemiconductorのLane Hauck氏は、シリアルバスの優位性について「現在主流のATAやSCSI、PCIといったパラレルバスでは、信号間で干渉が発生するため、バンド幅を増やしての転送速度アップが難しい。それがシリアルバスでは信号を同期化する必要がなくなるため、転送速度が速くなる」と説明する。

 また、8ビットや16ビットのパラレルケーブルは、太くなって引き回しも大変な上にケーブルの長さにも制限が発生するが、使うピン数が少ないシリアル方式は、ケーブルやコネクタも簡略化できる。これはコストダウンにもつながる。

 Hauck氏は、現在実用化もしくは提案が行われているシリアルバス規格の主なものとして、「PCI Express」「HyperTransport」「Serial ATA」といったPC内部のバス規格と、「USB」「IEEE1394」「Serial Attached SCSI」「Ethernet」といった周辺機器の接続などを行うPC外部のバス規格といった計7規格を挙げ、「この中でPCI Express、USB、IEEE1394の3つのシリアルバス規格が、パーソナルデバイス向けインタフェースとして今後主流になるだろう」と述べた。


パーソナルデバイス向けインタフェースの主流はPCI Express、USB、IEEE1394

 「PCI-Expressは、もともと3GIOとして制定され、仕様も公開されている。PCIをベースとしているので、現在のOSやデバイスドライバも問題なく動く。またUSBも、現在ほとんどのPCでサポートされており、USB2.0で480Mbpsの転送速度を可能にしたり、P2P通信ができるUSB OTGの登場など規格自体も成長し続けている。IEEE1394は、すでに環境が整っており、マルチメディア向けとして今後も有望」(Hauck氏)。

残りの4規格がダメな理由

 しかし、Hauck氏の予測から外れた残りの4規格も、次世代高速バス規格として期待が集まっているものばかりだ。Hauck氏はインタフェースの普及要素として「どれだけ“環境が整備されているか”が1番重要。しっかりと標準化され、複数OSのサポートがあり、デバイスドライバも提供されているといった環境整備が普及の条件となる」と語る。

 HyperTransportは、この点でどうだろうか。これはAMDが開発したチップ間を高速接続するためのバス規格だが、Hauck氏は「規格自体は非常によくできている。ただし、Intelの認定が得られていない点において、環境が整備されているとは言い難い。PCI Expressがほぼ同じような機能を持つことも除外した理由の1つ」(同氏)。

 従来のパラレル方式に比べて転送速度が飛躍的に向上しているSerial ATAやSerial Attached SCSIといったストレージ向け高速シリアルバスも注目の規格だ。これを外した理由についてHauck氏は、「Serial ATAは環境の整備もいいのだが、もともとマスストレージに特化した規格であるために、汎用性に欠ける点で除外した。Serial Attached SCSIもマスストレージ向けの規格で、PCに関しては広く受け入れられてない」と解説した。

 では、PCにも広く普及しているEthernetは、なぜだめなのだろうか。「Ethernetはいうまでもなくすでに環境が整備されており、ネットワークソリューションの代表格となっている。ただし、パーソナルコミュニケーションという点を考えると、ストリームベースのプロトコルは使いづらい。パーソナルデバイス向けインタフェースとしては不向きな規格」(Hauck氏)。

関連リンク
▼ 日本サイプレス
▼ Cypress Semiconductor

[西坂真人, ITmedia]

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