News 2002年9月2日 08:38 PM 更新

シャープ、1ビットオーディオ新製品を発表

シャープが、世界初の1ビットアンプ搭載ポータブルMDなど1ビットデジタルシステムの新製品を発表した。同社は普及価格製品の投入で、一気に1ビットオーディオのすそ野を拡大する構え

 シャープは9月2日、世界初の1ビットアンプ搭載ポータブルMDなど1ビットデジタルシステム「Auvi(アウビィ)」の新製品3機種と、1ビットデジタルシアターシステム2機種を発表した。9月5日から順次発売する。価格はオープン。


「Auvi(アウビィ)」など1ビットデジタルシステムの新製品

 新製品で注目したいのは、「世界で初めてポータブルMDプレーヤに1ビットデジタルアンプを搭載した」(同社)という「Auvi MD-DS8」だ(別記事を参照)。デジタルアンプならではの省電力設計によって、最大180時間の長時間再生(単3形アルカリ乾電池+内蔵ニッケル水素充電池)が行える。価格はオープンだが、実売は2万8000円前後となる見込み。9月17日から発売する。


1ビットデジタルアンプ搭載のポータブルMDプレーヤ「Auvi MD-DS8」

 MD-DS8では、“音の最終出口”であるヘッドホンにまで高音質へのこだわりが盛り込まれている。従来のヘッドホン用ステレオプラグは、左右チャンネルのプラス極は独立させマイナス極は共有する3極プラグの「ハーフブリッジ方式」が主流だったが、新製品ではマイナス極の信号線でも左右チャンネルを独立させた4極プラグの「フルブリッジ方式」を採用。「左右のチャンネルごとに2本の信号線を用いるフルブリッジ方式は、ピュアオーディオ向け1ビットデジタルアンプで使われている技術。高いセパレーション特性で、明確な定位感を表現できる」(同社)。


4極プラグの「フルブリッジ方式」で高いセパレーション特性を実現

 また、MDの心臓部であるATRACのLSIと1ビットデジタル回路を1チップ化した新開発のLSIを採用している。「MDのデジタル信号をATRACで伸長し、高次刧煤iデルタシグマ)変調回路で1ビット化して、スイッチング回路を経てローパスフィルタからヘッドホンにつながっていく。つまりローパスフィルタまでは、デジタルで直結されているため、音が違う」(同社)。


最終出口のヘッドホンの手前まではデジタルで直結

 MD-DS8の“音の違い”は、数値上でも表れている。同社のアナログタイプのポータブルMDプレーヤ最上機種の歪み率が0.1%なのに対し、MD-DS8は1ケタ少ない0.01%という歪み率を達成。また、4極のフルブリッジ方式によって従来の3極タイプに比べて2倍の性能向上となる80デシベルのセパレーション特性が得られるという。

 「セパレーション特性の向上により、音漏れは従来機の1/100になる。この技術は、将来的には携帯電話を含むさまざまなモバイル機器に応用できる。“モバイル1ビット”によって音が飛躍的に変わるということを、このMD-DS8で体感してもらいたい」(同社)。

 そのほかの新製品の実売価格と発売日は以下の通り。

製品名DVD1ビットデジタルシアターシステムDVD1ビットデジタルシステム1ビットデジタルシステム
型番SD-AT50DVSD-AT50SD-AT10SD-CX8
実売価格8万円前後5万5000円前後7万円前後4万5000円前後
発売日9月5日10月15日9月20日


1ビット5.1chデジタルアンプ搭載で総合300ワットのリビングシアター向け「SD-AT50DV」


液晶TV「AQUOS」のデザインにもマッチする薄型ボディのパーソナルシアター向け「SD-AT10」


木製スピーカー採用したゼネラルオーディオ「SD-CX8」

音の出るもの全てに1ビット技術を

 同社が誇る独自技術「1ビットデジタルアンプ」を搭載した1ビットデジタルシステムは、沈滞するオーディオ市場でひとり気を吐いている存在だ。

 現在の国内オーディオ市場は、過去最高の売り上げを記録した1988年の8915億900万円を境に衰退の一途をたどっている。2002年度の売り上げ予測は、ピーク時の約半分となる4655億8500万円にまで減少。「オーディオ全体の今年4―6月の売り上げは、対前年同期比89%と厳しい状況。AV全体では同103.7%なのだが、液晶TV/PDP/DVDを除くとAVトータルでは同93.9%となる。つまり、デジタル関連の新商品が市場を牽引しているのだ。我々が1ビットにこだわっている理由がここにある」(AVシステム事業本部長の濱野稔重氏)。

 同社独自開発の1ビットデジタルアンプ技術は、アナログ信号を内部で1ビットのデジタル信号に変換し、そのまま伝達/増幅を行う。1秒間に約280万回(2.8MHz)というCDの64倍に相当する超高速サンプリングによって、音の分解能を向上させている。従来のマルチビット信号処理のように、情報の間引きや補完といった音質処理がないため、音の立ち上がりの速さや滑らかさを高品位に再現でき、より原音に近い音になるのが特徴だ。

 同社が1999年6月に初めて発表した1ビットオーディオ製品は、100万円のデジタルアンプ「SM-SX100」だった。だが同年11月には35万円の「SM-SX1-S」を発売。2000年11月には、低価格の「Auvi(アウヴィ)」シリーズを発表。当初のピュアオーディオ向けから、ゼネラルオーディオにまでラインアップを広げ、1ビットオーディオの普及を図ってきた。しかし、競合製品に比べて割高な価格設定であたことから、低価格化が激しいオーディオ市場の中では“1ビットオーディオは高価”と言われていた。しかし今回の新製品は、同クラス製品に比べて10―15%アップぐらいの価格差に抑え、さらにポータブルMDプレーヤへの搭載によって、一気に1ビットオーディオのすそ野を拡大する構えだ。

 「1ビットオーディオは、音の再現性のほかに低発熱/低消費電力/省スペースという特徴から、地球環境に優しいオーディオといえる。液晶TVなどフラットパネルディスプレイが台頭し、BSデジタルや地上波デジタルなどメディアもアナログからデジタルへ進化している今、1ビットオーディオ普及の機も熟した。1ビットオーディオというオンリーワン技術を確立し、音の出るものすべてに1ビット技術を搭載していきたい」(AVシステム事業本部副事業部長の益田安夫氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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