News 2002年9月11日 05:10 AM 更新

Hyper-Threading対応Pentium 4――その効果のほどは?

年内出荷予定のPentium 4/3GHzがHyper-Threading対応になることをIntelが発表した。実行ユニット利用率の向上で25%程度のパフォーマンスアップになるという

 Intelは開発者向け会議「Intel Developer Forum Fall 2002」で、年内に出荷予定のPentium 4/3GHzがHyper-Threading対応になると発表した。プロセッサのコアアーキテクチャそのものに変更はないが、Hyper-Threadingではプロセッサに実装されている実行ユニット利用率を向上させることで、最大25%程度のパフォーマンスアップを図ることができる。サーバ向けのXeonプロセッサとしては、すでに対応プロセッサが出荷済みだ。

 Hyper-Threadingに対応したPentium 4は、「Intel Pentium 4 Processor with HT technology(日本名:HTテクノロジ インテル ペンティアム 4 プロセッサ)」と名付けられ、従来のPentium 4に「HT」の文字を追加した新しいロゴマークが与えられる。2.8GHz以下のPentium 4もコアアーキテクチャは同じだが、Hyper-Threadingへの対応は行われない。ブランディングに変化を付けることで、新しい製品シリーズとして販売していくことになる。


Hyper-Threading対応を示すロゴマーク

 Intelによると、2003年中にはIntelベースで稼働するPCの25%をHyper-Threading対応へと移行させる。ワークステーションでは60%、サーバでは80%がHyper-Threading対応プロセッサになる見込みだ。Intelはこうした数字を元にアプリケーションベンダーに対応アプリケーション開発を促していく。同社は既にHyper-Threadingにアプリケーションを最適化させる開発ツールの提供を開始済み。

 もっとも、トランザクション処理中心のエンタープライズサーバはともかく、エンドユーザー向けアプリケーションで、マルチスレッドの効果がどこまであるかという疑問の声もある。また、Hyper-Threadingの効果を定量的に表現することは難しい。

 Intelもこの点は十分承知しており、IDFではCPUでリアルタイムのMPEG2録画を行いながらゲームで遊ぶというデモを披露。3GHzのPentium 4搭載PCでは録画されたビデオデータは激しくコマ落ちするのに対し、Hyper-Threading対応のプロセッサでは両タスクがスムースに動作し、コマ落ちしなかった。

 また、Excelのマクロを動かしながら、Outlookで古いメッセージのアーカイブを実行させるというデモでは、同じクロック周波数にも関わらず、Hyper-Threading対応プロセッサのほうが明らかに高速に動作した。もう少し現実的なタスクとして、ウイルススキャンを行いながら、別のアプリケーションを動作させるデモも行ったが、バックグラウンドでウイルススキャンを実行しながらDVデータストリームのリアルタイムMPEG4変換を行っても、Hyper-Threading対応プロセッサではスムースに変換できた。

 エンドユーザーが最終的にHyper-Threadingの恩恵を受けるためには、単に有効なアプリケーションの組み合わせではなく、多くの単体アプリケーションがHyper-Threadingへの最適化を進める必要がある。例えばフォトレタッチやビデオ編集におけるエフェクト処理、動画や音声の圧縮・伸長処理などは、Hyper-Threadingが比較的有効に働くはずだ。前述したように、Intelはそのための準備をすでに整えている。

 これまでも、MMX対応やSSE対応などで、ソフトウェアベンダーに対して強く働きかけてきた実績があるだけに、10月ごろと見られるHyper-Threading対応Pentium 4マシンとともに登場するだろうHyper-Threading対応アプリケーションに注目したい。

 なお、既報の通り、現行世代のPentium 4を用いて限界クロック周波数に挑戦するデモンストレーションも行われた。Intelによると選別されたシリコンや特別な冷却システムなどを用いたスペシャルなPentium 4マシン。「複合要因でPCの性能が評価されるようになるとはいえ、GHzの価値が下がったわけではない。より良いパフォーマンスを得るために、GHzはいまだ重要な要素」(Intel社長兼COOのPaul Otellini氏)。

 どうやら後にリリースされたIntelのニュースによると、このとき4.7GHzでの動作をデモンストレーションしたかったようだ。しかしクロック周波数を徐々に向上させたデモシステムは、4.68GHzを超えたあたりでハングアップしてしまった。とはいえ、まだ3GHz版が登場していない現状、既存プロセスルールのままでここまでクロック周波数が上がった点は(エンターテイメントとして)興味深いところだ。

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[本田雅一, ITmedia]

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