News 2002年11月13日 11:34 PM 更新

“自己復元型バッテリー”から“疲れにくい速打キーボード”まで――「産業交流展」

火山灰をエネルギー源にした自己復元型のバッテリーや、ZDNetではお馴染みの東プレ“疲れにくい速打キーボード”の次期モデルなど、独創的な発想や創意工夫から生み出された技術や製品が集まった「産業交流展」を見てきた

 自由で独創的な発想や創意工夫を凝らした製品は、少数精鋭の会社やベンチャー企業から生まれてくることが多い。

 そんな中小企業の優れた技術・製品・サービスが集まった展示会「産業交流展」が、11月12―13日にビッグサイトで行われた。異業種間の交流促進も兼ねた同展示会には、情報/機械/環境/健康・福祉という幅広い分野から計524社が集まった。


幅広い分野から計524社が集まった「産業交流展」

 出展内容もバラエティ豊かで、専門化傾向にある近年のIT展示会にはみられない独特の熱気が会場に満ちている。出展者のほとんどが無名の企業なので取材する方はネタ探しが大変だが、注意深くみていくと、アッと驚く展示に出くわす。まさに宝探しのようだ。

 目を引いたのが、和響が出展していた「クリスタルバッテリー」。なんと、火山灰(シラス)から取り出した電気をエネルギー源にした自己復元型のバッテリーだ。自らが発電体となるので、バッテリーというよりもジェネレータに近い。


クリスタルバッテリーの試作ユニット

 特筆すべきは「自己復元型」である点。クリスタルバッテリーは、使っていくと当然電力量が下がっていくのだが、使用した時間の2倍の時間を休ませると、電力が元通りに回復するという。つまり、このユニットを3個以上並べて次々に切り替えていくことで、永遠に電気を発生する「永久電極」になるのだ(電極の劣化などで、実際の製品には寿命がある)。


切り替えシステムを使った永久電極の実験デモ

 ジー・オー開発機構はクリーンエネルギーの開発にあたって、火山という大きなエネルギーの産物である「火山灰(シラス)」に着目。静電気を発生するその特性を生かして、恒常的に電気を取り出すことに成功したという。「“電気石”と呼ばれ、永久電極の素材に使われるトルマリンと同じ性質。火山大国の日本には、火山灰が大量に降り積もっており、材料には事欠かない。環境に優しくコストも安いというまさに次世代のクリーンエネルギー」(ジー・オー開発機構)。


火山大国の日本では、材料の火山灰(シラス)は不自由しない

 すでに0.5ミリアンペアの電流を恒常的に取り出すことに成功しており、それを使った携帯電話充電器も試作されている。来年秋頃には製品化する予定で、ポータブル型発電機/照明機器/ポンプのいずれかがクリスタルバッテリーの第1弾製品になる見込みだ。

果実の甘さを測る技術が、糖尿病患者の福音に

 リンゴやミカンといった果物を、切らずに甘さ(糖度)を測定する「非破壊果実糖度計」を紹介していたのがアステム。同社のハンディタイプ「AMAICA(アマイカ)」の特徴は、その精度と安さだ。


ハンディタイプの非破壊果実糖度計「AMAICA(アマイカ)」

 甘い(糖度が高い)果物は光の透過率が下がる仕組みを利用して、強い光線を当てて透過した光から糖度を測定する非破壊糖度計測システムは、「非破壊選果機」といった名称で各地の農業協同組合などで活躍している。だが、そのシステムは1台2000万円と非常に高価なうえ、据え置きスタイルのためサイズも大きい。

 今年12月に発売するAMAICAの新製品は、2000万円の非破壊選果機と同等の計測精度ながら、重さ約350グラムのハンディタイプで30万円という価格を実現した。電源は単3形乾電池を使用し、自由に持ち運びができるため、木に生っている収穫前の果実の糖度も計測できる。「最近は農家が産地直送を掲げ、農協などを通さずに自らが流通経路を開拓していくケースが増えてきた。個人で購入できる価格で、応用範囲の広いAMAICAは、こうした農家の自立を支援する商品」(アステム)。

 技術的にはさらに小型・低価格化も可能で、ペンタイプで数千円といった一般ユーザー向け製品も夢ではないという。このような小型で低価格な糖度計は、すでに慶応義塾大学理工学部との共同開発が始まっている。

 だが、これは果実ではなく人間の血液の糖度を測定するもの。血液を採取しなくても血糖値を簡単に測れる「血中糖度計」を作ろうとしているのだ。「糖尿病患者は、一日に数回、自分の指先に針を刺して血糖値を調べている。非破壊果実糖度計のテクノロジーが、糖尿病患者の負担軽減に役立つかもしれない」(アステム)。

東プレのRealforce次期モデルは「106キーボードのテンキーレスでWinキー無し」に決定?

 先日の記事で紹介したように、“速く打てて疲れにくい”キーボードの東プレも今回の展示会に出展。開発中の新キーボードを一般ユーザーに披露した。Realforce次期モデルとなる新キーボードの試作機は、キー配列を変えた6種類が用意されていた。


東プレのブースでは、開発中の新キーボードを披露。スペースバーの長い英語配列モデルも

 ブース来訪者に、現行モデルのRealforce 106と全キーの荷重を30グラムにした「“超軽打鍵”Realforce 106」を含めた計8種類の展示キーボードから最も好きなものを選んでもらうアンケートを行ったところ、1番人気は「89キー(106キーボードのテンキーレスで左右のWin/Appキーなし)タイプ」だったという。


1番人気は「89キー(106キーボードのテンキーレスで左右のWin/Appキーなし)タイプ」

 今回の参考展示は、実際にユーザーに触れてもらって意見を集めるという目的がある。「来春発売予定は、この1番人気の配列になるだろう。英語配列モデル(101キーボードのテンキーレスで左右のWin/Appキーなし)も2番目に人気だったが、こちらの商品化は未定」(東プレ)。

 ブースでは、Realforce 106の台数限定販売も行われた。先日の記事では「オマケ付き」を明言していたが、オマケの内容はキーの荷重を変更できる交換用スプリング、キーロックするためのパーツ、紙が挟めるキートップ、キートップリムーバーをセットにしたもの。オマケになったパーツ類の一般販売は行わないという。


オマケになったパーツ類。一般販売は行わない

 「全キーの荷重を30グラムにしたRealforce 106が20台近く売れ、中には展示会初日に4台まとめて購入したユーザーも。一方で、通常モデルは全然売れなかった。どうやら、既存のRealforceユーザーの買い増しが多かったようだ。限定販売した全キー軽荷重モデルは、近いうちに製品化する予定」(東プレ)。

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[西坂真人, ITmedia]

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