News 2002年7月19日 04:24 PM 更新

っぽいかもしれない
Waterscapeからひもがとれた

日立製作所の技術展示会「HITACHI ITコンベンション2002」で、あの「Waterscape」のスタンドアロン版が展示されているという

 7月18〜19日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで、「HITACHI ITコンベンション2002」というイベントが開催されていた。「ユビキタス」をキーワードに日立が描く技術の展示会なのだけど、そこにあの「Waterscape」が展示されるというのだ。しかも、「ひも(ケーブル)」がなくなってスタンドアロンで動くものだという。これは見に行かないわけにはいかない。

意外なところにWaterscape

 会場全体は、普通の展示会と同じように小さなブースがいくつも並んでいるという構図になっている。その一角に「Cafe@Ubiquitus」っていうスペースがある。HotSpot Cafeのモデル展示なんだけど、タリーズコーヒージャパンとの協力によるもので、椅子とテーブルがあって、実際にコーヒーも飲める*1っていうホッとひといき空間。


 「Waterscape」はここにいた。これはうまい。このマシンはちょっといじってみただけじゃ何だかさっぱりわからない可能性が高いのだ。いすに座ってぼーっと(受動的に!)動かしてほしい。しかも、会場のほかのところにあるものと違って、すぐに商品化するとかいうものじゃない。ある程度説明を聞かないと、何でこんなものがあるのかわからないかもしれない。展示の仕方としては一番いい方法を選んだと思う。

 ZDNetの読者なら、Waterscapeっていうのが何であるか、なぜこんな動きをするのか、その思想に至るまでわかってもらえていると思うから、ここでは説明は繰り返さない。


これがスタンドアロンのWaterscape

 ひも付きバージョンのときに、最終的にはこれの80%の大きさにしたいですという話があったのだけど、スタンドアロン版は逆に120%くらいに大きくなっちゃった。もっとも、これは今後もっと小さくなるはず。表示部分は、楕円形から、正方形に変更。ちょっとおとなしくなった*2。逆に外装はいろいろ作ってみたようだ。赤、青、カーボン、イチゴ柄などなど*3


 というわけで、いじらせてもらった。うーん。申し訳ないんだけど、今回のバージョンはWaterscapeとしては後退している……。


泡がはじけるときに、「ぽぉん」っていう音がしているんだけど、会場のノイズの中でよく聞こえないので、音声はカットした(動画はこちら

 マシン全体を傾けながら「泡」を動かすのは一緒。でも、その泡が中央に来たときに四角いターゲットマークが表示されるようになっている。従来のコンピュータのインタフェースの話をしているんだったら、これは親切なんだけど、Waterscapeにとっては、これはじゃまものだ。せっかく、水と泡っていう「実世界」指向にもっていっているのに、マークが出た瞬間に、昔の(今のか)コンピュータレベルの世界に意識が戻ってしまうのだ。

 また、ひも付き版では泡の中に表示されていたラベル文字が、画面の最上部に表示されるようになっている。これもよくない。泡に文字が書いてあるなら、表示されているオブジェクト(つまり泡)と、操作しようとしているオブジェクトは全く同じものだ。今そこにあるものをいじっている、という操作の快感がある。ところが、「固定フィールド」に文字が書かれてしまうと、表示されているそのものをいじっているという感じではなくなる。間に「固定フィールド」っていうインタフェースが挟まってしまうのだ。これだけのことなんだけど、快感はすっかり失われてしまう。操作のときに視線がキョロキョロしなきゃいけなくなるということも合わせて、これは大きな後退。

 おそらくはハードウェア的な制約からくる問題もある。まず、液晶の質が落ちた。これは、商品化に向けてのことで仕方ないんだろうなとは思うのだけど、でも、泡の表示が安っぽくなっちゃって、それがコンピュータの画面なんだってことを思い出させてくれちゃう。ひも付き版で使っていた液晶は、本当にいいやつだったんだね。

 もう一つ、追従性の問題。CPUパワー不足なのか、ソフトの作り込みが不足しているのかはわからないんだけど、Waterscapeの向きを変えたとき、泡の動く方向が変わるまでに、ほんのちょっとだけど間があるのだ。これも操作の快感をスポイルしている。泡はあんまり慣性モーメントの影響受けなさなそうなものだしね。

Waterscapeっぽい

 いくつかあるWaterscapeの一つは、デジタルハリウッド作成のゲームが動いていた。本体を傾けて画面に表示されているボールを転がしていくタイプのもの。


 これ、おもしろかった。結構ハマッて何度もやっちゃった。(Waterscapeのイメージにあった)「ちっちゃい迷路があって、その中を球みたいのがある」。おもちゃに戻しちゃってるっていえばそうなんだけど、でも、同じところを何度もボールを転がすと、床に穴があいちゃうなんていう、バーチャルならではの仕掛けがあったりする。面クリアに時間制限があるんだけど、これはないほうがいいような気がした。なんかのんびりやるほうがWaterscapeっぽいかもしれない。

 いろいろ言ったんだけど、実は心配はしていない。とにかくスタンドアロンで動くものができたのはすごいことだ。ハードウェアを変えたらソフトウェア的には一度後退してしまうなんていうのは、こういうものの開発ではよくあることだ。これはすぐに元のレベルまで追いつくだろう(ターゲットマークはやめたほうがいいと、わたしは思う)。

 そうなってくると、このデバイスにあったコンテンツは何かっていうことを考えたくなってくる。話の中では、「雑誌の見出しだけを次々表示させるのはどうだろう」っていうのが出た(中吊り広告のイメージ)。そういうような、あんまり肩が凝らないコンテンツがいいんだろうね。やっぱり。


*1無料なんだけど、コーヒーが出てくる時刻が決まっているので、タイミングが合わないと飲めない。タリーズがプライドにかけて一杯ずつ抽出したコーヒーである。おいしかった。
*2ハードウェアとして何を使っているかは、いちおう「ナイショ」だそうだ。見当はつくだろうけど。
*3豹柄で毛がはえているってのも作りたかったけど、間に合わなかったんだそうだ。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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