News 2002年10月29日 01:23 PM 更新

「HDDにDVDが付いているんです」――東芝開発者が語るデジタルレコーダの正しい進化論(1/3)

最近人気の“HDD内蔵DVDレコーダ”。だが、指名買いが9割というこの分野のヒット商品、東芝の「RD-Styleシリーズ」開発者によると、この捉え方は違うのだそうだ。新製品「RD-XS40」をベースに、デジタルレコーダがユーザーに受け入れられるためのポイントを語ってもらった

 AV機器の中で、今年最もヒットした製品の1つがDVDレコーダだ。特にHDDを内蔵した製品は、「ためて、保存する」という複合型製品ならではの使い方を提案。それが新しいAV機器のトレンドを形成しつつある。このHDD&DVDレコーダを業界で初めて発売し、高い支持を集めているのが、東芝の「RD-Styleシリーズ」だ。まもなく新製品「RD-XS40/30」がリリースされる同製品の開発担当者に、新製品についての考え方、そして同シリーズ“ヒットの秘密”を聞いた(なお、記事中のレコーダの画面は、すべて説明のためのサンプル画面です。実際とは品位が異なる場合があります)。

DVDにHDD、ではなく、HDDにDVDが正しい

 東芝のHDD&DVDレコーダ「RD-Styleシリーズ」は、HDDと記録型DVD(DVD-RAM)の2つの映像記録メディアを当初から搭載し、現在のHDD+記録型DVDというハイブリッドレコーダの先駆けとなった製品。初代のRD-2000から、RD-X1、RD-X2を経て、最近発表されたRD-XS40(12月中旬発売予定)とXS-30(同11月上旬予定)で4世代目となる。


RD-Styleシリーズの新製品「RD-XS40」

 同製品には、“信者”と呼ばれるほど熱心に支持するユーザーがいることでも知られるが、実際、東芝によると「店頭の購入者の9割が指名買い(あらかじめこの製品を購入することを決めていたユーザー)」といい、その“熱さ”を裏付ける。

 RD-Styleがこれほどの支持を受ける理由は、なんといってもその製品設計の良さにある。ビットレート設定など豊富な録画モードの設定や、ライブラリ機能、高速ダビング機能など、現在の購入者であるAVマニア層の“かゆいところ”に手が届くような機能の実装が、彼らの心を揺さぶっているのだ。

 このRD-Styleのすべての製品をプロデュース、企画段階から深く関与して仕様作りしているのが、東芝 デジタルメディアネットワーク社でDVDの商品企画を担当する片岡秀夫氏(映像ネットワーク事業部 DVD商品企画担当 担当主任)だ。「RD-Styleはまさにうちのこだわりの一品です。その担当者がこの片岡。彼がいなかったら、この製品は、生まれていなかったでしょう」――同社の広報担当者はそう言って片岡氏を紹介してくれたが、この一言でも、「RD-Style」がいかに片岡氏という個人と密接に結びついた製品であるのかがうかがえるだろう。

 では、その片岡氏は、どのような基本ポリシーでこの製品を開発しているのだろうか?

 「まず最初に言っておきたいのは、RD-Styleシリーズ(以下、RDシリーズ)は、当初からHDDに録る、DVDに残すというコンセプトで開発したということです。我々は、DVDレコーダにHDDを足したという気はさらさらありません。逆にハードディスクこそが本来のデジタルレコーダの姿であって、DVD(DVD-RAMやDVD-R)は、バックアップ装置であるという捉え方で設計しています」(片岡氏)。


RDシリーズの企画・仕様作りを担当している映像ネットワーク事業部の片岡秀夫氏(DVD商品企画担当担当主任)

 外野からの目で見ると、まずDVDレコーダという単機能製品が登場し、ついで東芝がRD-2000でこれにHDDを搭載してきた、ように見える。だから、DVDレコーダにHDDを内蔵した製品として捉えることが多い。ところが片岡氏は、それは違う、まずHDDありきなのだというわけだ。

 「例えば、パソコンがそうですが、パソコンには、HDDが必ず搭載されていて、それにどういったドライブが付けられているかで色々なモデルがあるわけです。(この製品でも)発想は全く同じです。たまたま、DVD-RAM/Rドライブが付けられているというだけなんです」。

 なるほど、そう言われればそうだ。「逆に捉えているように見えますが、多分、これが本質なんだと思っています」(片岡氏)。

ホームサーバとは言わせない

 もうひとつ片岡氏が否定したのは、これは「ホームサーバではない」ということだった。RDシリーズはHDD内蔵ということもあり、ホームサーバの先駆けとなるような製品ということもできる。それだけに、この“否定”はちょっと意外だった。

 実際、東芝社内でも、この製品をホームサーバとして捉える見方はあったそうだ。「RDシリーズは、“ストレージにコンテンツをサーブする”という点では確かにコンテンツサーバです。開発当時より、社内でもホームサーバという言葉は出ていたのですが、私は、あえてこれを使うなと言ってきました」。

 その理由は、この製品がホームサーバに見えた途端に、「方向性を間違ってしまう」からだという。「やっぱり、人間、どこか“引き出し”にしまえるカテゴリが欲しいんです。だから、(この製品は)あくまで“レコーダである”という位置付け。それがデジタル進化したものなんです」。

 片岡氏は加えて、「サーバなんていったら売れないよ」と笑う。「構成された物は一緒でも、それをどのようにイメージ作りするかという点は重要。僕がもともと広告屋ということもあるのですが、この製品については、非常にその点をケアしたつもりです。だから、(DVD&HDDではなく、HDD&DVDと)HDDが先にきているんです」。

 では、片岡氏は、この製品にどんなニーズを見出し、それをどのように具体化しているのだろうか。新製品「RD-XS40」をベースに、開発者自身にそれを語ってもらおう。

[北川達也, ITmedia]

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