News:ニュース速報 2002年9月26日 07:32 PM 更新

「着メロサイトの歌手名利用はパブリシティ権侵害ではない」──NMRCが表明

ネットワーク音楽著作権連絡協議会は携帯電話の着信メロディサイトで歌手名情報が利用されているのは「歌手のパブリシティ権侵害には当たらない」とする意見を表明した

 ネットでの音楽利用許諾ルール制定を目指している業界団体・ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC、事務局・財団法人インターネット協会)はこのほど、携帯電話の着信メロディサイトで歌手名情報が利用されているのは「歌手のパブリシティ権侵害には当たらない」とする意見を表明した。

 着メロサイトにおける歌手名のパブリシティ権問題では、アーティスト事務所や音楽プロダクションなどで構成する社団法人日本音楽事業者協会と社団法人音楽制作者連盟が「アーティスト名の氏名表示権」を主張。着メロ配信事業者に対し、歌手名の使用に際しては両団体の許諾を求めるよう要請している。

 背景には、着メロが携帯電話向けのキラーコンテンツとして市場規模が急拡大していながら、歌手には着メロの売上金が還元されていない問題がある。着メロにはボーカルが含まれていないため、歌手本人が作曲などを手がけていない限り、楽曲使用料は作曲者などメロディ部分に関わった著作権者にのみ支払われる。

 例えば故・坂本九さんのヒット曲「明日があるさ」がリバイバルでヒットしたが、坂本さんには作編曲などでの著作権はない。そのため「明日があるさ」の着メロについて、原則として坂本さん側に使用料は支払われない。

 これに対し歌手からは「実際には歌手が歌うことで曲が認知されているのだから、歌手にも何らかの還元があっていいはずだ」と不満の声が挙がっている。両団体は着メロサイトに対し、サイトで歌手名を検索システムなどで使用している場合、両団体から許諾を得た上で使用料を支払うよう求めるとみられる。

 両団体が課金の根拠としているのが「パブリシティ権」だ。国内法では規定されていないが、判例で「社会的地位や知名度により顧客吸引力を持つ著名人は、名前などに『パブリシティ権』を持つ」と認められている。

 両団体の要請に対し、NMRCは判例がパブリシティ権の侵害について「著名人の氏名などの使用目的がもっぱらパブリシティ価値への着目とその利用を目的とするかどうか」を判断基準としている点を指摘した上で、

 (1)着メロサイトにおける歌手名の使用は、検索を支援する索引情報として、あるいはコンテンツを告知するためのニュース情報としてサイトのページ上に表示するに過ぎない。

 (2)楽曲の識別に歌手名を利用するのは、同名曲が多く、また曲名をユーザーがいちいち記憶するのが困難なため。音楽業界で従来から慣行的に行われており、着メロサイトに限ったものではない。

 (3)着メロサイトはそれ自体が着メロ業者の著作物であるMIDIデータを配信しおり、着メロデータベース自体も着メロ業者の著作物。こうした多くの著作物で構成している着メロサイトでの歌手名の使用は、「もっぱらパブリシティ価値への着目とその利用を目的とする」とは到底言えず、パブリシティ権を侵害していない。

 ──などと主張。「パブリシティ権への日米の判例を調査しても、着メロサイトでの歌手名使用がこれを侵害しているとは考えられない」とし、両団体の要請を「不当」なものだと反論している。

 NMRCにはインターネット協会のほか、社団法人日本テレコムサービス協会や日本楽譜出版協会など8団体が参加し、社団法人日本レコード協会(RIAJ)も賛助会員として参加している。

関連リンク
▼ ニュースリリース
▼ NMRC
▼ 日本音楽事業者協会
▼ 音楽制作者連盟

[ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.