News 2002年8月27日 11:13 PM 更新

HDD価格――値上がりの真相

値下がりの続いていた3.5インチHDDの価格が、久しぶりに上昇している。その理由は?

 HDDは、容量や転送速度など性能は上がっているのに価格は下がっていくという“PC周辺機器の優等生”だ。

 容量(記録密度)が増えると転送速度が向上する。1プラッタ当たりの容量が増えれば、プラッタ数も減るため構成部品が少なくなりコストダウンにつながる。つまり、性能向上が低価格化にも貢献するというハードの特徴が、HDDを優等生たらしめているというわけだ。在庫不足などで多少の変動はあるものの、ここ数年、容量当たりの単価は着実に右肩下がりを続けてきた。

 そのHDDの価格が、8月になって上昇に転じている。特に今年になって価格が続落し、現在1Gバイトあたりの単価が一番安くなっている3.5インチの80Gバイトクラスでその傾向が顕著だ。

価格下落はIBM製から始まった

 80Gバイトクラスでの価格の急落は、今年の初頭から始まっていた。1月にIBMが発売した7200回転/分のIDE HDD「Deskstar 120GXP」シリーズの80Gバイトタイプが、発売直後は2万5000円前後だったのが、翌月には2万1000円前後と一気に4000円も下落。その後もこのHDDは毎月2000円前後も値を下げ、7月半ばにはとうとう9000円を割るショップも出現した。

 同じ80Gバイトでも5400回転/分タイプでは一時的に9000円を割る商品が出ることもあるが、売れ筋の高速転送タイプでここまで安くなるケースはかつてなかった。このDeskstar 120GXPの低価格攻勢に他のHDDメーカーも追随し、この夏は1万円前後で買えるHDDが店頭を賑わしていた。

 それが、お盆明けの7月末から8月初頭にかけてDeskstar 120GXPの値段が上がり始め、それに呼応するかのように他社製HDDの価格も上昇した。これまでは、一時的に値上がりすることはあってもすぐに価格が下がっていたため、ジリジリと値上がりを続ける状況に「HDDの本格的な値上げが始まったのか」と懸念する声も聞かれた。


HDD価格の推移

 秋葉原のストレージ専門ショップ「BLESSストレージ館」の担当者は、現在のHDD価格状況について「7月末頃から仕入れ値の価格上昇が始まり、特にIBM製の高騰が目立った。Deskstar 120GXPの80Gバイトタイプは、当店の最安値時9000円だったものが現在は1万1000円に値上がりしている。SeagateやMaxtorも、IBMほどではないが全体的に値上がり傾向。価格の変動が少ないのは、WesternDigitalぐらい」と話す。

 同店によると、60G―80Gバイトで1万円台前半という普及価格タイプの値上がりが顕著で、HDD全体的でも底値だった7月半ば頃に比べて2000―2500円は高くなっているという。ただし、先週末ぐらいからこの値上がり傾向も一段落し、現在は落ち着きを取り戻しているとのこと。

適正価格に戻っただけ?

 秋葉原のPCショップにHDDを提供する大手デストリビュータのマーケティング担当者に、一連のHDD価格騒動の真相を聞いてみた。

 「IBMはここ数カ月、戦略的に売れ筋商品の価格を大幅に下げてきた。その在庫が底をついたため、出荷調整をし始めているのではないか。他社も、IBMに追随して値下げしてきたカタチだったが、今回のIBMの値上げを機に“適正価格”に戻しただけ」(担当者)。

 BLESSストレージ館の担当者も「ここ数カ月のHDD価格自体が、あまりにも下がりすぎていた。今後も、これまでのように大幅に下がることはないのでは」と、この適正価格説を支持する。

 これまで3.5インチHDDは、1プラッタ容量が40Gバイトの製品が主流だった。価格が急落したIBM Deskstar 120GXPも、40Gバイト/プラッタの製品だ。しかし、今秋には1プラッタ容量が60G―80Gバイトの大容量タイプが各社から登場してくる。年初からの値下げは、大容量プラッタへの移行に向けた在庫調整だったのかもしれない。

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[西坂真人, ITmedia]

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